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11-武器屋


 居酒屋を出た。辺りはすっかり暗くなっていた。


 それにしてもビールと焼き鳥は最高だった。今度は海の幸もいいだろう。


 そして武器屋に行くことにする。懐も潤ったし武器屋のマスターを冷やかすのもいいかもしれない。


 武器屋に行く途中、黒ずくめの二人組とすれ違う。


 警察?なのだろうか。そしてすぐに装備に目がいってしまう自分が悲しくなってくる。


 えっ、あれってFN90だよな?ずるくない?武器屋じゃ見なかったし。じゃ、腰のハンドガンはFN57だったりするのか… もう1940年代ですらない。


 ずるい、おかしい、ずるい、あまりの憤りに地面に転がってジタバタしそうになるのを目を見開いたまま必死に堪える。


 やばい完全に不審者一歩手前というより一歩前進したかもしれない。すばやく会釈をして通り過ぎる。


 声は… かけられない。許されたな。ふぅ。深呼吸をしておこう。



 なんだか納得できない気持ちのまま武器屋の扉を開く。



「ばんわー」


「おぅ、いらっしゃい。冷やかしなら帰れよ、店閉めるぞ」



 このオヤジするどい。


 付き合いが長いわけではないのに、もう顔を覚えたのか。それともNPC技ともいえる妙技なのか。


 こうなったらプランBだ。


 ハンドキャノンをカウンターに置きながら話しかける。



「これの榴弾を5発ください。それと他にどんな弾があるのか見せて欲しいんですが」


「おぅ、わかった。 冷やかしじゃねぇのか。俺の勘が外れるとは…」



 マスターはブツブツ言いながら奥に入っていった。


 マスターが戻ってくるまで店内を散策する。


 店の奥の方に憧れの銃が売れ残っているのを確認。誰も買ったりはしないだろう。



「おーい、用意したぞ」


「わかりました。今行きます」



 カウンターに戻ると注文した榴弾とは別にいろんな弾がトレイの上に鎮座していた。


 このハンドキャノンってマイナーなものとばかり思っていたが、この世界ではメジャーだったのか。



「榴弾5発で2000YENだ」


「口座払いでお願いします」


「おぅ」



 情報端末でお金を払う。



「こっちが榴弾以外の弾ですかいろんなのがありますね」


「元々信号拳銃だからな。信号弾は各種揃ってる。あとは対モンスター用が追加された感じだな」


「対モンスター用ですか」


「発火させるもの、銀の破片を飛ばすもの、閃光を発するもの、何に使うのかわからんが水分を凝固させるものまである。単純に威力を増加したものもあるが嵩張っていくだけだな。これなんてバレルからかなりはみ出すぞ」


「発火は便利そうですが、銀の破片ですか」



 このゲームも銀がアンデッド系に効果があるということか。



「この弾はシルバーピースって名前だ。そのままだな。アンデッド系の特に霊体モンスター用らしい。これが本当に効果があるのかはわからん。だいたい実体がないのに銀が当たるのか?不思議でならん」


「通常の銃にも銀の弾はあるんですか?」


「あるぞ、使用頻度の高い弾にはシルバーヘッドってのがある。ついでに銀が混ざった剣、シルバーブレードとかもある」


「霊体モンスターとか会いたくないですね」


「そうだな、都市周辺をうろついているという話は聞いたことがないな。ソイツらは限られた場所にかたまっているらしい。噂だけどな」



 いきなり、銀の弾を常備しろとかじゃなくて良かった。


 さて、プランBはこの辺りにして気になったことを聞いておこう。


 それは銃をカスタムできるかということなのだがアタッチメントを取り付けるのは問題ないみたいだ。普通にアタッチメントが売っていたのでできるのだろう。



「質問なんですが、店の奥にPTRDありますよね?あれのバレルを短くするとかできますか?」


「おまえは、アレを使いたいのか?変人すぎるだろ」


「他の人が使いそうなのを選んでも面白くないでしょ。ただ、さっき通り過ぎた黒ずくめの人が持ってた銃には興味があります」


「黒ずくめの人って、そりゃあ都市警察だろ。アイツらの装備は麒麟の特殊装備で一般には出回らんぞ」



 都市警察とかいるのか。しかも麒麟ってなんだ?一般に出回らないとか、ずるい、やばい、ジタバタしそう。



「麒麟ってなんですか?」


「麒麟は、麒麟重工っていう総合兵器メーカーだ。銃器だけでなく装甲歩兵や歩行戦車もつくってるすごいところだ」


「ほほぅ、それはすごそうですね。それでPTRDの方は」


「おぅ、バレルを短くだったか。できるできないだけならできるが、設計図改変が必要だからな。しかも売れ筋じゃない銃の改変となりゃあ… サービスしても代金は表示の3〜4倍くらいかかるな。そこまでして使う銃でもないと思うがな」



