第28話 予兆
机の上には、冷凍庫から取り出したばかりの冷えたバニラのアイスが置かれていた。
「おぉ!! おぉー!! クロは幸せ者だぁー!!」
クロの表情はパッと明るくなり、テンションの上がりようが目に見えて感じることが出来る。
「アイス! アイス! クロはアイスを食べちゃうぞ!!」
クロは両手を上げて、机の周りを走り周っていた。
「アイス!!」
いや、嬉しいのは分かるけど、そんなに全身を使って表現しなくても……
クロは、付属してきていた木のスプーンで、アイスをすくって口に運ぶ。
何て、幸せそうな顔なのだろうか。
一生見ていられそうな勢いである。
そして、二口目を行こうとした時、クロはびくっとした表情を浮べた。
「クロ、解けちゃう……おいひぁー」
後半は何を言っているのかよく聞き取れなかったが、クロは頬を緩ませて、机に吸い寄せられていた。
口からはよだれも垂れてきているではないか。
「ああ、クロ、よだれよだれ」
私はティッシュでクロのよだれを拭いてやる。
てか、自分で拭かんかい!
クロは、その後も夢中になってアイスを食べ進めていた。
やがて、アイスも最後の一口を迎えていた。
「おいしかったぁ」
クロはそう言うと、机に伏せるような態勢になっていた。
どうやら、アイスは食べ終わったようである。
「荷ほどき、再開しようか」
私は、アイスを食べ終わったクロに向かって言った。
「クロ、ねむねむだぁ」
「えっ……」
クロは眠そうに自分の目をこすっていた。
糖分を摂取したことにより、睡魔が襲ってきたのであろう。
そして、15時というのは眠くなる時間帯でもある。
「かおるも、ねむねむしよっ」
クロが可愛くそう言った。
「もう、少しだけだよ……」
そう言うと、私はクロと共に布団に入った。
「って、もう寝ているし」
クロは可愛い寝息を立てていた。
「あむあむ」
クロが幸せそうな顔で寝言を言っている。
夢の中でも何か食べているのだろうか。
なんか、こういうのも幸せだなぁ。
そう、思ったその時……
「クロ!!」
私は勢いよく布団を出た。
そう、クロが消えたのだ。
「くぅー」
しかし、次の瞬間……
私の隣には、寝息をたてているクロの姿が戻っていた。
クロが、消えてきている……
少しずつ、何かが起こっているんだ……
「クロ……」
私はクロの寝顔を見つめていた。
私の心は、どこか穴が開いたような不安に駆られていた。
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