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木下藤吉郎

マイページの活動報告に主要な登場人物を紹介しています。


遂に秀康の義理父である木下藤吉郎の本性に迫る話

 ねねという男がいた、戦国の世では男性であっても『武士に不向き』と見なされれば容赦なく女性名が与えられていた。逆に女性でも『武士に適合している』と見なされれば男性名が与えられていたのである。


 ねねは花が好きで争いが嫌いだったために女性名が付けらることに対しては特に嫌では無かった。自分を女と思ったことは無いが…女性のように美しくありたいと思う程度には女性化していた。


 ねねには他に兄弟には『やや』と『くま』がいたが両方とも女性名となるなどねねの兄弟は皆揃って武士向きじゃないと認定されてしまった。


 そんなねねに突然、養子にしたいと願い出てきた奇特な人が現れた。それは浅野長勝という人物である。浅野建設の社長で信長の家来になっていた人だった。長勝の申し出はねねの実家である杉原家にとっては渡りに船だったらしく、すぐさま養子縁組が行われた。一緒にややまで養子にするという徹底ぶりでもあった。


 最初は『社長の養子になって贅沢出来るとねねは喜んでいた』が…弟のややが養子になると直ぐに同じく養女になっていた浅野長政に嫁ぐことになった。どうやら決まっていたことらしい…これは自分も誰かに嫁がされるに違いない!と思い…ねねは憂鬱な日々を送ることになった。


「お主のことが好きだ!」


 そんな言葉をねねがかけられたのは憂鬱な気分でいた時だった。言ったのは木下藤吉郎という女だった。彼女は信長の家来で最近出て来たポッと出の出世頭だった。


 木下藤吉郎は信長の勘定奉行(金庫番)に任命されたのを出世の第一歩とした。その後、奉行衆となり、小牧山への軍需産業の集積化の事業において信長の命令を着実に実行して名声を高めていっていた。一方で武勇の方は弟の秀長に遠く及ばず、『事務しか出来ない奴』と馬鹿にされていた。


 聞くところによると実は武士に向かないと言われて女性名を与えられたが…後に遠江国の松下家に仕官して無理やり木下という姓を名乗り出したと噂されるようになった。もっと悪意を言うならば『金で武士の地位を買った』もしくは『弟の七光り』と言われていた。


 そのためかねねの実母は『戦えない武士は武士にあらず!』と藤吉郎を馬鹿にしていた。そんな藤吉郎はねねの関心を買おうと積極的にアプローチを仕掛けて来た。ねねが欲しいと言うものは何でも買ってくれた。時にはサプライズと言ってフラッシュモブやイベントを仕掛けてきたりもした。まさに成金の手法である。


「私はねね様を男だと思っております!そのデッカイ大根を私の股に入れていただいて構いませんぞ!」

「いや…それは…」


 ねねがドン引きするほど藤吉郎はねねを尊重した。ねねも次第に心惹かれるようになった。そうしたこともあって二人は結婚することになった。


「金で買った恋などと言われたくない!!」


 そう言い放った藤吉郎は結婚式は藁と薄縁を敷いて行われた質素なものとした。まさに最大の皮肉とサプライズだった。


「いずれ伝説となるだろう!!」


 そんな大仰なことまで言い放った藤吉郎は結婚指輪さえも用意しない徹底ぶりで自らの成金趣味を封じてねねとの結婚を自らとねねの『恋愛結婚だと強調』したものとした。結婚式は実に質素だったが参加した人は多く、非常に賑やかなものとなった。出された食事は焼肉とか肉関係が多く、お酒は『質素』とは言えないほど豪華だった。


「酒と食事までケチっては祝ってくれる者達に失礼!」


 それが藤吉郎の参加してくれた者へのサプライズだった。


 とにかく藤吉郎といれば今後一生飽きない人生になるに違いない!と思わせる程、彼女は演出の上手い人だった。それでいて素直な性格をしていた。結婚式前に藤吉郎はねねに真実を告げていた。


「実は全て茶番!!」


 そう全ては茶番である、藤吉郎は金にモノを言わせて数々の武家を買収していた。浅野家も没落気味で会社は借金漬けだった。そこに自分の子飼いの部下だった長政を養子にして嫁がせたのも藤吉郎である。そして浅野長勝にねねとややを養子にするように要求したのも藤吉郎だった。


