表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/18

第3話 図書室

 明治時代の文豪の小説を3冊以上読んで、5枚以上の感想文を書き、3週間以内に提出しなさい。

 それが、今日の国語で出された宿題だった。

 宿題多すぎだよ。と思うけど文句を言ったところでなくわけではない。むしろ、後に回すと本がなくなるなどして書くことが難しくなる。

 私は、その日の放課後、直ぐに図書室へと向かった。


 放課後の図書室には、8人ほどの生徒が居た。

 1人が図書委員で、残りは一般の生徒。合同で宿題をする勉強部屋として使っている生徒も何人かいる。

 図書室は歴史があるだけあって、蔵書数も他の高校とは比較にならないほど多い。

 ジャンルはさすがに漫画こそないが、多彩だ。

 さらに100年以上前の本すらも置いてある。初版本も多く、売れば一冊数十万円にはなる本もあるとの噂だ。


 明治時代の文豪というと、著名なのが夏目漱石や与謝野晶子、太宰治などなど数多くいらっしゃる。

 読みやすいのは、やはり夏目漱石あたりだろうか。

 どれ読みやすそうか、感想文が書き易そうか、本をでいろいろと物色する。


 本棚で本を探していると、ふと、西村京子のことが思い出された。


 西村京子は、どんな本を読んでいたのだろうか。

 「吸血鬼ドラキュラ」は有名なので覚えているが、他のものは良く覚えていない。

 「スラブ」とか「黒魔術」とか、そんな感じだったと思う。

 正確には思い出せないがとりあえず、吸血鬼に、魔術、そんな感じだ。

 それなりに大きさのある本だったので、あれらの本は学校の図書室で借りたのではないだろうか。

 図書室に居る図書委員に聞いてみることにした。


 図書委員の女の子は、眼鏡に三つ編みと見るからに、まじめ図書委員という感じだった。胸の名札を見ると倉田真須美ますみ、3年生とある。

「すいません。西村京子さんが、借りていた本って、判りますか」

「図書館の規則で、他人がどんな本を借りていたかを教えることはできませんよ」

「そうですか。そうですよね。プライバシーですものね。ありがとうございます。」

「なぜ、そんなことを聞くの」

「以前、彼女に会った時、彼女、吸血鬼と魔術とか、そんな感じ関係の本を持っていたから、興味を持って」

「そう。彼女に関する噂知っている?」

「吸血鬼に襲われたって奴ですか」

「そういう噂もあるわね。だから、吸血鬼について調べようと思ったの?」

「ただ何となく気になっただけで・・・深い意味はありません」

「そうなんだ。実のところ、近頃、噂のおかげで吸血鬼関係の本を探している人多いのよね」

「そうなんですか」

 確かに、これだけ噂になっているのだから調べている女生徒も多いだろう。

「そうなのよ。吸血鬼に関する本がある棚は、あそこの神話や伝承のところね。ここの学校は吸血鬼の伝説があるだけあって、興味を持つ生徒も多くてね。下手な本屋や図書館よりも書籍が充実してるわよ」


 棚に来ると、確かに充実している。吸血鬼と言うだけでも20冊はあるだろうか。伝承や伝説を含めると60冊以上あるのではないだろうか。

 貸しだされている本もあるはずだから、実際はもっとあるのだろう。どんだけ皆、吸血鬼好きなんだろうか。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 私が本を立ち読みしていると、図書委員の倉田先輩の方から声をかけてきた。


「吸血鬼って、他の怪物と違ってロマンがありますよね」

 確かに、吸血鬼にはロマンを感じる。

 吸血鬼は美女を好むと言うが、女性も美形の吸血鬼が好きだ。

 他の怪物みたいに単純に命を奪うのではなく、血を吸うというのがポイントだろう。命を取られるわけではないので、末長いお付き合いが可能だ。

 襲われました、ハイお終いですので、他の怪物とは違うよな。

 吸血鬼も長い間生きているので、知性もあり、大人の魅力もあるし、金もある。美形なら言うことなしだ。


 そのため、古くは、漫画の「ポー○族」「ときめきトゥナイト」など、吸血鬼を恋愛の対象としてみる傾向がある。

 海外でも「トワイライト」という人気小説がある。

 女性向けの吸血鬼は、美形でセクシーと映画でも漫画でも決まっている。「ヴァンヘルシン○」の吸血鬼は美形ではなくがっかりしたけど。


「倉田先輩は、吸血鬼のこと好きなんですか?」

「好きよ。だって、美形で素敵じゃない。それに、お姫様に選ばれれば、永遠の若さと美しさが手に入るのよ」

「永遠の若さと美しさですか」


 さらに、吸血鬼に選ばれ、眷属になれば、永遠の若さ、美しさが与えられる。


「その代わり人間じゃなくなっちゃうんですよ」

「いいじゃない。人間じゃなくても」

 倉田先輩はさらっと言った。この人には人間じゃなくなることへの恐れがないのだろうか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