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第23話 姉ヒロインのヤンデレ覚醒レベル1

 200メートル走は6人中4位の成績だった。


 うん、実にモブらしい。


 だが、ここで思う。

 みんなモブなのだ。


 俺と共に走っていた男子たちはみんながモブ。

 1位にやっちゃった系モブに、惜しくも2位だった系モブ、なんとか3位に入ったよ系モブ、そして4位モブの俺、最下位は回避した系モブに、200メートル走とか眼中にない系モブ。


 大切なのはかけっこの順位じゃない。

 そこに主要キャラになれるだけのポテンシャルがあるのかどうか。


「惜しかったのね。まあ、わたしが1位獲るから安心しなさいよ」


「ブロック違うけどね」


 走り終わった俺に話しかけてくるチョロイン。

 どうやら俺の帰還を待っていたらしい。


 軽くストレッチしている犬織(いおり)


 グーっと背伸びをすると、体操服が上に伸び、引き締まったお腹が露になる。近くのモブ男子から歓声が上がった。


「注目浴びてるよ」


「美人の宿命みたいなものだから、気にしないことにしてるの。あんたにはわからないでしょ」


 まず俺は美人ではない。


「多分そういうことじゃないと思うけど」


「じゃあどういうこと? 何が言いたいわけ?」


「お腹が……」


 瞬間、犬織の顔が一気に赤くなる。


 もうお腹は見えていなかったが、過去は変えられない。

 本人は無自覚だったらしい。


「犬織のお腹は綺麗だし、いいんじゃないかな」


 ここは褒める作戦。


 彼女はチョロイン。間違いなく、これで理不尽に怒られることはない。


「そうね。別に嬉しいとか思ってるわけじゃないわよ」


「はいはい」


「ちなみに……わたしのお腹のどこが綺麗だと……思うわけ?」


 照れながら聞いてくる犬織。可愛すぎる。


 付き合いたい。


「全部かな。ていうか犬織の全部が綺麗だと思うよ」


 なんとまあ、思い切ったセリフだなぁ。


 猫音子(ねねこ)さんがペット枠になりそうな今、彼女候補のサブヒロインの中で最も距離が近いのが犬織だ。

 ここはしっかりアタックしておくべきなのかもしれない。


「――ッ。そ、そう。わかってるじゃない」


「だよね」


「調子に乗らないでよね! 褒めたわけじゃないんだから」


「はいはい」


 今日も犬織は尊いね。


「あと、昼はお弁当作ってきたから。一緒に食べるわよ」


「……」


 俺は無言。


 どうして何も言わないのか。


 それはもう、メインヒロインと約束してしまっているからだよね! 今日の俺は思う存分メインヒロインと戯れると決めているのだから!


「なんか言いなさいよ」


「今日の昼は忙しくて、一緒に食べられそうにないかな」


「別に何も係とかしてないでしょ。お姉ちゃん知ってるのよ」


 さすがはお姉ちゃんです。


「でも、いつも一緒に食べてる人を裏切るわけにはいかないし、また今度ね」


 体育祭の後からは好きなだけご一緒しますよ。


「いつも一緒に食べてる人……?」


 ――え、結構怖い。瞳のハイライトがないよ。


 今にもナイフで刺してきそうな表情。

 さすがに犬織までヤンデレなんていうことは……ないと思……いたい。


「さすがに普段ボッチ飯はしてないよ」


白狼(しろう)……あんた友達いるの?」


「いやまあ……水越(みずごし)さんとか、猫音子(ねねこ)さんとかとは――」


「……女? 猫音子って?」


「え、あ、はい。普通の友達です」


 そういえば犬織は猫音子さんのこと何も知らないな。


 実際に会ってみれば、猫音子さんの猫レベルの高さに驚かされて、気に入ってしまうかもしれない。

 猫音子さんは同性も魅了するだけの可愛さと愛嬌を秘めていると思う。


「でも一緒にお昼食べてる人は、さすがに男子よね?」


「……」


「無言ってどういうつもり?」


 嘘になるけど普通に否定すれば良かった。

 でもどうせバレるんだよな。


 バレるくらいなら最初から正直に言った方がいいというのが、結局の真理だ。


「水越さんです」


「……へ、へぇ」


 一気に吹雪が襲ってくる。

 注がれる冷たい視線。


 ――やっぱり怖い。


 これはもう、ヤンデレの道には間違いなく入ってるよね。どうしようか。


「猫音子って女とも食べてるんでしょ?」


「よくわかったね」


 もう吹っ切れた。


「別に嫉妬してるとかじゃないから! 勘違いしないでよね!」


 完全に空回りしてるよ犬織さん。


 だが、説明しないのは犬織に対して失礼だ。


「図書室に行った時はたまたま猫音子さんがいるから一緒に食べてるだけだし、水越さんは元々俺が1人で食べてた教室にいきなり入ってきて――」


「あの女……」


「俺がボッチなのかもしれないと思って配慮してくれた可能性も――」


「そんなわけないから、普通に。とにかく、今日からわたしが白狼と食べてあげる。ボッチで寂しいんでしょ?」


「でも――」


「でもじゃない! 弟はお姉ちゃんの命令に絶対服従が日本のルールだから」


 そんなルールあったっけ?


「日本国憲法で決まってるから従いなさいよね」


 それなら仕方ない(※日本国憲法にそんなルールは定められていません)。


 それよりも、だ。


 考えるべきことは別にある。


 サブヒロインで、俺の彼女候補である風野(かぜの)犬織。

 もうこれは100パーセント脈ありだと思うが……やっぱり姉さん、ヤンデレだよね!?

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