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「おーい地球人、プロレスしようぜ!」  作者: 鶏の照焼
第十章 ~戦闘兵器「サイクロンD」、反逆巨人「モー・ド・レッド」登場~
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「会議の時間」

「レッドドラゴン? なんか強そうだな!」


 扉を開け放ったところで意識を失った校長先生を保健室に連れて行った後、二年D組に集まっていた面々は帰りのホームルームの始まる頃から行っていた話し合いを続行した。なおこの集会の発起人は一つ目の怪物、もとい宇宙警察長官ドグであり、彼の「仲間の素性を予め知っておきたい」というアイデアを聞いた亮が連絡網を使って、関係者全員にこの日この時間集まるよう打診をしたのだった。

 果たして長官と亮の予想通り、ここには連絡を寄越したほぼ全員が集まり、そして彼らはここで全員の自己紹介と今この町で何が起きているかについてを話し合った。


「でも異世界から来た宇宙海賊ってなんか面白そうだ! 私は気に入ったぞ!」


 そして校長である松戸朱美が乱入してきた時には全員の自己紹介も済んでおり、彼女が保健室に連れて行かれた後で改めて話し合いが続行された。そこで町を閉鎖しその上空に陣取っているのは「レッドドラゴン」という名の宇宙海賊であるということを聞いたミナはただでさえ高かったテンションを更に上げ、暴れ回らないようドグによって腰に触手を巻き付けられた状態で両手を振り回しつつ声を張り上げた。


「どんな連中なんだろう! なあシンジョー! そのレッドドラゴンっていうのはどんな連中なんだ!? なあなあなあ!」

「どんなって言われてもうまく説明できないな・・。ミナはまだあそこのクルーと会ってなかったんだっけ?」

「そうだ! 私はまだクルーとは会ってないぞ! だから教えてくれ! どんな奴なんだ!」

「ちょっとわかりにくいかもしれないけど、一言で言えばトカゲかな。二本の足で立つトカゲだ」

「トカゲ! トカゲが二本足で立つのか! それはますます面白そうだ! 私も早く会いたいぞ!」


 亮からの説明を聞いたミナが更にテンションをあげていく。それを見た亮は困ったような、それでいて嬉しそうな顔で笑みをこぼし、その姿を生徒達は驚いた顔で見つめていた。

 その亮の柔和な表情を見るのは初めてだったからだ。


「あんな顔見るの初めてかも」

「凄い嬉しそう……」

「まるで親子みたいだな」

「実際そんな感じだからな」


 そしてその光景を見て驚嘆の言葉を漏らした生徒達に向かって、エコーがぽつりと呟いた。その声を耳にして「え?」と自分の方を振り返ってきた生徒数人に対して「なんでもない」と素っ気なく返した後、エコーはミナを見つめながら表情を緩め、その鷹のように鋭い目から力を抜きつつその目を細めた。


「そうか。あいつ元気にしてるんだな」

「どうやら彼は、こちらとの約束を守っていたようですな」

「良かったですね~」

「ああ。本当に良かった」


 部下二人からの言葉を受け、エコーが頭を僅かに下げて目を伏せる。その目にはうっすらと涙が滲んでいた。


「それで、その宇宙海賊とやらは、なぜこの町を閉鎖したのだ? やはり海賊らしく、略奪や殺戮が目的なのかのう?」


 エコーが視線を下げた直後、日本酒の瓶を片手に持っていた多摩が問いかけた。その言葉は亮ではなくエコーの隣に立っていた「吸血鬼」カミューラに向けられていた。レッドドラゴンの構成メンバーと同じ世界からこちらにやって来たカミューラは多摩の質問を受け、一つ頷いてからそれに答えた。


「正直わかりません」


 迷いのない自信満々の答えであった。面と向かってハッキリ言われた多摩は居心地悪そうに苦笑した後、若干声の勢いを弱めて再度カミューラに尋ねた。


「そんなこと言わずに、のう? 本当に何もわからんのか? 何か手がかりとか、とっかかりとか、そう言ったものは何もわからんのかえ?」

「ごめんなさい。全然わからないんです。今回のことは全く予想外で、私にも彼らがなんでいきなりこんなことをしたのか検討もつかないんです」

「ですが、彼らがお母様の仰るとおりのことをなさるような凶暴な者達には、わたくしにはとても見えませんでしたわ」


 多摩の再びの催促に対してカミューラが申し訳なさそうに返した後、それに続けて多摩の実娘である麻里弥が言った。それを聞いた多摩の視線は麻里弥に移り、そして多摩は不思議そうに彼女に尋ねた。


