秀康達が京都で観光する。
京都への上洛は順調に進んで秀康は拍子抜けするほど簡単に京都へと入れた。これは三好家の支配が進んでいる証拠なのかも知れないと思うと秀康としては複雑な気分であった。
巷では剣豪将軍と呼ばれているだけに足利義輝は優等生的な将軍ではあった。しかし、お飾りの将軍との話は秀康にとって退屈なのは分かっていた。どんなに優秀と言っても自らの領地や軍隊を持たないのでは意味が無いのである。
それよりも重要なことは朝廷の方であった。朝廷は幕府以上に衰退していた。天皇の権威は落ちると所まで落ちた感じであり、戦国時代が最も天皇の力が無い時代だったと言って良い時代である。
天皇の力の落ちぶれぶりは一見すれば将軍以上であった。御所はボロボロ、衣服は元が豪華で良いモノなので見栄えはするが長年着ているのが一目瞭然であった。天皇が退位を望んでも「金が無い!」という理由で周囲から拒否されてしまい、挙句に天皇が死んでも葬儀代が賄えないために葬儀を挙げられないという情けない状況であった。即位の式典など出来ようはずが無かった。
後の徳川家康は今川家からの独立を宣言した後に幕府に三河の支配権を認めて貰おうとするが三河守護は認めてもらえずに朝廷から三河守を貰うものの「三河守では意味が無い!」などと嘆いたというエピソードまであるほどであった。
だが太閤の権威を目の前で見たことのある秀康としては悲しいものがあった。まさに「国破れて山河あり」という感じである。
そんな悲しい気分に浸るものの、この時点での秀康に出来る事など無いので黙るしかないのであった。
朝廷や幕府に挨拶の前に京都観光を楽しむことにした。
京都観光は面白いものばかりであった。秀康の印象に残ったのはリニューアルオープンした京都タワーである。京都タワー自体は秀康から見ても古臭かったが…中は極めて近代的で秀康一行を驚かせるのに十分であった。特に本物の食べ物に似せて作られた食品サンプルは非常に本物そっくりで驚きを与えた。
「ステーキがあるぞ!」
「本当だ!よく似ているね…ゲッ?!値段が三万円もするよ!!」
「本物より高いのだー」
「ぼったくりだー」
忠勝と正信、そして康政が食品サンプルに驚いていた。実際、本物に似ているのだろうが…値段が本物より高いせいか…多くの人が見て楽しみつつも買わずに去っていくという状態になっていた。
他にも美味しそうな食べ物が売られていた。甘い物ばかりで驚きである。こんなに沢山の砂糖があるのか?と疑問に思って仕方が無いとしか思えないほどにである。
「アフリカの子供達は食べ物に困っているというのに…」
「なにがアフリカだ!砂糖は普通に贅沢品だぞ!!アフリカの子供より先に日本救え!!!」
「これも貧富の格差なのだー」
「撲滅せよ!貧富の格差!!」
「「「おおー」」」
とか言いながら先ほどから「試食させろ!」と店員を半端脅しながらモグモグ口を動かしている連中がいた。
聞くところよると財政難の松平家では今だに砂糖が贅沢品扱いになっているらしい…「俺の所には御菓子あるよね?」と数正殿にコッソリ聞いてみたら…「主君様は特別なんです!」と言われました。
※松平家は軍備拡張政策で軍備に支出している一方で他には金が回っていない。もちろん行政サービスや治安維持にも多額の支出もしている。松平家の生活品や食費は酒井家や石川家などの大身の家臣達が工面している状況である。
さて京都タワーを出ると京都駅に向かった。京都駅周辺は戦火の被害が少ない。というのは京都の中心は京都御所などがある方面であり、京都駅は中心地から離れている為に被害は比較的少ないのである。しかも、三好家は京都駅周辺の再開発も進めている為に繁栄していた。
京都駅内には、いろいろな店が入っていた。その中にスタイリッシュな、がま口バックが売られている店があった。
「このがま口バック欲しい!」
「なんだ正信、そんなのが欲しいのか?!ゲッ!これ六万近くするぞ!」
「うあああ!皆のお小遣いが吹き飛ぶのだー」
「断固反対!!」
それに対して正信が悲しそうな顔をする。
「よし、俺が買ってやろう!」
「「「えっ!」」」
凄い勢いで皆が見てくる。威圧感が凄い!!
「どうせだから正信以外の皆にも買ってやるぞ!!」
「「「おおおー」」」
気前が良いと言うのは良い物だな!と思っているのも束の間で富正や数正殿まで買い始めたせいで大変な金額になってしまった。どうするんだ!!この支出…
「自業自得ですよ!」
「うんうん」
数正殿と富正に言われてしまった。正信だけに買ったとあっては三河者が煩いからね…仕方が無いね…
幸いなことに六万近くしたのを買ったのは正信だけで他は二万~三万といった感じだ。




