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1.異変

西暦2413年、人類が起動エレベーターの完成により、宇宙に進出を果たして300年以上が過ぎようとしていた。

その間、テラフォーミングの進んだ火星の独立宣言や、それに伴う地球の国家としての統一、大規模な火星との戦争の時代を経ながらも、人類の生活圏は遠く木星の軌道近くにまで広がっていた。

そしてその木星軌道付近を航行する一隻の船。

船の名はアルバトロス

2ヶ月前に完成したばかりの、地球連邦所属の新造戦艦である。

3週間の地球軌道上での公試運転を終えたアルバトロスは、兵装関係の公試をするために、2隻の駆逐艦とともに、この何もない場所までやってきていた。

明日から1週間、主砲の全力射撃やミサイルの発射試験など様々な兵装の試験を予定している。


「キシカワ大尉、私は艦橋に行ってくるので後はたのむ」

「了解しました」

通信指揮官の少佐が、そういって部下を数人連れて出て行くのを、

後を任された女性仕官が一人見送る。

「さて、休憩するかな」

通信室勤務のキシカワ エリ大尉は、そう言って背伸びをすると、コーヒーのカップを取りに立ち上がった。

通信関係の機材調整は前回の公私運転の時に、もうすでに終えているので、兵装の試験が始まるまでは、特に難しい任務はない。


コーヒーを入れてくつろいでいると、通信室に女性士官が入ってきた、黒髪でラテン系の彫りの深い顔立ちだが肌は透き通るように白い。

「情報収集室のサラ アルメイダ少尉です、少佐はおられますか?」

情報収集室とは戦闘中に敵艦の戦闘能力の情報を収集するのが任務の部署である、しかし実際は戦闘中の敵艦の撮影して報告するだけの部署なので、閑職に近い部署として知られている。

「少佐ならたった今、艦橋に向かいましたよ」

とキシカワ大尉が答えると、アルメイダ少尉は、ため息をついた。

「各部署の責任者のほぼすべてが艦橋に行っているんじゃないですかね?」

ため息をつくアルメイダ少尉の言葉に、キシカワ大尉は各士官のパーソナルデータを確認してみる。

「あ、本当だ」

ほぼすべての上級士官が艦橋に集まっていた。

通信室は、各士官に緊急の連絡がある場合に備えて、上級士官の居場所を常に把握できるのだが、閑職の情報収集室は、そういったことはできない。


「まあ、新型艦の公試運転なんて、新機能の勉強会みたいな物ですから」

大きな宇宙戦争を体験しているが、未だに宇宙での戦闘は試行錯誤の段階である。そのため、新しく戦闘艦を建造するたびに、まったく新しいコンセプトの装備が搭載されるため、同型艦であっても性能どころか、運用方法まで違う事すら珍しくない。

上級仕官はその新しいコンセプトの概念から学ばなければならず、中々大変なのである。


「たぶん今頃は、メーカーの人たちが、新しいコンセプトの自慢をしているんじゃないですか?」

「恐らくそうでしょうね...」



その時、ズシンと重い爆発音が艦内に響いた


「えっ?」

爆発音と同時に、艦橋にいた上級士官のパーソナルデータが、全て受信不能になった、

同時に異常事態を示す警報が鳴り響く。

「キシカワ大尉、ここから艦橋の様子を出せますか?」

アルメイダ少尉に言われ、キシカワ大尉はすぐに艦橋の映像を表示させる、

時折ブラックアウトする画面には、艦橋内部の様子ではなく宇宙空間が表示されていた、

他に映っていたのは溶解した艦橋の窓や外壁である。

「高出力のビームで狙撃されたようですね」

アルメイダ少尉が映像を元にに分析する

「そんな...ここは敵の勢力圏の反対側の軌道ですよ...」

「随伴している駆逐艦は?」

「駆逐艦のビーコンが受信できない、通信も応答なし...」

「ほぼ同時に狙撃されて撃沈された可能性があります」

「えーっ!!」

冷静に状況を判断するアルメイダ少尉に対して、キシカワ大尉は完全にパニック状態である。

「落ち着いてください、とにかく今は情報収集するのが先決です、現在無事な各部署の最上級階級者を、直ちに戦闘指揮所に集めてください」

「わ、わかりました」

キシカワ大尉は何とか冷静さを取り戻すと、アルメイダ少尉の言うとおり各部署の際上級者に招集をかけた。


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