双極の協奏曲 viii
時間設定ミスっていて遅れました、すいませんorz
囚人の護送のような案内に耐えながら歩いていると、街の中央、巨大な鐘を冠する教会のような建物にたどり着いた。
高さ四、五メートルはあろうかという門は開け放たれ、中からパイプオルガンの荘厳な音色が響く。
扉をくぐる前に一度頭を下げると、ソルスレインはそのまま中へと入った。
三人も同じように、ハンナとジグはやや慣れない様子で、頭を下げ中に入る。
外から見てもわかるように中はかなり広く、等間隔に並べられた燭台の炎では、天井の暗がりを照らすことは叶わない。
いつの間にやら一行をつけていた気配は消え、寒々しいほどの虚無感が建物の内部を埋めていた。
背後でゆっくりと木の軋む、扉の閉まる音がする。
「こちらが我が家になります」
振り返ったソルスレインは演劇のように両手を広げながら言った。
「あまり家、と言ったようなものは置いてありませんが、せっかくです、くつろいでいってください」
そんなことはみなくてもわかる、ジグは辺りを見回しながらその言葉を飲み込んだ。
本当に、家具のようなものは一つもない。
強いてあげれば暖炉と長椅子くらいか。
いや、ここが表向きにしても教会であるというのならこれは当たり前のものだ。
むしろ、一方に向いて並べられている長椅子を家具としてカウントする方が間違いだ。
「こんなところに連れ込んで、ただくつろげと言うのは今更無理があるんじゃないか?」
「それもそうですな」
ダグラスの指摘に気を悪くした風もなくソルスレインは応じる。
「ではまず、皆さんを騙したことをお詫びします。 まぁお一人、最初から気づかれていたご様子でしたが」
チラリとダグラスをみるソルスレインは黄色のローブばさりと翻しながら恭しく頭を下げた。
「私の本当の名はノーナ・サンハルト、わけあって第三皇子の名を使わせていただきました」
何が何やらといった様子の二人にもう一度、軽く頭を下げるサンハルトにダグラスが尋ねた。
「自己紹介も大切だが、今は何が目的で私たちをここに連れてきたのかをお聞かせ願いたい」
サンハルトは頷くと三人に椅子を進めた。
「少し面倒な話になります。 どうぞ座ってお聞きください」
木製の長椅子はヒンヤリとした冷たさを持っており、歩き疲れた足には心地よかった。
「そうですね。 なるべく簡単にお話ししますと、私は第三皇子に仕える使用人の一人なのでございます。 あぁ、いえ、驚かないでください。今回皆さんをお迎えにあがったのは我が主の命での事。 詳しくは存じ上げませんが、『北の大路より来る者に我が名を告げよ』との事で、私が偽物だと見破った方を案内するよう言われているのです」
「それにしても、何故?」
ダグラスの問いに多少困惑したような様子でサンハルトは答える。
「いえ、そこまでは……」
サンハルトはしばし思案顔で首を捻るとゆっくりと口を開いた
「これは話して良いことかどうか…… しかし、おそらく関係無いことでもないでしょう」
ダグラスは続きを促すように頷く
「最近、神族のお一人がこの大陸に降られたという『うわさ』が、王宮内、それもかなり高い位の者達の間で流れているとか…… 主人はそのことについて旧友の力を借りたいと申しておりました」
ジグには何が起こっているのか理解できる範疇を超えていたが、どうやらダグラスの予想は当たっていたようで、自分達はかなり大きな渦の中にいるのかもしれない、と言うことだけは、肌を刺す異様な緊張感で察することができた。




