第8話 ベッドで発情する義姉ヒロイン
家に帰って、ベッドにリュックを放り投げる。
今日の体育は3時間全部室内だっただけマシだ。
もし運動場でやってたら、みんな死んでいたと思う。
汗でびしょ濡れになった体操服を洗濯機に入れ、心置きなくベッドにダイブ。
まだ夕食を食べてないし、風呂にも入ってない。だが、俺は寝る! こんなに疲れるとは思ってなかった。
――ん? なんか姉さんの匂いがするんだが……。
おかしいな。
俺のベッドから姉さんの甘い香りがしていた。これが香水の匂いなのか姉さんの体から出る特殊な匂いなのかはわからないが、とにかく姉さんの匂いで間違いない。
「俺がいない時に俺のベッドを使った、とか?」
姉さんはツンデレだ。
だからあり得る。
実は俺のことが好きで好きでたまらないのだ。
「可愛いなぁ、姉さんは。付き合いたい」
ベッドの上で、1人、静かに呟く。
我ながらキモすぎて笑えてくる。
***
俺が家に着いたのが午後5時。
姉さんが帰ってきたのは午後7時だ。
受験勉強とかうんざりするね。こんな時間まで勉強させられた挙句、大量の宿題を出される。
受験生にはなりたくない。
「おかえり」
「白狼……」
なになに!?
その今にも抱きつきたそうな目は!
瞳をうるうるさせ、こっちを見てくる姉さん。
よほど放課後の勉強が精神に来たんだろうか。だとしたら慰めてやらないと。
「お疲れ様」
そう言って、疲れ果てた姉さんを優しく抱き締めてあげる。
姉さんの体はちゃんと女性って感じで、膨らんでいるところは膨らんでいたし、柔らかくてほんのり温かかった。
ドキドキする。
付き合いたい。
「ちょっと……離しなさいよ。別にハグとか求めてないから」
「はいはい」
ツンデレさんだなぁ、姉さんは。
顔は真っ赤だし、ドキドキしてるのバレバレだけどね!
とはいえ、俺も顔真っ赤だと思うので何も言えない。姉と弟で顔真っ赤にして抱き合うとか、何かが始まりそうでゾクゾクする。
「そういえば、明日から帰ってくるのもう少し早くなるから」
「え、放課後自学が短くなるの?」
「交渉したの。一応あんたが家にいるわけでしょ。親もいないし、面倒見ないといけないじゃない」
俺たちのラブラブ両親はイチャイチャ旅行のために海外に赴任中である。
3ヶ月に1回くらいしか日本に帰ってこないので、なかなか会えていない。
ラブコメのご都合主義ってヤツだ。
やっぱりラノベの主人公って凄いな!
「俺の面倒見るために1人だけ早く帰れることになったってこと?」
「そういうこと」
やっぱりツンデレは違う。
「来年どうにかして受験勉強避けたいんだけど、どう交渉すれば許可される?」
「もし許可してくれなかったらセクハラで訴えるって言ってやったの」
「セクハラされたわけじゃないよね?」
「当たり前でしょ。セクハラされるくらいならその前に先生の顔面殴ってるから」
我が姉ながら、社会不適合が過ぎる。
「ちなみに、何時くらいに帰れる?」
「あんたと一緒に下校できる時間にしてもらったから。お姉ちゃんと一緒に帰りたいんでしょ?」
ここでノーと言ったら殺されると思った。
「もちろん。姉さんと帰れるなんて最高だよ」
「感謝しなさいよね。今回の件で、かなり内申点落としたと思うから」
内申点を犠牲にしてほしくはなかった……。
「姉さんは優しいね」
「たまにはいいこと言うじゃない。ちょっと待ってなさいよね。世界で1番美味しいお姉ちゃんの夜ご飯作ってあげるから」
まるでお嫁さんだ。
ほんの少し恥じらいながらも、最高の妻を演じる姉さん。
多分俺に持ち上げられて機嫌を良くしたからだと思う。ちなみに、夕食はいつも姉さんが作ってくれていて、どの料理も絶妙な味だ。
***
それは朝の出来事だった。
夏休み明け2日目の朝6時半。
朝食を用意し終えて義理の弟を起こしにいった犬織。
「おはよう、姉さん」
「……今日はちゃんと起きてるのね」
「気分がいいんだ」
弟である白狼の顔は生き生きとしていた。
希望に満ちた表情だ。
その表情を一目見た犬織は、なんとも言えない気持ちに支配されてしまった。
白狼が横を通り過ぎ、朝食が用意されているリビングに向かう。
「白狼……」
白狼が部屋を出たのを確認すると、ドアを閉めて白狼のベッドにささっと近付く。
クンカクンカ。
「白狼の匂い……」
そのまま顔をベッドにうずめ、限界まで白狼を感じる犬織。
そう。
犬織は重度のブラコンであった。
そして、かなりの変態でもあった。