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第32話 専属メイドのヤンデレヒロイン

 水越(みずごし)のメイド服姿はズルい。


 どんな人間も、脳裏を溶かされるような衝撃を受けるはず。


「可愛すぎる……」


 いかんね。

 つい心の声が出てしまった。


「本当?」


「あ……」


 どうしよう。


 ここで嘘ですと誤魔化したら終わるし……素直に認めたら認めたで犬織(いおり)に絞められる気がする。


「あ、はい。可愛いです」


 ということで、俺は絞められる方を選んだ。


 所詮は犬織に絞められるわけだし、運が良ければ柔らかいおっぱいを堪能できるかもしれない。

 だとしたら、まあいいっしょ。


 こういう時、自分がクズすぎて泣けてくる。


「ちょっと白狼(しろう)、どういうつもり?」


「嘘をつくような人間にはなりたくないんだ」


 俺は誠実な男である。


 平気で嘘をついたりしないぞ。本当だ。


 犬織は怒っているというか呆れていた。

 正直なところ、水越のメイド服姿に関しては犬織自身も可愛いと認めてしまっているんだろう。


 仕方ないよね。

 可愛いんだもん。


 単に可愛いとかいう言葉で片付けられない。尊い……いや、神々しい?


 とにかく、今の水越は人間を超越している。


「ちょっと待ってなさいよね」


 犬織はそう言って、勢いよく俺の部屋を出ていった。

 なんか焦ってるみたいだったから、トイレにでも行ったんだろう。




 ***




 リビングでは今、最高級のもてなしを受けている。


 メイドの練習ということで、水越が俺にコーヒーを入れてくれたのだ。インスタントだけど。


「……萌え萌え……きゅん」


 この瞬間、心臓がぶち抜かれた。


 ほんのりと赤く顔を染める絶世の美少女が目の前にいて、俺にハートマークを向けている。


 ――え、俺のこと好きじゃん。


 普通だったらこれは勘違い男のセリフだが、俺の場合、それは事実。

 水越は俺のことが好きだ。事実なのでイタくはないよ。


 ちなみに、メイド喫茶というのにも萌え系とかクラシカル系とか種類があるらしいんだけど、今回2年B組がやるのは王道の萌え系だ。


 客もそれを期待してやってくるわけだしね。


「白狼、見なさい!」


 人間を超えた女神に見惚れていると、ちょうど後ろから犬織の声がした。


「まさか……犬織まで……」


「どう? お姉ちゃんの方が水越さんより可愛いでしょ」


「……」


 正直なところ、圧倒的に水越の勝利だと思う。


 だが、犬織のメイド服姿だって超絶可愛いことは伝えておこう。


 水越よりずっと大きな胸の膨らみが、しっかりと強調されている。


 どうして家に犬織用のメイド服があったのかは大きな謎だが、そんなことを聞くのは無粋というやつだ。


「似合ってるね」


「まあ、別に嬉しくはないんだからね」


「はいはい」


 嬉しくないならもう褒めなくてもいいか。


 ということで、俺はしばらくメインヒロインにメロメロになることにした。




 ***




 翌日。

 

 学校でも文化祭準備の時間が取られた。


 そこで、水越のメイド服姿はクラスに公開される。

 その姿を一足先に見ていたという背徳感。


 家でメイド服着てくれたんだぜ、と友達に自慢したいところだが、ふとここで重要なことを思い出す。俺に友達はいないんだった。


『水越さーん、萌え萌えきゅんしてー』


『おねがーい。こっち見てー』


 クラスメイトのキャーキャー系モブが騒いでいる。


 わからなくもないよ。

 変なピースをして写真を撮っている陽キャ女子軍団とは比べものにならないほどの神々しさだからね。


 というか、申し訳ないけどあの陽キャ女子軍団のメイド服姿、全然可愛くないね。

 多分普通に見たらそれなりに可愛いと思うんだが、水越のせいで『可愛い』の基準が狂ってしまったんだろうな。


 今回の、というかいつもの主役である水越は、クラスメイトから接客のお願いをされても一切動かない。


 ただメイド服姿で自分の席に着いているだけ。


 何のために練習したんだか。


 ――ちょっと話しかけてみるか。


 隣の席ということで、モブでありながらも声をかえる。


「練習の成果見せなくてもいいの?」


「本番では上手くできるから大丈夫」


 完全に能力を過信しているヤツの典型的なセリフだが、水越の場合は本当だ。その言葉は信頼しても問題ない。


「それに、本番も接客は白狼君にしかしないから」


「……ん?」


 ちょっと待てい。


「今、なんて?」


「だから私、本番でも白狼君専属のメイドとしてやるから」


 いつの間にか、俺に専属のメイドができていました。ラッキー。

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