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第24話 ツン&ヤンデレ姉ヒロインの太もも

 昼休み。

 生徒は校舎に入って昼食を取る。


 熱中症対策ということで、グラウンドは立ち入り禁止だ。


 応援席にモブ立ちをかましていた俺は、犬織(いおり)にグイっと引っ張られてグラウンドを後にする。

 誰にも見られず、するりと存在感を消した。


「午後からは応援合戦があるから」


「……うん」


「1番前の特等席で見てなさいよね」


 もう応援用の衣装に着替えている犬織。


 俺たちはまだ未開拓領域だった空き教室にいた。

 初めて使う3階の空き教室。たまにカップルが使っていることで有名なところだ。


 そもそも、3階は3年生の領域などで、2年生が下手に出入りしていいような場所じゃない。ここは俺のいていい場所ではないと、ピリピリとした緊張感を感じる。


「今日はこの教室予約したの。誰も入ってこないから安心しなさい」


「予約ってどういうこと? 先生に許可取ったってこと?」


「そんなわけないでしょ。わたしのクラスではこの教室の使用権を裏で取り締まってる係がいるの。その()に確認したってこと」


「なにそれ。怖いね」


 3年生の間の闇を見たような気がした。


 そこにはカースト制度のような、厳しい上下関係があるような……まあ、犬織はどうせカーストトップだろうし、問題ないよね。


 ちなみに2年B組の場合は、水越(みずごし)が圧倒的トップであり、例の陽キャ女子軍団が中の下くらい。

 聖人君主系モブ男子が、下の上くらい。


 水越以外はほぼモブなクラス。意外と平和なのかもしれない。


「それより、わたしの衣装、どう?」


「凄く可愛いと思うよ」


 感情がこもっていない感じの感想になったが、本当はキュンキュンだ。


 ザ・チアリーダーという格好。

 犬織のような爆イケ系美少女が着なければ、空回りしてしまいそうな衣装である。


 それより太ももがエロいね。


 いつも風呂上がりの犬織を見ているから何も感じないだろって?


 いやいや、短めのパンツから見える内側のもも。細く走る青い血管。

 下手すれば風呂上がりなんかよりずっとエロティックだよ。


 犬織と俺は今、教室に2人だけ。

 1つの机を挟み、向かい合って椅子に座っている。


「特にどこが可愛いと思うわけ?」


「全部」


「――ッ。適当に言わないでよね! 別に嬉しがってるわけじゃないから!」


 相変わらずツンデレだし、チョロいな。

 ツンデレとチョロさは常に混ざり合う。絶妙に配合された2つの属性は、犬織というサブヒロインの中毒性を増していた。




 ***




 いよいよ体育祭後半戦が始まる。


 前半に個人種目がほとんど終わったので、ここからは団体種目だ。


 3年生の応援合戦に、2年生のダンス。

 1年生は……何をするんだったか覚えてないね。この物語では1年生なんてモブでしかないし、無視してもいいか。


 まず後半の始まりを告げるのは、3年生の応援合戦。


 ちゃんと前から見ろと犬織に釘を刺されたので、1人でこっそり特等席に腰掛ける。


 姉がいるってことで、家族割引みたいな感じで大目に見てくれるだろう。

 まあ。ほとんどの人は俺の存在感が薄すぎて気付かないだろうし、ノープロブレム。


「あれ? 白狼(しろう)?」


栗涼(くりす)


 モブに徹していたら、なんとボーイッシュサブヒロインが隣に座っていた。


 映画館での一件を思い出す。

 これ、完全にデジャブじゃん。


「映画館ぶりだね。あ、あれあの時のお姉さんだよね?」


「そうそう」


 栗涼が指さした先には、3年生の応援団の中でもかなり目立つポジションにいる犬織がいた。


 というか、こんなメインポジションだったんだ。

 まあ、とんでもなく美人な犬織のことだし、そうだろうなとは思ってたけど。


 団長と副団長の後ろポジション。

 かなりいい位置じゃん。さすがは俺の姉さんだ。


「凄いね。この前から思ってたけど、お姉さんとんでもないくらい美人だもん」


「あはは……」


 こういう時、身内としてはどう反応していいのかわからない。とりあえず笑っておくことにする。


「男の子って、ああいう感じの女の子が好きなのかなぁ……」


「……」


「ボクにはああいう雰囲気出せないや。男子と間違われるくらいだからね」


「それがいいんだと思うよ」


「え?」


「あ、いや、なんでもない」


 お恥ずかしい。


 つい力説してしまいそうになった。

 栗涼はボーイッシュ系ヒロインなのであって、そこに所謂(いわゆる)女性らしさやセクシーさは求められていない。


 元気さと爽やかさ、ほんの少しのかっこよささえあれば、彼女の人気は確実だ。


 その後、しばらく無言で応援の準備を眺める俺たち。


 なんせ、話すことがない。


 話そうと思えば『ダンラブ』のことでも話せばいいんだろうが、言い出せないのだ。

 会場もそれなりに緊張感が増してきているし、近くで立ち見しているモブ男子生徒たちは、鼻の下の伸ばして犬織に見惚れている。


「あのさ……」


「ん?」


 モブの生き様に感心しながら眺めていると、不意に栗涼が口を開いた。


「……この前言いそびれたんだけど、今度一緒に映画とか……行く?」


 ――おっとぉ!


 これはサブヒロインからのデートのお誘いですか!?

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