将軍山城の戦い①
細川春之は三好長慶によって細川京兆家を相続することを認められた。父親の春元も政権復帰を認められる代わりに春之の当主就任を認めた。
春元は政権復帰を認められたことにより油断しており、警戒を怠っていた。そのために息子の昭元と共に三好方の普門寺城にいるところを呆気なく逮捕されてしまった。二人は普門寺城に幽閉されることになったのである。
これにより名実ともに細川京兆家を三好政権が掌握することが可能になったのである。三好政権にとっては好都合なはずだった。
しかし、事態は思わぬ方向に向かった!
父親と兄が突然、何の言われも無く政権復帰直後つまり和解が成立した直後に逮捕されてしまうという理不尽極まり無い行為に遂に細川春之も耐えられなかった。
細川春之「いくらな何でも不義理過ぎる!」
そう感じた細川春之は自らが守っていた『将軍山城』と共に挙兵するという暴挙に出た。六角義賢に連絡して六角勢の永原重澄という家臣を『将軍山城』に招き入れたのである。これにより『将軍山城』の兵力は倍増することになり、難攻不落の要塞が出来上がったも同然の状態となった。
永原重澄「春之殿、この度の挙兵、我々としては大変うれしく思っております。」
六角勢としては緊張していた。春之の挙兵は三好方の策略では無いのか?と疑っていたからである。義賢は家臣の重澄を『将軍山城』に入城させるように細川春之に要求した。
城に入れさえすれば春之が裏切ったとしても同城を手に入れられるし、拒否するなら六角本隊は無傷で撤退出来るという訳である。重澄は当然ながら入城する時は大変緊張した。しかし、春之は永原勢を歓迎して何の疑いも無く入城することが出来た。
とりあえずは安心することが出来たと言える。だからこそ重澄としては春之を褒めて気が変わらないようにしなければならない
春之「重澄殿、この戦い何としても勝たねばなりません」
春之の決心は堅そうだった。当初は疑いの目を重澄は向けていたが春之の態度に不審な点は無いし心の底から歓迎されていると感じた。何よりも春之の態度は謙虚であり重澄の意見を素直に受け入れてくれており重澄としては春之に対して好印象を抱いた。春之となら枕を並べて討ち死にするのも悪くは無いと思わせてくれる。
重澄「布陣はどうしますか?」
春之「優位なのは我々です。出来る限り攻めの布陣を見せることで敵を挑発して引き寄せたいと思っています。」
重澄「大坂方面で畠山勢が攻めておりますし、三好勢は万が一を考えて守備的な配置にしてくるのが見えてますので良いと思います。」
三好氏の根拠地は阿波国だったが第二の根拠地と言えるのが大坂周辺である。そして現在三好長慶が本拠地としてるのは芥川山城(大阪府高槻市の三好山にある城)である。三好氏は大坂が事実上の本拠地だったのである。その大坂を畠山勢に攻められる以上は京都方面での戦いには積極的にならないだろうと細川・六角両陣営は考えていた。
六角本隊
後藤賢豊「重澄の隊が予定通り『将軍山城』に入城出来ました。」
六角義賢「ひとまずは安心だな」
六角本隊は志賀越道通るべく待機していたが用心して永原隊を『将軍山城』に入城させた。そして本体は様子を見ていたが何事も無く無事に永原隊は城に入ることが出来た。これを見て六角勢の士気はいよいよ高まって行くことになる。
六角義賢「さあ!皆の者!!京都へ進軍を開始するぞ!!!」
六角勢「おおー!!」
遂に六角勢は京都への進軍を開始した。
賢豊「閣下、後方の山に砲兵隊を配置しては如何でしょうか?」
義賢「なぜだ?」
賢豊「我が方は有利です、しかし京都を攻め落とすには三好勢を倒さねばなりません。そして出来る限り我が方の損害を小さくする必要があります。ですので敵に対して有利な砲兵隊を優位な山頂に配置して攻撃するのです。」
六角勢の砲兵隊は三好の砲兵隊より有利だった。三好勢の野砲よりも優れていたからである。さらにこちらには吉田流という優れた砲兵術を会得した集団がいた。これを使わない手は無い
義賢「敵に気づかれるのでは?」
賢豊「いいえ、敵には気づかれないように配置して隠蔽しておきます。さらには本隊自ら前に出て敵を挑発するのです。」
義賢「なるほど、本体を囮にして敵を誘き出して敵が深追いしてきたところを叩くのだな」
この作戦はとても良い策に思えた。六角軍はすぐさま左京区に突入して京都制圧の構えを見せて三好勢を挑発した。
三好陣営
京都防衛のために松永久秀と長慶の息子の三好義興が出陣してきていた。兵力において三好勢は劣っていた。
京都市民「六角が攻めてきたぞ!」
「うあああああ!」
「逃げろおおおお!!」
「助けてええええ」
京都市民はパニックに陥っていた。あらゆる幹線道路、交通手段がパンク状態となった。
松永久秀「市民共を落ち着かせろ!」
三好勢は逃げ惑う市民を落ち着かせようと必死だった。だが京都市民の混乱を完全に抑えるのは不可能だった。
大坂市民「俺らを京都に入れてくれ!」
京都市民が京都から逃げようとパニックなのに対して大坂市民は畠山勢から逃げようと逆に京都に雪崩れ込んで来ようとした。まさに最悪な事態になっていた。
久秀「足利勢は何をしてるのか?」
高山右近「将軍の軍勢は市民の誘導しつつ守備的な配置に徹しております。」
高山右近は松永久秀の副臣であり、イエズス会のロレンソ了斎(日本人)の話に感銘を受けてキリスト教徒になった人物である。ルイス・フロイスとも通じていた。
足利義輝の動向は気になっていた。敵になる可能性も高かった。しかし、現状は六角勢に味方する気配は無かった。そもそも細川春元の逮捕状は義輝自身が発行したものなので……義輝としては細川勢の味方をするのは嫌がっているという面が強かったのである。だが……当然ながら足利家臣団の中には細川に味方するべきだと主張するものも多かった。
久秀「困りものだな!」
動向は常に気にしないといけない存在ではあったが久秀は口で言っているほどは気にしていなかった。義輝は自分の権威を傷つけられることを誰よりも嫌っており、また一度決めたことを取り下げるのが大嫌いな性分だった。だから春元を義輝が許すとは思えなかったのである。
問題は足利勢が逃げ惑う大勢の人々を助ける気が無いということを久秀が見抜いていたことである。これが一番ムカつくところだった。足利勢の戦闘力など些細なものでしか無い、だが避難誘導くらいは積極的にやって欲しい、それだけでも負担が減るからだ。
三好義興「母上、我々はどうするべきですか?」
三好義興は長慶の嫡子である。久秀とは直接血は繋がっていないが久秀のことを母親として認めて慕っていた。二人の関係は良好で義興は久秀を信用してよく従っていた。
久秀「義興、敵は油断している。実際に敵陣は前に出てきているぞ!」
義興「しかし、ワナの可能性は無いのですか?」
久秀「将軍山城さえ落とせば敵は逃げ場を失い、士気が低下して降伏するしか無くなる。」
将軍山城にいた細川隊と永原隊は六角本隊が前に出たので城から出て布陣していた。これを絶好のチャンスだと見た久秀はすぐさま攻勢に出る計画を立て始めたのである。
久秀「義興よ、私を信頼しているのなら従ってくれるよな?」
義興「もちろんです。母上に従います。」
久秀「ならば我々は二隊に分かれて細川隊と永原隊を挟撃して一気に将軍山城を落とすぞ!」




