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ルイス・フロイスちゃん登場

 さて、ここで少し戦国時代の日本の話だけではなく、世界の話をしてみよう。ルイス・フロイスの故郷であるポルトガルはスペインと世界を分割して統治するほど勢いがあり、特にポルトガルはインド洋の制海権を握り、インドのゴアに商館を建てて東南アジアの支配を行っていた。信長よりも七歳ほど年上だが、ほぼ同年代に『太陽も沈まぬ帝国』と言われるほど栄華を誇ることになる絶対君主フェリペ2世がいる、さらに信長より一つ年上に『太陽も沈まぬ帝国』の『無敵艦隊』を叩き潰すことになり、後の『大英帝国』の礎を気付くことになるエリザベス一世がいた。まさに世界は『絶対君主の時代』であり、王権神授説(俺様最強主義)が絶対的正義と信じられていた時代である。


 ちなみに絶対君主の代名詞にして『朕は国家なり!!』と言い放つことになるルイ14世は信長の百歳年下である。(正確には104歳年下である。)この頃のフランスはユグノー戦争の真っ最中であり、この戦争が終わるのは関ケ原の戦いの二年前になる。ドイツやイタリアは言うまでも無く統一などされていない時代である。


 このような時代背景に加えて『君主論』を書いたマキャヴェッリが死んだのがフェリペ二世の生まれた年であるという事実をも加えて考えた時にルイス・フロイスが見た日本と日本の戦国大名達が、どのように映り、どのように褒めるかは容易に想像できるというものである。


 さてさてルイス・フロイスちゃんは遥々ポルトガルから日本へと来たのである。このルイス・フロイスちゃんは熱烈な親日家であった。大先輩フランシスコ・ザビエルの主張する日本はマルコ・ポーロが言う『黄金の国ジパング』という名の『オタクの聖地』そのものだと彼女に確信させるものであった。


 しかし、悲しいかな…日本ではキリスト教徒が力を失い、迫害されているという報告が入って来ていた。この異常事態を解決し!オタクの聖地をキリスト教徒に開放させるべく!ルイス・フロイスちゃんは遥々日本へと望んで来たのである!!


 ふんす!ふんす!と息巻いて堺の港へと辿り着いたものの…そこはルイス・フロイスちゃんですら仰天するほど栄えていた。


「これほど栄えているとは…」


 まさに驚きである。


「まいど!まいど!」


「なんぼ?」


「そやったかー」


 などという独特の日本語はルイスちゃんの語感を刺激した。そして調べてみると『なんぼ?』は『いくら?』という意味であるらしい。


「大阪の人は一に値段、二に値段を聞いてきます。」


 値段ばかり気にしてきて気が滅入るルイスちゃんであった。ただヴェネツィアの商人ほど陰湿な感じでは無いし、リスボンも似た雰囲気だったので馴染むのに時間は掛からなかった。異教徒に対して厳しいイメージを持つ人も多いだろうが…ルイスちゃんのいたポルトガルはイスラムの影響が残っていたし、ルイスちゃんはインドのゴアでの生活も長いために異教徒に対しては寛容であった。


 むしろ、ゴアに比べて人が少なく、衛生環境も優れていて人々が規律ある動きうをするなど堺の方が先進的だとルイスちゃんに印象を与えた。


 ピンク髪をなびかせながら大きなリュックを背負い一路京都へと向かった。京都に向かう途中は野盗などに警戒して武器を手放さなかったが…けっきょく一度も襲われ無かった。さらに言えば「どこに行くの?」と聞いてきて道を教えてくれる親切な日本人にも出会い、「日本が好きなんで来ました!」と正直に言うと「お金はいらないから!」とか「お金は俺が出してやる!」と言ってくれる日本人に出会うなどルイスちゃんは恵まれたこともあり、ますます日本が好きになったのである。


 京都は堺とは違う雰囲気を出して繁栄していた。


「おいでやす~」


 という独特の言語を話し、堺に比べて落ち着いている感じであった。


 ここまでスンナリ来れたこともあってスッカリ気を緩めていたルイスちゃんはキリスト教を広めようと京都で活動をしようとした。


 ところが…ここで初めて京都の実情を知ることになった。それは京都では『キリスト教徒追放令』が出されていたことである。これのせいでルイスちゃんは初めて日本で生命の危機に瀕する羽目になってしまった。


「なんて酷いことをするんだ!」


 そう嘆き、代官に食ってかかるルイスちゃんを今にでも切り殺そうとする武士達が取り囲んだのである。これで万事終了となるかに見えたが…偶然現れた松永久秀によってルイスちゃんは救われた。


「聖女様が現れた!」


 最初、ルイスちゃんは久秀のことを聖女様だと勘違いした。それほど久秀は美人で優しい顔をしていたのである。


「今は京都は危ないから、近づかん方がええよ」


 そう言われてルイスちゃんは久秀の元で客分として扱われることになった。その後、知ったのは、この久秀が『京都からのキリスト教徒を追い出した。』張本人の一人だと言う事実だが…そんなことはルイスちゃんにとって重要では無かった。


 ルイスちゃんはマキャヴェリの思想に精通していたし、西洋も日本と同じで乱世で酷い状況であることは変わなかった、つまり頭は『お花畑では無いのである。』さらに言えば宗教戦争で火の海ですらあった。そのような時代の生まれであるルイスちゃんにとっては為政者と話し、傍に仕えることの重要性の方が上回ったのである。


「そちは刀を持っているが…向こうでも僧侶は刀を持つのか?」


 刀(剣)どころかルイスちゃんは宣教師とはいえ、西洋甲冑を着こんでいたので完全武装であった。見慣れない武具に久秀は興味を抱いたのである。


「ええ、残念ながら現世において武器を持たねば生きられないのは古今東西どこも同じです。」


「そやな…それで、なんぼするん?」


 やはり大阪人なのか…久秀は見慣れない甲冑を見て値段を聞いてきた。


「値段を聞かれますと困りますね…教会から支給されたものですので…あえて言えば金貨数百枚くらいはしますかね…」


「カッコ良いし…欲しい言うたらくれるか?」


「久秀様が神に仕えて頂けるのであれば!」


「「ハッハハハ」」(二人で笑う)


 こんな会話を最初に久秀とした。その後は等価交換よろしく、という感じでお互いに知っていることを話し合ったりした。ルイスちゃんも久秀も話す間にお互いの誠実さを理解したのか互いに自陣営の情報を深く教え合ったりしたりした。


 ルイスちゃんが見た限り、日本の領主達はルイスちゃんが当初想像したよりも強い権限を持っていることを知った。国の中央集権ぶりはスペインにも劣らない面が数多く散見されたし、人口面では日本の方がスペインやポルトガルよりも多いと直感でルイスちゃんは見抜いただけに…日本のポテンシャルは小さくないと感じたのである。


「極東の島国とはいえ…豊かで人も多い、この国をカトリックの国に出来れば…我らカトリックはプロテスタントに負けはしないはずだ!」


 ルイス・フロイスは本国で劣勢となっているカトリック教徒を救い、猛威を振るうプロテスタントを排除するべく日本をカトリックの国にして見せると意気込むのであった。

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