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妻の時計店①

作者: つしぇる

不思議で少しゾワッとするような怪奇小説を目標にしています。

ガチガチのホラーではありませんが、非日常的な現象を小説で楽しめたら良いなと思いながら書きました。



妻の実家は古い時計店を営んでおり、私はその後継者に選ばれた身だった。


お見合いで出会って結婚してからまだ1年半しか経っていないので、この家の歴史など知らないし、妻の事にだってまだまだ浅い。

店主は妻の父親で、この時計店を切り盛りしている。

将来的には私が店主になるだろう。



我が家の一階が時計店になってるのだが、今日は休日で店も休みなのでたまには一階に降りて店内を吟味してみる事にした。


この店に並ぶ時計はどれも年代物だが、美しい装飾が施してあったり、シックなデザインでそう悪くはない。

特に店内の右奥にある振り子時計はなんだか惹きこまれるような雰囲気で気になるのだ。



私は振り子時計に誘われるように近付いてみたのだが、どうやら動いていないらしい。壊れているのだろうか。



しかし妙だ。気にかかる事がある。



店にある振り子時計はこの時計一つだけなのだが、毎日決まって深夜の1時に一階の方から振り子時計らしき音が鳴るのだ。


どうして深夜の1時なんかに鳴らすのかと不思議に思っていたが、いつも決まった時間に鳴るので特には気にしなかったのだが…





「壊れているなら…あの音は一体」




一瞬ドクッと心臓の鼓動が強くなった。





ああ駄目だ、心臓に悪い!


ふと右手にあった壁掛け時計の針をみると、昼飯時だったのでモヤモヤした心を抱きながら私は妻の元へ向かった。





二階のダイニングに行くと、妻が手料理をテーブルの上に並べている途中だった。



「あら由紀夫さん、寒かったんじゃない?顔色悪いわよ。」


くるっと私の方を向くとにこやかに迎えてくれた。




「あぁ…少し気掛かりな事があったもんで。」


「気掛かり?」

と妻が眉を曇らす



話したいのも山々だが、妻の手料理が冷めてしまうので後にした。


「あとで話すよ。」

ふーんと妻が相槌を打つと食卓の箸が動き始めた。



——





「ねぇ、気掛かりな事ってなに?聞かせてよ」


ある程度箸が進んだ所で妻が口を開いた



「そうだった。下に置いてある古時計の事なんだけどね、あれ動いてないでしょ?」



「そうね」


「じゃあいつも深夜にボーンって鳴ってるのは何なのかなって。」



「……。」



ここまで会話が進むと、妻は急に黙り込んだ。


何か思い当たる事でもあるのだろうか。



「英恵、どうした?」


妻は不安げな表情のまま顔を上げると



「…あのね、これは私が小さい時からそうなの。あの時計、動かないのに何故かお父さんは捨てないし…」



「英恵が小さい頃からか。だとするとお父さんは何か知ってるのかな?」


「ああそう!思い出した。 あの振り子時計、絶対に叩いたり動かしたりしちゃいけないと言われたわ!」



「そりゃ飾りだからな。高そうだし」



私がそう言うと妻はそうじゃないと言わんばかりに首を振った。



「お父さんの忠告なの。ひいおじいちゃんの代から言われ続けてるわ。」



「へぇ…なんて不気味なんだ。」


ここで2人の食事は終わり、会話も断ち切られた。




自室に戻ると、急に眠気が私を襲う。


時刻は1時半




少し、昼寝でもしよう




——






夢を見た。





私はあの振り子時計の前に立っていた。



店の、右奥にある振り子時計。



窓ガラスの向こうには夕空が赤く燃えており、窓とドアからは黒い影が伸びている。




「今は夕方なのか…?」


随分眠ったなあと思いながら右手奥の壁掛け時計の針を見ると



1時…?



午前か、午後なのかはわからないが何故この時間に夕陽が出てるのか?



時計の故障かバッテリー切れで針が止まってるだけ、と他の時計も確認すると



「1時だと…。」

どの針も1時を差していた。





その時だった。





背筋にゾクッと凍るような感覚があった。


後ろを振り向くと、そこにはあの振り子時計があったのだが…






キラリと反射した時計盤のガラスに、女が映っていた。



見たところ歳は20手前の女性に見える。とても美しい白百合のような女性だった。



私は動揺していた。




何故、何故私の顔ではなく女の顔が反射しているのか?



頭に浮かんだ答えはただ一つ





この世の者ではない…!



ガラスに映り込む長髪の女は、冷や汗を流す私を見てにやりと笑うと何かを喋り始めた。



__



口は動いているものの、声は聞こえない。

ガラス越しに私に伝えようとした言葉。



唇の動きを見て理解した。






「由紀夫さん」



英恵………?







__さん、由紀夫さん!



揺さぶられて起こされたようだ。


「あれ……英恵なのか?」



「もう、何ぼーっとしてるんですか!夕ご飯の支度してますから、起きて下さい。」


「あ、あぁ…」





気味の悪い夢を見た…!



身体を起こすと、寝汗がシーツに染みを作っていた。


ガラスの向こうから訴えかける女が今も脳裏から離れてくれない。


重いため息をついて部屋を出た。





すると廊下でバッタリお義父さんと対面した。



「なんだぁ由紀夫くん、折角の休日なのに具合悪そうじゃないか」




「お義父さん…一階にある振り子時計が、気味悪くて。」



「時計?」


私が振り子時計の事を口に出すと、お義父さんの声色と表情が変わった。




「由紀夫くん、君はあの時計に傷を付けたりしていないね?」


「してないですが…」



お義父さんは真剣な目つきで私の事をしばらく見つめると


「それなら、問題ないよ。」


「はぁ…」


「いやいや、万が一傷でも付けて由紀夫君が時計に呪われてしまったら心配だよ」


そう言ってお義父さんはからかうように笑った。






呪われるだと?あの時計に?



いまどき呪いなんて口にするかと鼻で笑いながら、お義父さんに会釈すると私はその場を離れた。





次回は 『妻の時計店②』 になります。

本当は一つにまとめて終わらせたかったんですけど、後半から集中力も切れて面倒になったので無理矢理終わらせちゃいました。

魂のこもっていない小説を書いてしまって、正直自分はなんの達成感も感じていません。


それでも拙い文章に目を通してくれてありがとうございます。


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