episode 1-4
-------- オルソー大陸南東 キルサフ村 --------
「ふぅ、やっと着きましたね。」
ゼパイルさんと会った場所から道なりに3時間ほどでキルサフ村に到着した ゼパイルさんは終始考え事をしているようで会話は一切無かった 丈夫な体のおかげか若返ったおかげか体力的に苦は無く疲労も軽い
「おぉ、もう着いたのかご苦労さんじゃ 村長の家まで一緒に行ってくれるか?」
「わかりました。」
ゼパイルさんが先を歩き村人に挨拶しながら中心付近の大きな家へ向かう 後ろを歩く俺も軽く会釈しながらついていく
「ロイド!今着いたぞ。」
「おぉ、ゼパイルか遅かったな 何かあったか?それと、後ろの兄さんは誰だ?」
「ちょっと馬車がな。こいつはリョータだ、臨時で雇ってる。」
「リョータです。どうも。」
「それよりも、倉庫へ行こう。そこで全部説明するわい。」
さっさと倉庫へ向かうゼパイルさんと訝しげについていく村長 まぁ知らない人を連れてきて説明無しならこうなるわな
「ここでいいか、リョータ出してくれ。」
俺は頷き馬車を出す 村長が吃驚してる ニンマリ顔のゼパイルさん悪戯小僧か!
「馬車が壊れて難儀してたところに、リョータが通りかかってなここまで運んでくれたのじゃ。」
「なるほどな。で、馬車が壊れたと言ってたがこれからどうするんだ。」
「うむ、荷物を降ろして今日はいつも通り泊めてくれるか?リョータも一緒で構わんじゃろ?」
「うちは構わんが、リョータさんはそれでいいのか?」
「はい、お願いできれば。今からでは途中で夜になってしまうでしょうし。」
「それとな、リョータ。急ぎの旅でなければ、もう少しわしに雇われんか?わしはこの村を始めに5つの村を回る、それぞれ欲しい物はあるが馬車が小さくて全てを頼まれきれてない。じゃが、リョータの収納を使えばすべての村に頼まれる物資を運んでやれる、もちろん給金は出す寝床も飯もじゃ どうじゃろうか?」
金なし宿無しの俺にとって魅力的な提案だった 正直この先どうしよう?って思っていたので有難く受ける ここまで運んだ日当4000ゼルを受け取り新たに契約を結ぶ、大まかにはさっきの内容と変わりない 但し期間が秋の下月いっぱいなのと飯宿の福利厚生が追加された。
「よし、暫くの間じゃがよろしく頼むぞ。」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。」
それから3か月が過ぎた。
-------- アジュール帝国 第4の都市 オーラン --------
俺はゼパイルさんのポーターとして働き、幾ばくかの金を得て大きめの街へ来ていた。暦は冬の上月に入っていた
この3か月で自分の能力の確認とこの世界の知識を得ることを目標に活動してきた。まぁ仕事の合間にだけど
それで分かったことが、俺が設定してた事柄はほぼそのままながら住む人々によって変化してる事もあった。人族至上主義のヴルツェル王国と建前は共存を掲げるアジュール帝国、この2国でオルソー大陸は支配されており数年おきに国境付近で戦争が行われているらしい。
大陸中で人族がワンランク上って意識があり奴隷は亜人が主で終身奴隷だ、人族は借金奴隷か犯罪奴隷になり借金奴隷は各ギルドが雇用を斡旋し犯罪奴隷は戦争や国営の農場で労働となる。
信仰されてる神は10柱で、太陽・冥府・商売・契約・豊穣・狩猟・闘争・慈愛・芸術・学問の各神殿で祀られている。
貨幣は無く紙幣で統一されている、商売と契約の神殿が合同で発行しているとのこと。偽札作りは神罰が下り昔の貴族が呪われたとかあったらしい。下から1、10、50、100、500、1000、5000、10000の札がある。
暦は太陽の神殿が発行しており、1週間は6日 1か月は30日 12か月で360日 各月は春夏秋冬の上中下月で表され 春の上月の1日が元旦で冬の下月の30日が大晦日になる。
電気もガスもないこの世界のエネルギー源は ダンジョンでモンスターが落とす魔石を加工することで得られる 光、熱、水、すべて魔石から生み出せる。町並みは石造りだが意外と機能的で清潔だ下水も完備され魔石を用いて浄化し川へ流れている。
物価は断然安く4人家族で1ヵ月8万ゼルで生活できるそうだ。上を見たらキリがないが俺が貰ってたポーターの月収はそこそこよかったのだと思う。
ジョブもレベルもステータスもない。あるのはギフトとスキル、ギフトは生まれながらに持っている神からの贈り物って感じの特殊能力で成長はしない。スキルは生活や生産、戦闘、魔法など様々なことを学ぶ、訓練するなどで獲得するもので成長する。
ギフトやスキルの確認は神殿で売っている紙を使う。所定の位置へ手を押し付けると現在の保有スキルなどが浮き出てくるもので自身での確認や就職などでアピールに使う。
ちなみに俺のギフトとスキルはこうだ。
ギフト:収納空間・丈夫な体・翻訳
スキル:農業Lv1・料理Lv1・騎乗Lv1・集中1Lv
農業と料理はわかるが、騎乗ってバイクに乗ってたからか?こっちでは馬に乗れたりするのだろうか?
俺の能力、とりわけ生命線になるであろう収納空間はオタク脳を駆使して色々と実験を行った。出し入れの有効範囲は自分を中心に半径15mで触れなくてもしまえるし範囲内なら壁の向こうでも出せた。それと有効範囲内の空間認識がずば抜けて高くなっておりミリ単位での把握、指定なども行えた。
生き物をしまえないが死体ならしまえた 中の時間は止まっていて腐敗はもちろんお湯も冷めない この辺りはテンプレな感じだ。
次に考えたのは中の物を出すときに攻撃に出来ないか?と言うもの 瞬間移動タイプなので射出出来ないが 出現座標を生物と重ねることが出来るのかの実験。小石を胃の中へ出してみたり、糸で自分の手を貫通させてみたり、岩に木の枝を突き刺してみたりと色々やってみた結果、座標を重ねると移動先の物体を押しのけて出現する、その際にダメージを与えることが出来ると結論づけた。
これは、戦いに不向きな現代日本人にとって大きな武器になると思われる。それを確認するべく俺はダンジョンへ入るために探索者ギルドへ向かうのだった。
これが俺の、異世界無双の始まり。なのか?
お待たせいたしました、思ってた以上に読んでくださってる方が居るので恐縮しております。
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