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ネバーエンディングストーリー  作者: 我見芥
マリオネット・ワールド
15/42

詰まりの所、ツマラナイ

ネバーエンディングストーリー始めての感想に舞い上がり、書き上げてしまいました。


今回は今までとはちょっと違った、お口直しのような回です。

どうぞ、お楽しみください。






「つまらない。 退屈だ」


 少年は自らの髪を弄びながら呟く。


「なぁ、つまらないって結局詰まってるのか、詰まってないのか、どっちなんだろうな?」


 少年の影にもう一人、背を合わせるように小柄な女の子が腰掛けている。


「さぁ? そんなこと、私には関係ないよ。 つまらないって所には同意だけどね」


 面白くない、と、退屈そうに呟く少年は自分の背丈ほどもある杖で地面に何やら書いている。


「詰まらないってことはさ、詰んでないんだからつまらなくはないよな」


 思ったことをそのまま口にしている、頭の中で一度考えたりせず、ただ垂れ流しているだけの言葉。


「その、なんかカッコつけてる感じの言葉遊び面倒臭いよ」


 少年からは見えないが、少女は不満をあらわに嫌そうな顔で指摘する。 そして純白のローブが汚れるのを気にもせずその場で横になる。


「私はさ、そんなことどうでも良いんだよ。 退屈なのは嫌だけど、これからのことを考えたらワクワクしない?」


「ワクワク?」


 振り返り、冗談だろ、と肩を竦める少年を気にも留めず、少女は続けた。


「これからのこと、未来のことを考えるって、誰にでもできる創作活動だよ。 どんな展開でも、みんな思いのまま。 その主人公は自分。 御伽噺の騎士にもお姫様にもなれる」


 少女はゴロリと寝返りをうつと、頬杖をついて少年を見上げる。


「最後の最期も思いのまま」


 ニコリと笑う少女に、少年は無感情な視線を投げかけるがまるで相手にされていない。 故に、いつものことだとため息で返す。


「ラストシーンなんて要るのか? 物語じゃないんだから、ハッピーエンドなんて夢の中、現実はトゥルーエンドの垂れ流しで終わるだろ」


「要るよ」


 冷たく、平坦な声であった。 常人が聞けばこれが少女のものだとは分からなかったであろう。 それだけの変化である。


「どんな物語にも最期の瞬間(クライマックス)は必要だよ。 物語の終わりじゃなくて、語られるべきは主人公達の一生だと思う。 事件が起きている間だけを捉えた物語なんてツマラナイ」


 少女はその身の内に、黒くぬめりとする炎を宿していた。 それが今にも溢れ出ようと、喉まで出かかっているのを少年は感じる。


「だって、それじゃ期待しちゃうじゃない」


 少年は口を挟まず、聞きに徹する。 それが当然と言うように少女も続けた。


「その後主人公達がどうなったのか。 幸せに暮らしましたハイちゃんちゃん、じゃなくて、その幸せな暮らしも読みたい、見たい、知りたい」


 欲望に目を輝かせ、何かを求めて空気を掴む少女の姿を、少年は真摯に受け止める。


「そうじゃないなら、私に期待だけさせるなら、そんなの全部……」


 少女は最後まで言うことはできなかった。

 少年が右手で少女の口を塞ぎ、星無き夜空のような瞳で少女の顔を覗き込む。


「そんなこと言うなよ」


 一言、優しげな口調で囁くと、それがぬるま湯に浸けた氷のように、強張った少女の体をほぐしていく。


「夢見たまま終わっていくのもいいじゃないか」


 左手で無造作に少女の頭を撫でながら、少年はただ思ったことをそのままに言う。


「それだけ、夢想する余地が残されているんだ。 空白は無じゃない、塗り替えられるキャンバスだ。 どんな色を塗ろうと自由自在、それこそ、お前がさっき言ってた未来なんだよ」


 少女は不思議そうに少年を見上げる。

 そこにはいくらかの不安も見て取れた。 或いは自分はここに置いていかれるのではないか、そんな孤独への不安。


「大丈夫。 結局、詰まるところ、俺はお前の味方しかできないよ。 お前の意思は尊重する」


 だから、と。

 祈るように膝を折り、少女の目を覗き込む。


「お前も、俺を置いていかないでくれ」


 少女は無言でコクリと頷くと少年の手をとった。






次回は予定通り来週の火曜日に掲載予定です。

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