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武田軍の猛攻と今川家の混乱


「私の家臣と私の兵士諸君、甲斐源氏の名門武田家こそが関東の正当なる支配者であることを関東を不当に支配する不届き者どもに思い知らせなければならない。そして祖国甲斐国に勝利をもたらし、甲斐国の支配領域の拡大こそが甲斐国と武田家に繁栄をもたらすのである。その繁栄は必ずや諸君らの子孫たちの繁栄へと繋がるのである! 全軍進軍せよ!! 」


「「「甲斐国万歳! お館様万歳!! 甲斐源氏万歳! 」」」


 武田晴信の演説と武田家の家臣と兵士達の大合唱と共に武田家による関東侵攻作戦が始まった。


余談だが……高坂昌信の率いる信濃衆の信濃出身者達は『甲斐国万歳』のところを『信濃国万歳』に置き換えていたりした。彼らも武田家臣で忠誠心も高かったが……その辺は譲らなかったのである。


武田家による関東侵攻作戦は足利家の家臣の家系とは言え、所詮は成り上がりものの北条家に対する関東勢力の不満を代弁する形で行われた。


「裏切り者の武田を何とかしなければ……」


今川義元は悩んでいた。本来なら三国同盟の盟主である義元は裏切った武田家との同盟を破棄して北条家を直ちに救援しに行くべきなのだが……それを実行するだけの状況では無かった。桶狭間で敗北したことよりも、それにより失った遠江国の有力家臣達の穴を、どうやって埋めるかが問題だったのである。または既に不満がピークに達している遠江国の不満も解消しなければいけなかった。


「遠江国の問題さえ解決すれば直ぐにでも甲斐国に攻め入れるのだが……」


今川家が北条家を支援する最も良い方法は隣国である武田家の本拠地である甲斐国に攻め入ることである。上手くいけば甲斐信濃を手に入れるチャンスとも言えたのである。


「三河の松平家が織田家討伐の再開を要請してきております。」

「織田家との戦いは松平家に任せると……」

「閣下、恐れながら申し上げますと……」

「なんだ……」

「鵜殿家を中心とした勢力が松平家への支援を拒否しております。」

「何故だ!」

「松平家は信用できず……裏切る可能性があると彼らは考えております。」

「……」


 これは今川家だけの問題では無いが……戦国時代と言わずに世界の他の国の歴史でも起きることである。それは自家の繁栄のために他家に自家の人間を嫁がせる。(養子や婿も含む)をして行くことで他勢力を取り込んだり、家臣を自家に取り込むことで自家を強大化させていく手法である。この手法は最も簡単で最も効率的かつ普遍的な方法である。しかし、この方法には副作用がある。


副作用とは、取り込むことで身内となった他家の問題や争いを自家も吸収するということである。この副作用はプラスにも働くがマイナスにも働きやすく、絆が強ければ強いほど問題は大きくなるのである。


「鵜殿家は三河統治の要になる一族です! 彼らの意見を無下にすることは今川家の結束を崩すことになります……」

「……」


史実的な要素からも読み取れるが……鵜殿家と今川家の関係は強固であり、その関係は今川家と松平家の関係を越えていた。これは単純な血の繋がりだけでは無く、今川家の三河統治及び戦略上の観点からみて鵜殿家の存在は松平家の重要性よりも上だったのである。『松平か鵜殿か?』という問題になった時に鵜殿家を切り捨てるという選択肢は今川家には無かったのである。


「東三河の鵜殿を見捨てることは、ただでさえ混乱気味の遠江国に動揺を与える、鵜殿との関係が悪化すれば……結局は松平家に良いように付け込まれるだけだ!」


桶狭間、そして武田家の関東侵攻で揺れる今川家がとれる選択肢は限られていた。立て直しを図る今川義元は戦略の見直しと同時に松平家への圧力を強めていくことにしていくのである。

桶狭間以後の混乱、今川家と血縁を結んだとはいえ新参の松平家と古参の鵜殿家では絆が違いました。また、鵜殿家は東三河の要所を守っており、同地の維持が三河と遠江国の意地に直結する以上は鵜殿を切り捨てるという選択肢はありませんでした。


今川家が何度歴史をやり直しても譲れないものがあったのです。

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