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第14話 サバトの女王

 私が自傷するようになったのは、幼稚園の頃からだ。


 怪我をした傷口の血を舐めたのをきっかけに、私は血の魅力に取り付かれた。

 怪我をした子がいれば、「舐めれば治るよ」と言ってその血を舐めた。

 男の子よりも、女の子の方が美味しかった。

 なかでも、一番かわいかった伊東ちゃんの血が一番おいしかった。

 しかし、幼児とはいえ、毎日、怪我をする子が出るわけではない。

 私は、直ぐに自分で傷を作り、自分の血を舐めるようになった。


 しかし、一か月もしないうちに、親にばれて、精神病院に連れて行かれた。

 私は、頭がおかしい人間らしい。

 医者はストレスが原因だと言い。両親の関係や、子供への接し方に問題があると言った。

 私は、ただ好きだから吸っているだけなのに。

 仲の良かった両親は、私のことを巡り、喧嘩が絶えなくなった。

 優しかった両親も、私を怪物のように見るようになり、私に冷たく当たるようになった。

 医者は、薬やらカウンセリングをしたが、私としては、好きなものを止める気にはならなかった。

 しかし、そのままだと、いつまでも怪物扱いだ。


 親や医者にばれないように、手首ではなく、足を針で刺して吸った。

 我ながら器用だと思う。


 大人たちを騙すのは簡単だ。

 人間は、見たいものしか見ない。

 彼らの願望に合わせて行動すれば、容易にだますことが出来た。

 医者も両親も、病気が治ったことにしたかった。

 私が治ったふりをすれば、容易に飛び付いた。

 幼稚園の子供が知恵を回し、自分たちを騙すために演技するとは思わなかったのだろう。


 それ以来、私は治った自分を演じ続けている。

 少しでも、疑われないように、血を連想させることは極力避けた。

 トマトケチャップすら少なめにし、絵具の赤はできるだけ使わないで絵を描いた。

 そして、大人たちの期待に答え、勉強し、そこそこの成績を取り、静かにしてさえいれば、問題がない大人しい良い子となった。

 心のうちに、どんなに闇を抱えていても、大人たちには気づかれなかった。


 そうして、私は、表向きは普通の人間として過ごし、クリスチャン系の学校に入学し、中学生になった。

 なぜ、その学校を選んだのか。

 その学校は、クリスチャン系の学校なのに吸血鬼に関する噂があった。昔、吸血鬼が出て生徒たちを襲い、退治された吸血鬼は学校のどこかに封印されていると言う。

 血を吸う吸血鬼のような私にとって、これ程ふさわしい学校はないのではないだろうか。


 私とって、この学校での学校生活は滑稽以外何物でもだった。

 魂が汚れ神を嘲笑している私が、聖書を朗読し、神の家である教会で神を讃える賛美歌を歌うとは。

 天上にいる神はどんな気分なのだろうか。

 冒涜している感じているのだろうか。

 それとも、私のことを逆に滑稽だと笑っているのだろうか。

 それとも、私ごとき存在は歯牙にもかけないということなのだろうか。


 こんな私に対して神は罰を与えるどころか、仲間を与えくれた。

 学校内でリストカットをする同級生を見つけたのだ。

 彼女と私では、自傷する理由は違うが、同じカット仲間として意気投合した。


 彼女が、リストカットするようになったのは、義父の性的暴力が原因だ。

 母親のことを思うと誰にも相談できない。

 心は死んで行くのに、体は生き続けている。そして、彼女の苦悩とは関係なしに、彼女の体はどんどん女として成長していった。

 捻じれに苦しむ彼女は自傷行為で、自分を保っていた。


 私は、直ぐに彼女の血を飲むようになった。

 そして、彼女も私の血を飲むようになった。

 私と付き合ううちに彼女の心の傷は癒え、彼女がリストカットをする目的は、私への奉仕へとなった。

 私と彼女、2人だけの宴、誰にも汚されない2人だけの世界。

 このまま、時が止まってほしい。現実の世界には戻りたくない。

 だけど、時間は流れていく。現実の世界で、偽りの私が生き続ける。


 そして、私は、成長していく。

 内なる心に、狂気を秘めながら。



 ◇ ◇ ◇ ◇


 菊池正行と出会えたのは、幸運だった。

 彼は自分は、ただの病人だと言う。

 それは違う。

 彼は選ばれた人間。

 いや、選ばれし者というべきだろうか。

 彼が病弱なのは、彼が人間として生きようとするからだ。

 人間という小さな殻に閉じこもるからいけないのだ。

 人間の殻を破り、孵化すべきなのだ。


 私は、それを手伝うだけ。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 彼と出会い、彼に血を上げて以降、私の生活・・・いや、人生が変わった。

 そして、彼の人生も変わったことだろう。

 彼は、最初にあった頃の彼とは違う。

 自信に溢れ、逞しく、魅力的だ。


 私たちは、週に、2、3回、開かずの間の扉を開け、サバトを開いた。

 ミサが開かれる聖堂で、サバトが開かれるとは、なんとも愉快だ。


 サバトへの参加者は、菊池正行と私、友人の3人だったが、今やシスターを含めて、6人になった。

 シスターも人の子だ。口では、神だななんだのいっても、しょせん女だ。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 放送部員の西村京子が、学校の吸血鬼について調べている。

 私自身、ノートを読んだことがあるが、なかなか面白い内容だった。

 どこまで、調べるか楽しみだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 西村が、調べた内容を報告してきた。

 西村京子は、私たちに秘密を知ってしまった。何とかしなくては。


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