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第35話 もう1人のクロ

 何か、嫌な予感がする。

足取りも重くなっていた。


「病室……」


 私は、恐る恐るも病室の扉に手を掛けた。

そっと扉を開く。

そこには、クロの姿があった。


「クロ……?」


 私は病室の中へと足を踏み入れた。

クロの視線がベッドに向けられた居た。

私もクロの視線と同じく、ベッドへと視線を移した。

そこには……


「……クっ……ロ」


 そこには、クロと全く同じ容姿をした女の子が横になっていた。

恐らく、意識を失っているのだろう。


「クっ……クロ、影分身出来ちゃった!!」


 クロは興奮気味に言った。

私は、再びベッドの方へと視線を移す。


 いや、これは影分身なんかではない。

この子は、本当に……誰なのだろうか。


 その時、病室の扉が開かれる音が聞こえた。


「あら? あなたは……うちの娘に何か?」


 そう言ったのは私と同年代か少し上の女性だった。

クロの、母親だろうと察することが出来る。


「あ、いえ、その……」


 私は、言葉に迷った。

本当に、この子がクロなのかどうか……


「私はっ……ご、ごめんなさい!!」


 私は、クロの手を握ると、思わずその場を飛びだしてしまった。


 クロが生きていた。

それは、喜ばなきゃいけない事なのに……

幸せなはずなのに。

確かめることなんて、私にはできなかったのだ。

 

 当たり前の事なのに、気付かなかった。

あの子を目の前にして初めて理解した。


 クロは死んだんじゃない……


『生まれたんだ』


 死して生まれたんだ。

クロにとっては『死』こそが『生』だったんだ。


 私は、病室から少し離れた廊下で息を切らしながらも思考を巡らせていた。


「かおる!! あの子だーれ?」


 クロはまだ興奮収まらぬ様子で聞いてきている。


「どうだろうね……」


 私は、クロにこれしか言えなかった。


 あの子は今、生きようとしている。

それはつまり、クロの死を意味するのだはないだろうか。

その場合……


 クロは、消える――

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