第12話 明るい未来
目が覚めると、私は、自分の家のベットの上に居た。
眩しい朝の日差しが顔を照らす。
私はベットから飛び起きると、台所の居る母の元に向かった。
「お母さん」
そして、お母さんに抱きついた。お母さんに抱きついたのは何年ぶりだろうか。小さくなった気もしたけど、温かさは変わらなかった。
「どうしたのよ。パジャマのまま。子供じゃないんだから。早く着替えてきなさい」
「はぁい」
私は返事をして、着替えに二階に向かった。
嫌な夢だった。全ては、神経質になった私の幻想が生んだ夢だった。
吸血鬼なんているはずがない。
私は元気に学校へ行った。
学校も聖堂も、いつもと変わらない。みんなもちゃんと居る。
「まな。お願いがあるの」
「何?」
「リストバンド外して見せて」
「なによ突然」
「いいからお願い」
「判ったわよ。後でジュースでも奢ってよ」と言って島田まなは、リストバンドを外す。
そこには、傷一つなかった。
「私がリストカットでもしていると思ったの。私がリストカットなんてするわけないじゃない。変なあやめ。ちゃんとジュース忘れずに奢ってね」
「1本でも2本でも好きなだけ奢ってあげるわよ」
「気前良いのね」
全てが私が作り出した妄想だったのだ。
いったい、どこまでが現実で、どこからが夢だったのだろうか。
それは判らない。
夢に入る瞬間なんて、判らないし、覚えていない。
いつものような普通な日々。
そして、いつものように退屈な授業。
でも、それで良いんだ。
現実が一番良い。普通が一番良い。
退屈な授業だけど、少し勉強する気になった。
◇ ◇ ◇ ◇
次の日、図書委員の倉田真須美は、澤田あやめが体調を壊し長期の休みを取ったとの話を聞いた。
入院しているとの噂もある。吸血鬼のことを調べていて、知りすぎたため、吸血鬼に消されたとの噂もある。
だから忠告したのに。
ニーチェの言葉にもあるでしょ、『深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ』って。
あなたが魔に近づくほど、魔もあなたに近づいているのよ。
一度、魔に見つけられたら逃げても無駄。助けを求めても無駄だって。
図書委員の先輩の米倉良子も、放送部の西村京子も、みんな調べた人間は、学校から居なくなってしまった。
助けを求めても、無駄だった。
頭がおかしいと思われるだけだ。親すらも信じてくれない。
吸血鬼の厄介なところは、血を吸って仲間を増やすだけじゃない。
人間をたらし込んで、信者を作る点だ。
もはや、誰が味方で誰が敵だか判らない。
この学校は、既に吸血鬼に支配されているのかもしれない。
私はこれ以上、知る気もないし、調べる気もない。何も見たくない。
唯一、私に出来ることは、警告し、嵐が過ぎるのを待つこと。
お願い。神様、私を皆を助けてください。




