12-浜辺
ログアウトしたら、まず背伸びだ。4時間ぶりなのだが久しく体を動かしてない感じがする。
ふぅ、一安心… できねぇ。お腹が痛いのはこっちもか?いや、こっちが痛いのか…
トイレに急行する。
スッキリした。ギリギリだった。お腹が冷えたのか。
向こうが気になるので試しにログインしてみよう。
ログインした。お腹は痛くない。現実逃避作戦が成功したのか、リアルの体の状態を教えられたのかの判断は難しい。が、あまりにもタイミングが良すぎる。
ゲームの世界でトイレを見たことはあるがリアリティを出すためのオブジェクトとしか思わなかった。
この世界のトイレ、使えるのか…
平和になったことだし今考えても時間の無駄かログアウトしよう。
冷蔵庫からお茶を取り出し。掲示板を眺める。いつもの総合スレからだ。
どうやら遭難したプレイヤーが現れたみたいだ。あの霧の中では方向音痴じゃなくても道に迷うと思う。道がなければなおさらだ。
遭難したあげくモンスターに出会い必死に逃げた先で休んでいるとスライムみたいなのに襲われたらしい。パニクって強制終了したようだ。
とうとう、スライムが出たのか。しかもこのゲームのスライムは厄介な方か…
このタイプのスライムに取りつかれると剥がすのは非常に難しい。頭を覆われると詰みである。
この状況で焚き火とかに冷静に即座に突っ込めるプレイヤーが何人いるだろうか?
だいたい、まずその焚き火がレアなんだよ。明かりはライトを使うし料理も固形燃焼のストーブを使うだろう。
味方がいても対処に困る。サクッと松明をつくれるとは思えないし発火弾を撃ち込むとか火炎放射器であぶってみるとか即座にできるプレイヤーはいないと思う。
プレイヤーなら強制終了しろっと叫ぶくらいか…
スライムって水分凝固剤で固まってくれると助かるが固まらないだろうなぁ。
この遭難プレイヤーには厄介なスライムの存在を教えてくれたことに感謝しよう。
お茶を飲みながら次のネタを探す。
こんな仕様のゲームなのにスレのスピードは速い。皆ストイックなゲームに飢えているのか?
俺的には過疎ってくれた方が嬉しいが、サービスは続いて欲しい…
おっ、面白い話があった。
どうやら海外プレイヤーがNPCに喧嘩を売って世界から追放を食らったようだ。
非常に物騒な話である。NPCを殺しまくったのかNPCのルールを無視したのか、追放されるとは。
NPCを殺すとそれがたとえ一般人であっても都市の戦力が減るとか考えられないのか?すぐに復活するとでも思ったのか。
俺はこのシーズン制やサバイバルな仕様から考えるにNPCは減ったらそのままだと思う。NPCが就いていた職の代わりは何人かいるかもしれないが無限ではないだろう。
NPCのルールだってそうだ。プレイヤーが一方的に不利になるルールではないはずだ。
このプレイヤーを好意的に判断するならこんなことをしたらこうなりますよっと他のプレイヤーに教えてくれたのかもしれない、その身を挺して。
そう考えると一転してありがたい人物に思えてくる。こういう人が検証してくれないと陰で悪さをするプレイヤーが後を絶たない。
スレでも意外と好意的に受け止められていた。この外人の意図はわからないが俺もグッジョブを心の中で贈った。
願わくばこの事実がプレイヤー全員に広まって欲しい。
あとは、検証スレを覗いて終わりにするか。
で、俺の知らない検証内容があるのかないのか…
あった。睡眠について検証がされていた。
どうやら能力が下がるらしい。眠くなること自体今知ったわけだが。
短時間だけログアウトログインを繰り返し寝ずにプレイした人が現れて発覚。
同時にログアウト中は睡眠扱いになることも発覚した。
だから眠くならなかったのかよく考えてるな。ただ、夜行動するようになると大問題に繋がる。
夜は寝ろと運営は言っているのかもしれないが、だったらモンスターは夜に攻めて来ないんですか?と返したい。どうなんですかねぇ、運営さん。
掲示板の内容はこんなものだった。
時間は13時10分。特にすることもないので3時間くらい昼寝をすることにした。
ぐっすり眠れた。時間を確認する。16時25分。意外と寝坊しなかったな。
しかし寝坊するとゲーム内時間の調整がうまくいかなくなる。次からはアラームをセットすることにしよう。
トイレを済ませてログイン。
公園に戻ってきた。もう、ここがこの世界の我が家でもいいかもしれない。テントを張ると怒られたりするのだろうか?