 たっか、高すぎる。銃のカスタムはお金をかければできるということがわかっただけで良しとしよう。


 しかしなぁ、この霧ではあの長さのバレルって必要ない気がするんだよなぁ…


 切り替え、切り替え。



「そうですか… 高いですね。諦めます」


「そうしとけ。ちょっと長いだけだろ2メートルなんて、重くて取り回しづらくて屋内では身動きできない。面白いからそのまま使っとけ」


「ですよねー」



 面白くねぇよ。ちょっと長いって俺の身長より長いんだけどな。


 たぶん、わかってて言ってやがるぞ、このオヤジは。



「もう、その話はいいです。ライトです。お勧めの夜歩いても恐怖が30%削減するようなライトをお願いします」


「いきなりライトか。だが俺はいきなりこられてもちゃんと商品を出せるぞ。待ってろ」


 このオヤジできるな。店の奥がどこかの青いロボットのポケットに繋がってたりするんじゃないのか?


 購入した榴弾をハーネスのポケットにしまう。


 カウンターに並べられた弾をしげしげと眺めているとマスターが戻ってきた。



「これだ」



 マスターが自慢気にカウンターに置いたのは円筒ではなく箱型のライトだった。


 手のひらに収まるくらいの金属の箱の上蓋にライトがはまっている、今まで見たことのない形をしていた。



「こんな形のライトがあるんですね。初めて見ました」


「これはハーネスやベルトから吊り下げて使うんだ。便利だぞ。しかも魔力電池と魔力ライトを使ってる。明るさも抜群だ。その上、ライト部分にアタッチメントを付けると周囲を照らすランプにもなる。今なら魔力電池とランプアタッチメント付きで5500YENだ。ああ、安いなぁ。ほんと、安いなぁ。しかも、安い」



 全く安いと思ってない喋り方が気になるが、それだけの性能があるのかもしれない。ここはマスターの口車に乗っておこう。癪だが。



「じゃ、それください。もちろん口座払いで」


「おぅ、わかった」



 情報端末でお金を払い。ライトを腰のベルトに吊り下げる。付属品はリュックサックに入ってもらおう。



「ちなみにだが注意事項がある。今から言うことを忘れんなよ」



 お金を払ったあとに注意とか、ずるい。今日何度ずるいと思ったことか。オヤジずるい。



「これに使われてる魔力電池だがモンスターの魔石からつくられてる。だから魔力電池もモンスターから狙われるんだ。コイツの魔力電池は小さいのでモンスターを引き付ける距離は短いとは思うが十分注意してくれ。知らずに死なれて化けて出られても困るからな」


「死んでも化けては出ませんが… モンスターを引き付けるって魔力機関だけじゃないんですね」


「魔力機関がモンスターを引き付けるのは内部の魔力結晶のせいだ。そして魔力結晶は魔石からつくられてるからモンスターを引き付けるんだ。魔石派生品は全て引き付けるぞ。いい勉強になったな。化けて出るなよ」


「化けて出ませんが勉強にはなりました」



 魔石がモンスターを引き付けるのか重大情報だな。逃げるときは魔石を捨てるという選択も考慮する必要がある。忘れないで覚えておこう。



「では、今日はいろいろありがとうございました」


「おぅ、頑張れよ」



 時間は20時05分。随分と武器屋にいたようだ。もう暗いし公園に行ってログアウトだな。


 傭兵通りから裏通り、裏通りから公園とすっかりこの辺りの道も頭に入った。


 公園で試しにライトを点けてみる。


 明るい確かに明るい、これなら夜道も歩けるだろう。両手も塞がらないし、これは良い。


 しかしライトに照らされていない部分の暗さが際立つので索敵の難易度は上がったかもしれない。



『ぎゅるるぅぅー』



 あれ、え、急にお腹が痛くなってきた。


 今まで飲み食いしてもこんなことはなかったのに、どうして…


 近くのトイレとかチェックしてないし、ここからだと傭兵事務所か。間に合うのか。


 やばい、ここは… ログアウトだ。現実逃避作戦だ。


 すばやく情報端末のシステムアプリを起動し大袈裟にログアウトをタップした。



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