「だがお主を遠くで見かけた時にビビッ!と電撃が走って『この男と結婚したい!』そう思ったのは本当なんだ!!」


 藤吉郎が不思議な魅力カリスマの持ち主でねねの心を掴んで離さなかった。


 こうしてねねの波乱の人生がスタートしたのである。


 とある居酒屋で藤吉郎と配下の部下達が密会をしていた。もちろん居酒屋の裏の経営者は藤吉郎である。この密会に参加していたのは藤吉郎の部下である。浅野長政、蜂須賀正勝、木下秀長など後の豊臣政権の重鎮達であった。


「今日の正勝の私への罵倒ぶりは素晴らしかった!」

「お褒めいただきありがとうございます。」

「よくやったぞ!」


 すき焼きの鍋をつつきながら藤吉郎は日々の部下達の活躍を労っていた。藤吉郎は足を崩して愉快そうだが…部下達は恐縮して正座で藤吉郎に気を使って大変であった。


「これからも私を罵倒してくれよ!」


 正勝は表向きは今だに藤吉郎より偉い立場である。信長に仕官したのも早かったし、家柄も上だった。蜂須賀家は木曽川の水運事業で莫大な財を成していた。だが、それらは全て目の前にいる木下藤吉郎という女帝のお陰であって蜂須賀家は女帝の傀儡にしか過ぎなかった。でなければ今頃、蜂須賀家など没落して滅んでいたに違いない!


 だからこそ本来は頭の上がらない絶対的支配者であるべき御方だが…この木下藤吉郎は影の支配者では終わりたく無い!!という思いが強かったらしく、あらゆる手を使って表の世界で出世しようと企み、画策していた。そのためならば部下にワザと罵倒させて自らを低く見せる努力をすることなど彼女にとっては朝飯前である。


 だが、それも表での話である…裏では強権的な女帝として君臨していた。ある時、蜂須賀が調子こいた行為をしたら後で藤吉郎から「お前、調子に乗ってると殺すぞ!」と本気で言われて折檻されたことがある。もちろん『殺す!』は裏の世界で頭角を現した女帝にとっては脅しでは無い。やろうと思えば出来るということを蜂須賀自身が何度も直接見て来ていただけに恐怖であった。


「いや、働いた後の飯は美味しいな!」


 密会は常に表で溜まった女帝のストレス発散のために行われていた。指示や命令は全て藤吉郎の独断で行われており、部下達は命令に従うのが常であった。(もちろん、意見を述べることはあったし、採用されれば多額の褒美も出されていた。)


 ここまで言うと勘違いされるのが…女帝は恐怖で支配していると思われるだろう…確かに、そういう面はある。しかし、家柄の低い藤吉郎の力では家柄の高い人間を従わせる方法は限られていた。毎回、金ばかり出していては良いように利用されるだけで終わりである。人間的魅力などと言うモノは藤吉郎には神懸かり的にあることは誰よりも藤吉郎が理解していた。しかし、人間的魅力は利害関係と家柄の前には無力であると藤吉郎は数々の失敗で知っていた。


 最終的には力がモノを言うのは戦国の世に限らず、人間社会の業の深さである。だからこそ、特に表の権力が常に伴わない藤吉郎にとっては最終的な手段として常に使わざるおえない行為となっていた。


 実際に蜂須賀も長政も…人間的な魅力を藤吉郎に感じていても…それは永続しない!ということを体現するかのように動くことがあった。結局は『どこの世界も家柄がモノを言う!』のである。これが藤吉郎のコンプレックスであった。それは自らに近しい人間に対してほど如実に現れる藤吉郎の欠点であり性癖である。それと同時に皆が藤吉郎に感じる『完璧な人間』という妬みを打ち消す不思議な効果を出していた。


 ちなみに弟の秀長とねねは比較的、藤吉郎のコンプレックスの対象にはなりにくかった。秀長は優秀だが藤吉郎と同じ家柄で藤吉郎に心酔していたために藤吉郎の怒りを買いにくかった。ねねも『武士に不適格と見なされた!』というコンプレックスの持ち主で藤吉郎と相通じるモノがあり、相性が良いらしく衝突しにくかったからである。


 この日の密会は夜明けまで続いた。部下達は藤吉郎のストレスを発散させると共に藤吉郎から褒められていた。アメとムチを使い分ける藤吉郎によって部下達は育成され、より洗練された演技者へと育てられていった。


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