私生活
そもそも私が恋愛小説を書き始めたキッカケは、ヒマだったから。
たまたまケータイをいじってて、このサイトを見つけた。
最初は見ているだけだった。
けれど昔から趣味で小説を書いていたせいか、自分でも載せたくなった。
そして書き始めて半年―。
『REN』は爆発的な人気を生み出した。
明るく、楽しい恋愛ストーリー。
泣き笑いがある、青春的な内容。
そして読みやすく、短い小説。
最初は学生から、今では大人達の間でも評判になっている。
レビューや感想は毎日寄せられ、ランキングでも常に上位をキープ。
本来、作家なら喜ぶべきだ。
でも私には元々恋愛経験などない。
なのに書けて、人気がある理由は…。
計算、しているからだ。
恋愛経験はゼロ。
しかし私は毎日本を読んでいるし、ゲームもしている。
その経験から、どういうふうに書けば人気が取れるか、ある程度計算して出せるようになってしまった。
もちろん、悪いことではない。
作家のほとんどは、計算して書いている。
書きながら、作品の世界を作っていくのだから。
…まさかオタクとしての経験値が、ここで役立つとは思わなかったが…。
『REN』としての人格は、明るくはしゃいだ性格。
今の自分とは正反対に仕上げた。
…だからだろうか。
読者から送られてくる『REN』への憧れの感想を見ると、少し胸が痛くなるのは…。
今までオタクとしての経験値を高く積んできたことと、昔から小説書きをしていたおかげで、書き続けることは全く苦にはならない。
書くのは楽しいし、好きだ。
けれど…人気が出過ぎて、『REN』自体が暴走し始めている気がする。
だからと言って、今の自分を出すわけにもいかない。
「…ムズイなぁ」
私は眉を寄せ、ケータイサイトを出した。
パソコンからでも見られるサイト。
…今朝見た時より、HPの訪問者と読者数が増えている。
その数、1000人以上。
明日になればとんでもない数字になっている。
悪いことではないのに…。
気分が晴れないのは何故なんだろう?
ある意味、夢が叶ったと思えば良いのに…。
本にすることを躊躇っているのは何故?
こんな自問自答を、三ヶ月も繰り返している。
ファンの人からも、本にしてほしいと言われている。
だけど…イマイチ、踏ん切りがつかない。
こんな気持ちのままでは、売れることが分かっていても、簡単には返事が出来ない。
「私らしくないな」
深くため息を吐いて、伸びをした。
本の世界、ゲームの世界が好き。アニメもパソコンも大好き。
なのに…今は何にもする気が無かった。