翌朝
登校途中で、柊の後姿を見かけた。
なので挨拶をしようと、声をかけると…。
「柊、おはっ…」
思わず止まってしまった。
「ああ、おはよぅ」
珍しく寝惚け面の柊。目が真っ赤だ。
「どっどーしたのよ? 夜更かしでもした?」
昨日は確か、昔の友人と会うと言っていた。
よもやオールで遊んだとか?
…柊だと想像もつかないが。
「まあ似たようなものかな。ホラ、昨日の昼間に話してたじゃないか。『REN』という小説家のこと」
「あっああ、うん」
そっちか。
……って、ほっとは出来ない。
「ついつい全部読んでしまってね。いや、おもしろいよ『REN』の小説。夢中になってしまったぐらいだ」
「ふっふ~ん」
「思わず感想まで書いてしまった」
ウソッ!?
…昨夜、最終チェックを入れたのが、日付も変わる23時50分だった。
その時は気付かなかったから…その後か?
「いや、ケータイ小説もバカに出来ないものだな。あそこまでの文章力、ボクやキミに匹敵するぐらいじゃないかな?」
私はともかく…、柊がここまで言うなんて…。
「とにかく、文庫化しないのは勿体無いと思うんだ!」
うっ…。話がマズイ方向に…。
「里桜くんも読んだ方が良いよ。絶対に感動するから」
柊には珍しく、握り拳を作ってまで力説してくる。
「今日から図書委員達にも薦めようと思うんだ。そして出来たら校内でも薦めようかと…」
「はっ!?」
「良い作品なら、そこまでの努力は惜しまないさ」
いや、惜しんで良いから!
そんなことしたら、またHPがある意味炎上するから!
「そうだ! 早速生徒会に進言しに行ってくるよ!」
「あっ、ちょっと! 柊!」
…柊は見たことも無いような輝いた笑顔で、走って行ってしまった。
…って、大ピンチ!?