序章 -1-
『聖暦二〇六〇年。皇国を中心とした第三次世界大戦勃発。
世界を巻き込み約三年間続く。
その後約三百年の間、世界は何度か戦争を繰り返していたが、聖暦二四五五年にアメルリア兵が誤って香橋の民間人を射殺。通称『血塗られたクリスマス』発生により、以前からいがみ合いが絶えなかった両国の事態がついに悪化。
アメルリア・香橋戦争、のちに言われる『ナイトメア戦争』勃発。
各国を巻き込み、それは全世界に広がった。
聖暦二四五九年に、アメルリア側の勝利で終結したナイトメア戦争後は穏やかな時代が訪れる。
ただし、戦中、最前線となった皇国は終戦間際に落とされた爆弾のせいで首都が壊滅。
政府は首都を変えざるをえなかった』
これは、オレが拾った本に書かれていた内容の一部だって、草が読んでくれた。ホントかどうかを確かめる術は何も無いけど、爆弾が落とされたのはホントみてぇだった。
周りはほとんどが瓦礫の山になってるし、道は穴だらけ。夜は暗いけど、焚き火をすれば料理はできる。水だったら井戸があるから不便は無い。服は時々〝調達屋〟って呼ばれる奴らが売りにくる。
政府ってやつらはここを見捨てたが、代わりに壁を作った。
入るのは自由だけど、出るのには世界大統領ってやつの許可が必要となるんだって話だ。誰だよって思うけど、草が言うにはこの世界で一番偉いやつなんだって。
そんな物が手に入るやつがそもそもこんな所に入るわけも無く、入ってくるやつは大体、壁の向こうで生活できなくなったやつらばかりだ。だからなのか知らねぇけど、ここには〝法律〟とか言う外のルールは無い。外のやつらが干渉するのは出るときだけで、この中で起きている事には一切関わりをもたないから、なおさらだ。
いつのころからか、中に住む連中はここのことを、皮肉を込めてこう呼ぶようになった。
〝東の果て、神隠れの古都。東境〟と。