この疑問は誰が解決してくれるのだろうか?都市警察か?都市政府?政府とかあるのか?
そんなどうでもいいことを考えながら水筒の水を入れ替えた。
そして朝となれば牛丼だ。
さっそく牛丼屋で牛丼を頼む。今日は大盛を頼んだ。お茶が美味しい。
いつかの疑問を解決するために箸を左手に持ちカウンターにはお金を置く。手持ちのお金は1500YEN。そろそろお金を引き出しておくか。
牛丼の到着とともに箸をつける―
はい、ダメでした。ストレスが溜まるだけです。
箸を右手に持ち替え牛丼をかきこむ。
ごちそうさまでした。やっぱり、お茶が美味しい。
どうやら、銃を左手で持っても違和感がないのはスキルのおかげみたいだ。そういうことにした。
銀行に行き10000YENを引き出す。
次は… 雑貨屋だ。
雑貨屋で蓋を固定できる金属の弁当箱を買う。1500YENしたが、蓋をしっかり固定できるのでリュックサックの中でも安心だ。
時間は10時前。今日は傭兵事務所に行く前にハンドキャノンの試射をしておきたい。射撃訓練場で榴弾を撃つのは流石にダメだと思う。
そしてハンドキャノンの試射を行うのは浜辺だ。この都市の南の海に行ってみようと思う。
とりあえず傭兵事務所まで行く。人通りはそこそこ多い。武装した人が半分以上だ。武装が銃器なので他のゲームではまず見られない。
傭兵事務所の前というか横には露店が並んでいる。傭兵相手なのだろう道具や食べ物が売っている。弾を扱っている露店もあったが怪しい、店主が怪しすぎる。
その中におにぎり専門の露店があった。おばちゃんがせっせとおにぎりを握っては並べていた。そこでおにぎりを3つ選ぶ。一つ100YENだ。定番の梅干し、鮭、野沢菜のおにぎりを買った。
弁当箱に入れてリュックサックにしまう。これで小腹がすいても大丈夫だ。
ここから大きい道路を南に歩く。
30分くらい歩いただろうか浜辺が見えてくる。しかし防衛櫓が見当たらない。
海からモンスターが来たらどうするのか?
そのまま歩き続け浜辺に到着。海を見るも霧の中だ。こんな状況だと平面世界と言われても納得してしまいそうだ。ま、ゲームなので平面でも球でもどちらでも良いのだが。
当然泳いでいる人はいない。この世界は夏になったら海水浴とかするのだろうか?
海だけでなく浜辺にも人はいない。
大きめの岩を探しつつ流木の小枝を集める。
様々な漂着物が目に入る中大きめの岩を見つけた。
そこから離れるように30センチメートル間隔に小枝を地面に刺して並べる。5メートル離れたところで準備完了だ。
そしてさらに5メートル離れてハンドキャノンを両手で構える。
10メートル先の岩の下の方を狙い、撃つ。
しっかり岩に命中する。ボフッという感じで砂が舞い上がった。一応ステータスを確認。変化はない。
小枝を確認するために岩に近づく。
岩が派手に吹き飛んだりはしていない。岩には小さな破片が複数当たった痕がついているくらいだ。
小枝の方は3本倒れていた。うーん、爆風は半径1.5メートル以上だが威力的には半径1メートルと考えた方がいいだろう。
今度は20メートルくらい離れて水平に岩を狙い撃ってみた。岩の下の方に当たり爆発した。
水平射撃できちんと狙えるのは10〜15メートルの認識で撃つことにしよう。
ハンドキャノンの試射は終了。もう少し撃ちたいが榴弾の値段が…
ステータスを確認するも変化はない。ひょっとするとハンドキャノンはスキル的に【拳銃】扱いなのかもしれない。
ただ、この飛距離なら手榴弾を手に持って投げた方が飛ぶと思う。
試しに適当な大きさの石を投げてみた。
あ、やっぱり。よし、こう考えよう安くて弱い手榴弾発射器だ、このハンドキャノンは。手榴弾の値段、知らないけど。
むしろこの近距離で使える榴弾はこれしかないぞ。
何とか自分を納得させ、来た道を戻る。
傭兵事務所前に戻ってきた。時間は11時半。たった2発撃つためだけに1時間半を使ったことになる。
仕方がない。試射もなしでいきなり実戦投入は危険すぎる。今後のハンドキャノンの活躍を期待することにしよう。




