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始まったと思えば、実は全て始まっていた。
白瀬川麗也は椎名楓のストーカーである。
秋が深まる季節。天ノ川高等学校正門前に並び立つ木々の葉の色も紅く色づき始めていた。しかし、この物語の主人公である白瀬川麗也は、紅葉を眺めることはなく、7cm×14cmのスマートフォンのディスプレイを真剣な表情で見ているように、見せていた。誰に?もちろん登校中の他の生徒にである。今日のコンセプトはゲームに夢中で歩きスマホをしてしまう今時の陰キャである。
彼が今、意識を向けているのはもちろんスマホではなく、彼の前方10m先を歩く椎名楓である。椎名楓は、白瀬川麗也と異なり友人である七川純子と談笑しながら正門を目指して歩いているところだった。