「麻里弥よ、なぜそう思うのだ? 何ぞ根拠はあるのかえ?」

「実際に戦ってみたからですわ。彼らにそのような邪念は無いと、わたくしは拳を交えた際にそう悟ったのです」


 麻里弥が笑顔で母親に答える。多摩とカミューラは同時に驚き、それからカミューラは「あれとやり合ったんですか?」と目を見開きながら尋ね、多摩はカミューラの後に続いて「で、勝ったのか?」と聞いた。


「もちろん勝ちましたわ」


 その二人からの質問に同時に答えるように麻里弥が言った。そうか、勝ったか、と膝を叩きながら娘の勝利を喜ぶ母親の向かい側に立ちながら、カミューラが麻里弥に言った。


「それはいつ? いったいどこで戦ったのですか?」

「今日の朝方、グラウンドでのことですわ」

「ああ、そういえばやってったっけ」


 麻里弥の言葉を聞いたソレアリィが言った。彼女と浩一、そしてソレアリィの付き人であるローディは揃って学園に着いた際、グラウンドで麻里弥とトカゲ人間が取っ組み合っているのを目の当たりにしていたのだ。


「あの時のあんた、結構容赦なかったわよね。相手の腕の骨折ってなかったっけ?」

「まあ、そんなことはしてませんわ。肩の関節を外したくらいならしましたけれど、骨までは折っていませんわ」

「どっちも一緒だよ」


 ソレアリィの問いかけに口を尖らせて返す麻里弥を見て、浩一が渋い顔で言った。多摩はそれを聞いて「さすがは我が娘よ」と目を閉じ嬉しそうに何度も頷き、一方で芹沢優は窓に目を向けながら「そこは誉める所じゃないでしょ」と誰にも聞こえないくらいの声量で言った。


「とにかく、現時点ではそいつらが何を考えているかはわからない、ということだな」


 その一連の話を聞いた白いゴスロリ服を着た少女、マジカル・フリードが話の流れを変えるように言った。彼女の言葉を聞いた麻里弥は「悪い人ではなさそうなのですけれどね」と返し、カミューラが「てんで検討もつきません」と言った。

 その後フリードの隣にいた黒いゴスロリ服を着た少年、イツキが腕を組んで言った。


「じゃあ直接聞いてみたらいいんじゃないかな」

「それが出来たら苦労しないクマ」


 イツキの言に対して進藤冬美が返す。冬美はデフォルメされたクマの着ぐるみを身につけていたのだが、そのことについて突っ込む人は一人もいなかった。


「どうやってあそこの連中とコンタクトとるクマ? あの船にはどうやって乗り込むクマ?」

「そこまで言われると何も言い返せないな。まあなんとかなるんじゃない?」

「でも、話してみるっていうのは選択肢としてありかもしれませんね」


 イツキの言葉に合わせるように、彼の隣にいた背の高い女性が言った。その女性、戦闘狂獣であるアオイは冬美の方を見ながらそう言葉を放ち、それから亮の方を見て言った。


「先生は何か食べ物とか持ってませんか?」

「は?」

「ごめんなさい、間違えました。先生は手がかりとか取っかかりとか、何かご存じないですか?」


 言い直したアオイの言葉を受け、亮が顎に手を当てて考え込む。それから暫くして亮は頭を上げ、アオイの方を見て言った。


「まあ、無いわけではないですが」

「そうなんですか?」

「はい。確実に成功するとは言えませんが」

「どうやんだよ先公?」


 アオイと同じく戦闘狂獣であるアラタが自分の「主人格」のものである机の前に座って言った。その二重人格の言葉を受けて、亮は彼女の方を向きながらそれに言った。


「そんな複雑なことじゃない。やること自体はとてもシンプルだ」

「へえ、そうなのかよ。で、何すんだ?」

「ああ。それはだな」


 それから亮は、そこにいた全員に向けて自分の考えを披露した。それを聞いた者の三分の一は「そういうやり方もあるのか」と感心し、もう三分の一は「本当にうまく行くのか?」と半信半疑な気持ちを抱き、最後の三分の一は何故か狂喜乱舞した。


「いつやるんだ? いつやるんだよ?」

「まだ決めてないよ」


 そんな狂喜乱舞しているタイプの一人であるアラタからの問いかけに対し、亮はそう返した。

 その顔は最後の三分の一のグループと同じく、どこか嬉しそうだった。

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