episode 1-13
--------オーラン 奴隷商館 --------
「本日はようこそおいで下さいました、当商館を任されておりますディックと申します。」
「当方の奴隷を保護してお連れ下さったと伺っております、お間違いありませんか?」
「えぇ、この子がこちらで世話になっていたと聞いたので。」
「差し支えなければどちらで保護いただいたのかお聞きしても?」
「オーランのダンジョン第18階層で保護した。この子に聞いた話だが、モンスター相手に時間稼ぎを命令されその隙に主人たちは逃走、その後契約を破棄されたらしい。」
「なるほど、先日この子を買い求めた方たちが来店されまして、モンスターに契約書を破られ奴隷に逃げられたと訴えてきたのです。はてさて、どちらの言が正しいのやら・・・」
俺は奴らが走り去るところしか見ていない、命令し逃げ出すところや契約書を破るところ、決定的な場面を見ていないから証言としては弱いか・・・
俺が考え込んでいるとユリが袖をクイクイ引っ張ってきた。
「どうした?」
「契約の神殿で神様にお伺いすればいいのです。」
「確かに!それならば間違いないでしょう。ただし・・・」
「あぁ、払える範囲ならこっちが払うよ。」
「畏まりました、それでは早速向かわれますか?」
「そうだな、早いほうがいいだろう。」
「では、馬車を用意させます。しばらくお待ちを」
お茶を飲んでる間に準備が整い神殿に向かう、判り切っているが筋を通すため仕方がない。あの時俺が買っていればこんなことにはならなかったと後悔しきりである。
お布施的なものを払い奴隷商人が持つ契約書を渡し神様にお伺いをたてる、すると何もない空中から紙が1枚出てきてこう書いてあった
この契約書と対をなす契約書は
契約者ニグにより破棄された
因ってこの契約は無効となる
「これであちら側が嘘をついていると証明できましたな、それではこの子はどうされますか?」
「うちに迎えようと思う、売ってくれ。」
「畏まりました、それでは商館にもどり新たに契約をいたしましょう。」
商館に戻り契約する、代金を払おうとしたら断られた。連れ戻した礼金と面倒事を解決した手数料で代金はチャラと言うこと。
新たに加わった豚人族の子『ゴバン』名前は後で考えるとしてまずは服とか身の回りの物を購入しに洋服屋に行く。
「2人とも下着を10枚ずつ、寝間着を3着、普段着を6着選んできてくれ。」
「「えぇぇ?!」」
「これから生活していくんだそれくらい必要だろう?」
「いえ、奴隷にそんなに買い与えるなんてありません。基本的に1枚あるくらいで・・・」
「それは俺が許容できない、俺が主人の間は従ってもらうぞ。」
「は、はい わかりました。」
「ゆっくり選んでいいぞ、ちゃんと体に合わせて良いものを選んでくれ。」
結論から言うと異世界でも女性の買い物は時間がかかった。
俺は暫く眺めていたが時間がかかると判断すると隣の雑貨屋に行き大きめのリュックや身の回りの物を買っておいた。俺の買い物が終わってもまだまだかかりそうな気配、入り口近くの椅子に座りのんびり待つとする。
会計を済ませ店を出るとお昼を過ぎていたので屋台で軽くすまし宿へ帰る、明日は朝から森へ行って年が明けるまでのんびり過ごしたい。異世界へ来てもうすぐ半年、なんとか生き延びてるし可愛い奴隷も2人ゲット、個人的には順調な異世界生活が送れていると思う。
翌朝、宿を引き払い街を出る。少々下手な尾行と一緒に。
後ろは気にせず森へ入ると後ろの気配が2人減る。
「おい!待ちやがれ!!」
「なんか御用ですか?」
「うるせぇ!恥をかかせやがって!命が惜しければそのメスどもを置いていけ!」
「相手を間違えてませんか?俺はあんたなんか知らないんですけど。」
「おい『ゴバン』!そのガキ連れてこっちへ来い、命令だぞ!!」
「わ、わたしのご主人様はリョータ様です。あなたの命令は聞けません。」
「だってさ、逆に言うけど 命が惜しかったら回れ右してさっさと帰りな。」
「ふ、ふざけんな!おい、やっちまうぞ!」
男の言葉を合図に回り込んだ2人組が奴隷の2人を人質に取ろうとする、俺がそんなことを許すはずがないけどな。
空間把握でバレバレの男達に釘を打ち込む、襲い掛かろうとしたら激痛が走り無様な悲鳴を上げる。
「言ったよな?これ以上やるなら容赦しないよ?」
「ク、クソガキが!なめんじゃねぇ!」
剣を振り上げ襲い掛かってくる、オロバスとの訓練が効いているのか男の動きは欠伸が出るほど遅かった。俺は半歩身を引き剣をかわすと頭に釘を打つ、ビクビクッっと痙攣して崩れ落ちる。
「お前たちはどうする?」
「い、命ばかりは勘弁してくれ!」「俺たちはもうお前には近づかねぇから!」
「今の言葉違えるなよ、今度あったら・・・わかるよな?」
男たちが逃げ出すと俺は緊張を解き息をはく。男の死体を見て思う、ここは異世界 日本じゃない 殺さなきゃ殺される。自分に言い聞かせるように心の中で反芻する。
これが俺の、異世界最初の殺人だった。




