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ネバーエンディングストーリー  作者: 我見芥
マリオネット・ワールド
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出会いと旅立ち vii



「ダグラスは俺の父さんとは友達だったんだよね?」


 帰り道、ジグはダグラスに聞いた。


「昔は一緒に旅をしてたんでしょ? サランもだけど他の大陸も」


 ダグラスから聞く物語の多くは他の大陸のことで、ダグラスとジグの父が実際に体験したことや、その地その地の伝承などをよく聞いた。


「あぁ。 全部で十三、全ての大陸を見てきた。 アランからシサランまで全部な」


 ジグ達のいるサラン大陸は第三の大陸と言われ、他に後十二の大陸が存在する。

 そのそれぞれに大陸王の暮らす城が存在し、これらはかつて月の神族達が人間のためにと贈ったものだとされている。

 どれも人間には再現の使用もないもので、山ほどの大木を丸ごと城にしたもの、熱くない炎で出来た城、砂漠の真ん中にある氷で出来た城もある。


 ジグの父は母のイルアナと出会うまで、そういった所をダグラスと共に旅してきたのだ。


「月には、行ったことある?」


 これが突拍子もない質問だということは分かっている。


 ダグラスは一瞬目を大きくして驚くと苦笑いとともに返した。


「月にわれわれ一般人は行けん。 前に話しただろう?」


ジグは頷くが納得してないような顔だ。


「確かに行けないって聞いたけど、なぜかは聞いてない。 理由も分からずに諦めたくないから」


ダグラスは一つ嘆息すると、これは噂に過ぎないが、と言葉を濁して続ける。


「月に行く方法は一つだけだ。 『石橋』。 各王城に存在し、王族か神族だけが使える月への架け橋。 そこに私が入れるわけがないだろう。 一体どうしたんだ? 突然こんなことを聞いて」


 不思議そうに眉根を寄せて詰め寄るダグラスにジグはごまかしの笑みを浮かべた。


「いや、なんとなくだよ。 なんとなく、月に行ってみたいなぁ、なんて思ったんだよ」


 これは本音だ。 いつか月には行ってみたいと思っている。


 この世界だけでも、全てを知ることは叶わないのに、さらにその先を求める。 周囲の人間に話せばきっと鼻で笑われるであろうが、なぜかダグラスはそんなことをしないと確信出来た。 彼がかつて旅に生きた人間だからであろうか。


 ダグラスは再び呆れるようなため息をついたが、その顔に笑みを浮かべていた。


「お前は本当に面白い。 普通、自分の生きている世界から外に出ようとはせんよ。 例えばこの村の人たち、彼らは皆良い人だ、私みたいな余所者も村においてくれる。 だが、一体彼らのどれだけがここでの生活を捨てられるだろうか」


 そこで言葉を切ると、考え事をするように青い空を見上げた。


「ジグ、この村も一つの世界なのだ。 畑を耕し、種を巻き、収穫して狩りもする。 彼らはここ以外の生活を知らない、自ら知ろうとも思わない。 それは自分に関係ないと思っているからだ。 彼らはこの小さな世界の中で生きていけるのだよ」


 哀れむような口調で語るダグラスになぜか苛立ちを感じたが、それ以上に確かにそうだと思う気持ちが優っている。


 例えばサンス、彼は村の子供達にとって憧れのヒーローだ。 虫取りでも釣りでも、なんでもできる子供達のリーダー。 しかし、そんな彼ももうすぐスウィンの雑貨屋を継いで四代目の店主になるだろう。

 村から出るといっても買い出しに王都付近の大きな街まで行くだけだ。 

 サンスがそれに関して何かしらの不満をこぼしたことはない。 いつも、面倒そうに振る舞っていながらも店の手伝いをしている。

 彼はそこで生きていけるのだと思うと、自分勝手なことだが、裏切られたような気にもなる。 自分たちのリーダーがこんな所で終わるのか、と。


「夢は大きければ大きいほどいい。 しかし、夢が大きいほど、己の小ささを知ることになる。 私は、お前がそれに耐えられると信じている」


 ジグにはその言葉が否定的に聞こえた。 その夢は諦めろ、そう言われているような気がしたのだ。


「俺は、仮に自分の小ささを理解出来ても同じ場所で踏みとどまることはできないよ。 進んでなきゃ、自分が自分じゃなくなるようで、怖い」


 声は震え、吐く息も浅く不規則なものになる。

 一体自分がなにに怯えているのか、ジグには理解できなかった。


「お前はお前の信じる道を進めばいい。 その頑なさは夢を助ける力になるだろう。 だが――――」


 ダグラスが立ち止まり、ジグを見下ろすように睨む。


「――――強くはなれない」


 突き放すような、或いは突き刺すような口調だった。

 それ以上ダグラスは口を開こうとせず、やがて村が見えてきた。


 赤みを帯び始めた太陽が正面から二人を照らす。 村は影になって歪な、歳を経て気概を失った化け物のように見えた。


 人々を飲み込んで、その身に捕らえ続ける怪物。 それは今も、知らぬ間に内包する人間を喰らって溶かしているのかもしれない。






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