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1-アナザー


 あぁ、眠い。眠すぎる。


 俺の任務は柱の監視だ。今日は朝番だった。


 都市防衛隊に配属される者は最初に、この監視任務を1年はやらされる。訓練や任務の間にだ。


 監視任務自体は非常に緩く同じ日に当番になる者が最低一人はいるのでそいつと暇をつぶしながらこなしている。


 柱はいつ見ても変化はない。強化ガラス越しとはいえ少しくらい光るとか文字が浮かぶとか変化が欲しい。とはいえ、ここから柱の表面の変化なんてわからないのだが。


 この柱はアナザーの技術でできている。それくらいしか教えられていない。


 今の俺は強化ガラスで囲まれた柱を20メートルくらい離れた位置にあるテントの中から眺めているわけだ。退屈すぎる。



「もうそろそろ、交代の時間だな。おまえ飯どうする?」


「うーん、たまには外で食べるかな。牛丼食べたいし」


「牛丼かぁ、俺もさっさと食って寝るか」


「あぁ、おまえ午後は任務ないのか。うらやましすぎる」



 おぉ、あれっ、うーん、柱の周辺に光が集まっているような気がする。


 目を擦ってみる。眠い。寝ぼけて幻でも見たか。



「おい、おい、人が何もないところから出てきてるぞ、おい」



 目を凝らして見てみる。どうやら幻ではなく光が集まってそこから人が出てきているように見えた。


 変化があった。この退屈な任務が終わる時が来たのか… とか思っている暇はない。



「おまえ、急いで隊長呼んで来い。急げ!」


「お、おぅ、わかった」



 柱の周辺には続々と人が出てきている。俺たちと同じ人間に見える。年齢はバラバラだが若干若い者が多そうだ。


 男ばかりだな。いや… 女もいる。


 皆同じような服装だが武器は所持していないようだ。どうやら俺の命は変化しないらしい。良かった。牛丼、まだ食ってないし。


 が、しかし、俺の常識でこの者達の戦力を判断してはいけない。



 こちらに向いて何かを喋っている。霧内のこの距離では何を喋っていても聞き取ることは難しい。仕方ない…近づいてみるか。武器も一応持っていった方がいいだろう。



「すみません。ここは何処でしょうか?」



 俺に話しかけているのか?後ろを向いてみる。誰もいない。あれ… 言葉が通じる、というか同じ?



「聞こえてますか?ここは何処でしょうか?」


「は、はい、聞こえています。えーと、ここはアサヒ都市防衛隊基地大柱格納施設ですが…」



 いまので通じただろうか。俺も最大の疑問をぶつけてみる。



「こちらからも質問ですが、あなたは人間ですか?」


(質問の意図がわからない。NPCがプレイヤーにする質問か、これ)


「たぶん、人間だと思います」


「たぶん、なんですね」


「たぶん」



 俺は初めて謎の人達と接触した地球人ということになるのだろうか。


 しかし、なぜ”たぶん”なのか。


 だんだん、こちらに人が集まってきている。少し怖くなってきた。


 チュートリアルとかスタートダッシュとか聞き慣れない単語も聞こえてきた。


 さらに質問は続くようだ。



「最初は何処に行けばいいのでしょうか?」


「え!?」


「え?」



 もうダメだ。意味が分からない。


 すると、肩を軽く叩かれた。振り向くと隊長が部下を数人連れてきていた。


 隊長は苦笑しながら、手に持った情報端末をぶらぶらさせている。


 あっ、そうだ、情報端末で連絡すれば良かったのか。


 もう牛丼食って寝る。俺の任務もここまでだろう。



「ここからは私が代わります」



 隊長は、かなり大きな声を出している。これでも奥の方には届かないかもしれない。



「私はアサヒ都市防衛隊大柱監視部隊隊長のトウチです。みなさん、一緒にお話をしましょう」




 この日、牛丼は食えなかった。



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