終わる恋と終わらない恋
楽しんでいただければ嬉しいです!
前書き / うづきはら
「嘉絃とは付き合えないよ」
俺の恋はここで終わった。
高校2年になって同じクラスになって
それから友達になって一年が過ぎた。
俺らは高校3年、もうみんなそれぞれの行く道を決めてそれに向かって頑張っている時期だった。
そんな時に、俺は浮かれていたんだ。
調子に乗っていたんだ。
勉強を教えあってる間に俺はてっきり両想いだって勘違いしていた。
「私も悪かったよね。勘違いさせるような事して、でも私たち大事な時期じゃない。そんな時に二人だけの、恋人だけの時間を作るだなんてできるわけないじゃん。私は嘉絃が近い距離にいてくれて嬉しかった。でも付き合いたいわけじゃないの」
「ああ…わかってる。悪かった」
今朝、校庭の隅で雨に濡れた紫陽花を見たことを思い出す。ああ…彼女の心はどんどん離れていく。
それを止めることは彼にはできない。
「それじゃあ、さよなら嘉絃。お互い頑張ろうね」
そう言って彼女は、目の前から去っていった。
もうこれから彼女と話すことはないだろう。
それは自分が招いたことだ。
彼女のいう『友達』の距離に甘えていたんだ。
次なんてないけれど、気を付けよう。
「ありがとうな…」
誰もいない空き教室で一人、呟く
想いが実らなかった彼は、下を向く
恋が終わってしまった彼は、思う
自分は『恋』には向いていないと。
****
「嘉絃とは付き合えないよ」
彼の恋はここで終わった。
同じクラスになった程度で。
友達になった程度で。
勉強を教え合う程度で。
彼のこと惑わせて
挙げ句の果てには勘違いさせてごめんね、
なんて言うんだ。
「ああ…わかってる。悪かった」
彼の何が悪かったの?
もうこれから彼があの女と話すことはないだろう。
あの女のいう『友達』の距離感に騙されて
都合の良い男にされてたんだ、可哀想な彼。
「もう大丈夫だよ…」
誰もいない自室で一人、呟く
彼の終わりを聞いていた彼女は、決意する
恋が未だ終わっていない彼女は、思う
やはり自分にしか彼は守れないと。
本文 / うづきはら、屋幡