その時歴史が動いた!
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ピロピロリーン♪という間抜けな音と共に秀康は眠気眼で今来たメッセージを確認するために端末を見た。
『武田家は上杉家と同盟を結びました♪』
……
……
……
「(゜Д゜)ハァ?」
『おまえは言ったい何を言っているんだ?』と叫びたくなるメッセージである。『その時歴史が動いた!』という番組のタイトルが頭に浮かんでくるのであった。
「晴信様、御冗談を言ってはいけません!」
「春ちゃんは、いつだって冗談を言わないよ!」
「え」
「うん?」
「宿敵でしょ?」
「北条家のことだね!」
「いやいや上杉だよ!」
「五千年前からマブダチだよ!」
「嘘つけよ!」
「良いツッコミだね!」
「……」
頭が付いていけずに大混乱である。とりあえず冷静になる必要がある。ノリだけで重要な話をしてはいけない!
「どうして同盟を結ぶことにしたの?教えてください!!」
「実は関東決戦の時に……勘助が上杉家に捕らえられていたんだ……」
「人質を取られたから上杉に寝返ったのか?」
「春ちゃんはテロ(脅し)には決して屈しないよ!」
どこかの三文芝居並の決まり文句である。
「では何故ですか?」
「勘助が直江景綱を説得して上杉と同盟を結ぶことを承諾させたからだよ」
さて、ここで少し詳しい説明が必要になるので説明しよう。
晴信は「春ちゃんはテロ(脅し)には決して屈しないよ!」と言っていたが、これは決して嘘では無い部分が有る。武田晴信は『脅すことはあっても脅されるのは大嫌い』という考え方の持ち主であり、甲斐の虎と恐れられる戦国随一の傑物である。この性格を誰よりも理解しているのが宿敵こと上杉(長尾)景虎である。なので山本勘助を捕えても上杉は勘助で武田家を脅すことは出来ないと心得ていた。また、そのような非道な行為は『戦いの象徴である毘沙門天の化身』を自称する上杉景虎にとっては許されないことでもあった。そのために上杉景虎は勘助に対して礼をもって接することにしたのである。
直江景綱は勘助を捕えた功績で人質となった勘助を預かる立場になったが同時に負傷したために療養のために同じ城に滞在していた。勘助は、これを利用して景綱と話をして自らの野望の実現に向けて景綱を説得したのである。
武田家側の思惑は明らかであった。上杉家の関東侵攻作戦は失敗に終わり、反北条包囲網は事実上解体まで追い込まれていた。北条家の関東支配は時間の問題に成りつつあった。同盟者の勢力拡大を喜びたいところではあるが……同じ関東の勢力であり、北条家よりも歴史が古く、関東の名族のリーダー的存在を自負する武田家にとっては許しがたいことであった。
桶狭間における今川家の敗北は義元の首までは行かなかったものの多くの重臣が死んだことで今川家が弱体化したのは目に見えており、今川側には親武田派も多いので武田家を攻めるほどの余力を織田との戦争が終わっても整えるのに時間がかかるとも考えていた。
北条よりも先に今川を攻めるという手もあったが……その場合は領地の離れ具合から見て上杉が協力する見込みは少ないし、今川義元健在の今川家を攻めるのは難しいとも考えていた。むしろ、本拠地である駿河を攻められることを考えると今川家は武田家との戦いに全力を注ぎ、北条も駿河が本拠地の小田原城に近いだけに今川家に全力で協力するので駿河を落とせずに戦線が膠着する可能性が高く、その隙に三河と遠江を織田側に取られるリスクも高かった。さらには態勢を整えた上杉が背後を奇襲してくるリスクも決して無いとはいえなかったのである。こうした事実を踏まえて、武田晴信は今川家よりも先に北条家に攻撃を仕掛けて北条家を屈服させてから今川家を叩こうと考えたのである。
「上杉家が、いつまで従うと思いですか?」
「変態上杉なら従うよ!」
秀康が鋭い指摘を仕掛けてみるも武田晴信は特に心配した様子は無かった。晴信の言う通り、上杉景虎には致命的な問題があった。一つは義に厚いことである。義に厚いということは一度結んだ約束を破るには大義名分が必要だと考えている傾向が強いということである。だから簡単には一度結んだ約束を破ることはしない。変態と言う表現を使うほど上杉景虎は信心深い、信心深すぎて自らを毘沙門天の化身だと信じ込んでいて、恐ろしいほど軍略に優れていて軍神と恐れられながらも、何故か実子を作らずに処女を守り、養子をとる辺りが武田晴信からすれば変態という表現になるのである。これは自由奔放で人に有無も言わせずに従わせる絶対的君主でありながら、それを巧みに隠し、人を裏切らせないカリスマ性を持つ武田晴信の上杉景虎への見方であると同時に信頼でもあった。
「確かに、そうかもしれませんが……北条を倒せますか?」
「春ちゃんに任せなさい!」
説得力があり過ぎて、ぐうの音も出ないとは、まさにこのことか……と秀康は絶望した。あわよくば漁夫の利と行きたいところだが……それを考えられるほど相手は容易くないのである。
「春ちゃんの意図は分かってるよね?」
「……」
「意図と言うのは何だろうか?」という疑問を口に出した時点で失望されそうである。それに聞きたくも無い内容であることは間違いないだろう。十中八九の確率で『今川を後ろから刺せ!』という意味である。ここで簡単に答えれば、どんな酷い目に遭うか分かったものでは無いのである。
「分かってるよね?」
「お答えできません。」
ムッという感じの怒りが次のメッセージが来るまでの間から感じられる。
「やってね!」
たった一言のメッセージが送られてきた。この軽いメッセージに何の意図が含まれているのか……知りたくも無いと秀康は考えるのであった。
最近、ネットフリックスで『ダウントンアビー』見てます。イギリス貴族の世界観が面白いです。上流階級の優雅さと難しさが垣間見えて良いです。
史実考察
桶狭間の戦い後、武田家は今川家が弱いと思って今川家に攻め入りますが……実際には松平家に負けているはずの今川家に苦戦します。今川家の方も武田家に善戦したりします。結果として今川家から経済封鎖を受けたことにより塩不足に陥った武田家は経済危機に陥ります。そこを救ったのが上杉家でした。これが俗に『敵に塩を送る』という格言になりました。つまり上杉家と武田家は対立はしていたが同盟を結ぶ可能性はあったと思います。
何が言いたいかと言いますと史実と違い今川義元生存ルートである今作では武田家は今川家には攻め込みません。さらには上杉家と同盟を結んでしまうのです!こうして史実とは違う流れになっていきます。
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