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長沢松平家

長沢松平家


 父上は死ぬ時ですら俺に会ってくれなかった…… 俺は絶望の末に死んだはずだった……人生こんな感じで終わるんだな……みたいなノリで死んだ。


 起きてみれば昔に見た記憶のある城にいた。そして若君として扱われることになった。死後の世界とは面白いというよりは残酷である。


 我の名前は松平忠輝である。その我が竹千代君の双子の弟として長沢松平家に養子に出された。何という皮肉か……父上の双子の弟だというではないか…この際、父上を殺すために暴れてやろうかと思い企みを胸に抱きながら日々を訓練と勉強に使って過ごしていた。


「竹千代君が元服して秀康と名乗って岡崎城を信定から取り戻したらしい」

「秀康が吉良義昭を討つために長沢に向かってきているらしいぞ」


 そんな会話が聞こえた、意味が分からん、竹千代君が秀康を名乗った?…もしや、兄上も転生したのか?!


 兄上こと秀康と忠輝は仲が良かった、忠輝にとって唯一肉親で仲良く話が出来た人であった。それが早死にするとは考えてもいなかった。


「もし、兄上なら加勢しなければ」


 そう思った忠輝は居てもたってもいられずに魔装甲冑を着て武器を片手に持って城を出ようとする。


「辰千代!どこへ行くのだ」


養父の松平康忠が止めてくる。


「父上、今こそ、松平家は結束して吉良と戦うべきです」

「まて、今川はどうする? 」


 長沢松平家は今川派である、今川家と領地が近いことも有り、松平一門でいち早く、今川に接近した。そのために今川家からは独立勢力扱いを受けており、他の松平一門とは違う立場であった。それと同時に松平本家とは比較的友好関係にいるなど複雑な事情を抱えていた。


「父上、吉良義昭は今川の支持を受けておりませんぞ!今こそ松平本家と共に戦うのです」

「……確かにそうかもしれない」

「吉良軍が通り過ぎるのを黙って見逃す手はありません、秀康様が来るまで足止めしましょう」

「分かった、お前の言う通りにしよう」


 松平康忠が同意したのを見ると忠輝は部下達に命じる。


「皆の者、武器を取って付いてまいれ」

「おおおおお」


 城を出た忠輝は吉良軍が通り過ぎるであろう場所に兵士達と共に潜んで待ち構えた。

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