プロローグ 『変身したいお年頃』
初めましての方は初めまして。枯葉 輪廻と申します。書きたいものを書かせていただきました。
『ルーガ=ゼロ!! お前の野望もここまでだ!! は……あああぁぁぁ!!!!』
閃光をまとった、見事な跳び蹴り。作中最強フォームである『オメガフォーム』の必殺技『オメガ・クラッシュキック』が、ルーガ=ゼロの水月に打ち込まれる。
『お……のれぇ!! 宇宙最凶と恐れられ、幾つもの宇宙を滅ぼしてきたこの私が!! 貴様如きに負ける……だとォォ!!』
『俺の力だけじゃない!! この一撃は、消えていった地球の仲間達の想いが込められているんだ!!みんなの想いを背負っている俺が、お前に負けるわけがない!!』
『仲間、か……。最後の最後まで……癪に障るものだなぁ!! ニンゲンはあぁぁぁ!! ぐわぁぁぁぁ……!!』
暗黒首領『ルーガ=ゼロ』は、地球をその魔の手から救ったヒーロー『ストライク』によって討ち滅ぼされた。絶叫は爆発音によってかき消され、凶悪なその姿もチリになって消えてしまった。
『やったぞ……みんな……!!』
ストライクは自分の最大の敵を倒した、つまり死んでいった同胞の仇をとったことに、体を震わせる。ドラゴンを模したフェイスアーマーの下では、二筋の涙が頬を伝うのだった……。
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「よかった……物凄くよかった……一年観続けて正解だった……!! ありがとう、ストライクッ!! 勇気と感動をくれてありがとうっっ!!」
こちらもこちらで、涙を流している少年が一人。
あろうことかスタンディングオベーションまで始める始末。拍手がリビングいっぱいに響き渡る。どうやら最後に流れた主題歌が、ついに彼の涙腺を崩壊させたらしい。
彼の名は、緋色 勝太郎。この一場面を見てもらっただけでわかる通り、生粋の『ヒーローオタク』である。それも重度の。
腰には何やら、機械的な造形で作り込まれたベルトが巻かれている。こうして毎週のように変身ベルトを装着し、自分がヒーローになったかのように番組を楽しんでいるのだ。
「…………やっぱり、なりたいよな。『正義のヒーロー』に」
プラスチックやメッキ、少々の金属で構成されたベルトは、何も答えてくれない。無機物なのだから当たり前だが。
彼——勝太郎は、幼少期から描いている夢がある。それは、今閉幕した番組の主人公のような、『正義のヒーロー』になること。
だが、周りの人間にそんなことを願う者など、見たことがない。勝太郎もいい歳した高校二年生である。
今後の進路について考えなければならない時期だというのに、こんな呑気に遊んでいるのはおそらく彼だけだろう。定期考査も後日に控えている。
彼だって、うすうす感づいているところはあるのだ。自分の趣味が、周りの人間に遠ざけられる原因になっていることも。おかしな夢を抱いているせいで、多忙な両親から心配されていることも。
『正義のヒーロー』なんて、架空のものであるということも。
「……でも、俺は諦めない。俺が目指した!! ヒーローに!! なってやるんだ!!!!」
シュバッ、シュバッ……シュバッ!!
『ストライク』とほぼ同レベルのキレの良さで、変身ポーズをとる。鋭く腕を動かし、でもゆったり動かすところは丁寧に。
前方に半円を描くように腕を回し、天井に向けて勢いよく右手を掲げる。気迫の乗った掛け声を、声帯に負担がかかるくらいに轟かせる。
「変……身!!!!!!!!」
——彼の物語は、『変身』から始まる。
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