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魔王転生 ーそして魔王は輪廻をめぐるー  作者: 戸高 舞夜
第一章 さらば日常、ようこそ過酷な非日常
1/4

一:日常

 

 放課後。授業というかったるいものから解放される時間である。部活にも入っていないので、ただ帰ってダラダラするだけなのだが、俺としてはそれが当たり前の日常なので大して気にはならない。げ、あのサイドテールの女は……


「あ、住良木(すめらぎ)くん。今から帰り? 」

 

 隠れようと思ったが、あっさりと見つかってしまった。嫌なら相手をせずに帰ればいいが、さすがにそれは出来ない。俺もなんだかんだ言ってヘタレなのだ。

 真宮 柑奈(まみや かんな)。俺と同じクラスの女子生徒で、一年からの知り合いでもある。先ほど脅かすなどと言ったが、別に嫌いと言うわけではなく、どちらかと言うと好きな方だ。もちろん、クラスメイトとして、だけどな。


「あぁ、ドラマの再放送があるから今日は早く帰りたいんだよ」


  逃げ道としてはいささかベタかもしれないが、新聞等で番組表を見ていない人にとっては有効的な嘘だ。


「嘘ばっかり。今日は夕方からどこの局も再放送なんてないでしょうに。それに、ドラマはあんまり見ないって言ってたじゃない。」


 俺のバカ野郎。それよりこの女、今日の番組を全部把握してやがる。ネット社会のこのご時世、十代で新聞を好んで読んでるのは少ないと言うのに……真宮、恐ろしい子だ。


「甘いな真宮。今の時代、ケーブルテレビって革新的なものがあるんだよ。それも昔の時代劇から最新のドラマや映画まで観る事が出来るんだぜ?」


「けど住良木くん、前にケーブルテレビが観たいけど契約してないから観れないって嘆いてたよね? 」


 もしタイムマシンがあるなら少し前の俺をぶん殴りたい気分だ。俺ってホントバカだな。これからは後の事を考えて嘘をつく事にしよう。


「お節介かもしれないけど、一度しかない高校生活の大半を家でダラダラ過ごすなんてもったいないと思うんだよね。社会人になってから後悔すると思うよ、絶対」


「確かにその通りだ。けどな真宮、そのダラダラした毎日を送ることが出来るのも一度しかない高校生活でしか過ごせないと俺は思うんだ。一理あるだろ?」


 屁理屈かもしれないが、俺には華やかな高校生活を送れる自信がない。というよりか、めんどくさい。ダラダラ過ごして死ぬわけでもないしな。


「もう、屁理屈ばっかり。そういうの、ダメだよ。という事で、私に付き合ってくれるかな?」


「え、付き合うって?」


「あ、別にそういう意味じゃないよ。駅前に新しくスイーツ専門店が出来たの。その店が今カップル限定で半額サービスをやっているから住良木くんには彼氏役をしてほしいの」


 まさかの展開である。クラスメイトを彼氏と偽り、カップル限定の割引を受けようとしているとは……どうやら認識を改めないといけないみたいだな。もっと真面目なやつだと思ってたぜ……


「それで、なんで俺なんだ?」


「住良木くんにならこういう事も頼みやすいと思ったから。そういえば八雲くんは甘い物は大丈夫なの?」


「甘いやつは人並み程度には食べれるから大丈夫だ。辛い物なら大歓迎なんだけどな」


 昔、辛いものを食べすぎて胃を痛めてしまった事をふと思い出してしまった。あの時は大変だったな……今でもその影響で刺激物は親からあまり食べるなと言われている。


「住良木くん、どうしたの?」


「あ、悪い。そんじゃ行こうぜ」


 家でダラダラすることが出来なくなってしまったが、仕方ない。こうして、彼氏役として真宮と駅前に新しくオープンしたスイーツ店に行くことになった。




 ◇




「う、甘っ」


「そうかな? 私はちょうどいいと思うけど……。」


 話題のスイーツ店に真宮とカップルと偽り入店した俺は、何を注文していいか迷ったので、真宮と同じものを注文したのだが、それが間違いだった。見た目は普通のイチゴパフェなのだが、とにかく甘い。こんな甘いパフェをちょうどいいとは……女子の味覚はとんでもないな。 


「それにしても……。」


 見渡す限りカップルが仲睦まじい空気を醸し出してるから正直居づらいのが本音だ。そういう俺も端から見れば真宮とカップルって思われてるかもしれないけどな。


「凄いね、この店。きっと私たち以外本当にカップルだよ」


「だな。一人身の人だと絶対に辛い空気しか感じねぇし」


 今思えば真宮が男子とそういう話が無いのも不思議に感じた。容姿端麗かつ成績優秀で男女分け隔てなく接する明るい性格。モテない筈はないんだがな。まさか、俺が知らないだけで性悪なのか!?


「……? なに難しい顔してこっち見てるの?」


「あ、あーなんでもない。あんまり甘い物ばっかり食べると太っちまうぜ?」


「もう、デリカシーないんだから、住良木くんは」


 どうにか話をそらすことに成功。代わりにデリカシーの無い男になってしまったが仕方ない。


 それからは他愛のない話をして過ごし、店を出たのは外が真っ暗になってからだった。 真宮に送ると言ったが、一駅だから大丈夫といい、電車に一人で乗って帰っていった。俺もここから二駅なので、真宮とは反対の路線に乗り、家がある駅に向かう。

 そして俺は出逢う事になる、この日常を変える、一人の少女に……

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