第X話 マルコ神父
イタリアから1人の神父が派遣されてきた。
名前は、マルコ・ジュリアーニ。26歳。
日本語が堪能なことから派遣された二枚目の青年だ。
身長も高く、イタリア人らしくお洒落な私服で、女生徒の扱いも紳士的で洗練されていた。
そして、見た目だけではなく、中身も素晴らしかった。誰にでも優しく、公平だった。行動力もあり、頼もしい男性だった。
教養もあり、料理も上手だった。
その手料理を食べられるのは、聖楽部の生徒の特権だった。
私はマルコ神父に作ってもらってピザと言うものを初めて食べて、オリーブオイルというのを初めて知った。
先生の作ってくれたペペロンチーノは最高だった。
ときより、覚えたてのオヤジギャグをいうのが難点だったけど、当然、多くの女生徒が彼に夢中になった。
当然、私はマルコ神父を愛していた。
私だけじゃない、多くの女性とかマルコ神父を愛していた。
多くの生徒がマルコ先生に告白した。
でも、駄目だった。
女生徒たちがどんなにアプローチをしても一線を超えることはなかった。
先生は、生徒として人として、皆を愛してくれるけど、女として誰れも愛さなかった。先生は信仰に生きている人だった。
私もマルコ先生に告白した。
自慢じゃないが、私は容姿には自信があった。学年でも1,2の美人だと自負してしていた。
他の生徒は駄目でも、ひょっとしたら自分なら。そんな甘い期待も抱いていた。
でも、駄目だった。
先生は他の生徒と同じように、生徒として人として、愛してくれるけど、女として愛してくれなかった。
それから、3年間、私の先生への思いは表にこそ出さなかったが静かに燃えていた。
そして、ある出来事が起きた。
私は放課後遅くまで学校に居たとき、先生とある女生徒との会話を思わず聞いてしまった。
よく聞き取れなかったが。
子供が出来た。子供を産む、生まないの話をしていた。
勘違いだと思った。
先生が子供もうけるなんて。女生徒と関係を持つなんて。
でも、私は日曜日に見てしまった。二人で一緒に街を歩いているのを。
先生が誰のものでもないから我慢が出来たのに。
私の心はズタズタになった。
その頃の私は傲慢の罪に汚れていた。
自尊心を傷つけられた私は、腹癒せに恐ろしい罪を犯した。
二人の恋を密告したのだ。
だけど、これは私の勘違いだった。
彼女が子供もうけたのは、別の男性。マルコ先生はその相談に乗っていたのだ。
二人で街を歩いてのは、男と何度も何度も話をするためだったのだ。
先生は学校を去ることになった。
先生が学校を去る日、私は事前に、どうしも聞いてもらいたい懺悔があると、聖堂内の懺悔室に先生に呼び出した。
そこで、私は先生に全ての罪を告白した。
叱られることを覚悟していた。
罵倒されることを覚悟していた。
先生は、そんな私を笑顔で許してくれた。
でも、愛してはくれなかった。
なぜなのだろうか。
私に何が足りないからなのだろうか。
私は先生を欲しかった。
先生を手放したくなった。
誰にも渡したくなかった。
「さよなら」と先生が別れの言葉を言って、背中を向けたとき、私の中の狂気が爆発した。
側にあった燭台を手に取ると、先生の頭に振り降ろしていた。
気がつくと先生は聖堂の床に倒れていた。
どうすれば良いのだろうか。このままでは死体が見つかってしまう。
しかし、先生の遺体は重く、私の力では引きずるのが精いっぱいだった。
私は地下にある納骨堂まで先生の遺体を引きずった。
私は園芸部の部長であること利用して、温室のカギを取るフリをして納骨堂の鍵を盗み出した。そして、私は先生の遺体を納骨堂に隠した。
そして、その場で巻き割り用の斧を先生に振り降ろし、運びやすくした。
私は、人目を避けながら数日かけて校舎裏に先生のお墓を作った。
それ以降、温室の花を摘み、先生のお墓に花を置くのが私の日課になった。
◇ ◇ ◇ ◇
数週間後、私は奇妙な噂を聞いた。
マルコ先生は女生徒の純白を奪う吸血鬼あり、退治されこの学校に封印されていると言うのだ。




