帰り道
帰り道、私は友達と別れ、書店に寄る。
学校帰りはいつもこうしている。
買う場合もあるけど、まあ…大体は立ち読み。
何でもかんでも買っていては、家が沈没する。マジで。
まずは雑誌を巡って読んで、単行本の新刊チェック。
季節の変わり目は、新刊の発売が増える。
夏の終わりは特にな~。
読書の季節になるせいかおかげか、新刊ラッシュが激しい。
嬉しい悲鳴だ。
…財布は絶叫しているが。
バイトを増やした方が良いんだろうか。
今は個人図書館と古本屋と中古ゲーム店のバイトをしている。
個人図書館は家の近所にある。本をたくさん持っている人が家を改築して、図書館にした。
そこで本の整理をする。季節に合わせた本を紹介したり、流行になっている本をピックアップしたりする。
…人相手はなかなか難しいので、カウンターはやらない。
古本屋でも本の担当。季節物の本や、その時の流行している本をピックアップしたりする。
こちらも接客はやらない。……人は厳しいので。
中古ゲーム店では、古本屋と似たようなことをしている。
季節に合わせたゲームや、その時の流行しているゲームなどをピックアップし…。
そしてやっぱり接客はムリ。………人間、実は苦手。
けれどピックアップ作業、実はかなり好評。
バイト仲間には秘密だが、店長がこっそり時給を上げてくれたほど。
個人図書館は土・日・祝日、8:00から17:00まで。
古本屋は月・火・水、15:00から、20:00まで。
中古ゲーム店は木・金、15:00から21:00まで。
まあ学校行事とかでいろいろズレたりはする。バイト先の事情でお休みもあるし。
今日は金曜日。だけど以前、バイトを代わってあげた人がいて、今日は代わりにお休みを貰った。
明日は土曜日だけど、珍しくお休み。本棚の位置を変える為、男性達は出勤だけど、女性達はお休みを貰った。
日曜日には再開できるよう、今週いっぱいは個人図書館は閉館している。
なので比較的、ゆっくりと過ごせる。
せっかく空いた時間、私は楽しむことにした。
新刊をチェックし終え、私は何も買わずに店を出た。
買わなかったんじゃない。
明日、まとめてアニメイトに買いに行くのだ。
あそこなら特典も付くし、ポイントも付く。良い所だ。
私の家は電車で2駅先。
電車に乗ると、イスに座れた。早目に並んで良かった。
けれど…ふと隣に座る女の子のケータイ画面を見て、固まってしまった。
…『REN』の小説だった。
でも女の子の顔は幸せそうだった。
……まあ、いっか。
けれど次の駅に止まり、入ってきた女子中学生3人組の会話内容も『REN』。
血の気が一気に下がり、早く駅につくことを願った。
そして到着すると、素早く降りる。
駅から10分の所に、私の住んでいる一軒家がある。
私は走った。
そして3分で家に到着した。
ぜぃぜぃ言いながら2階に上がった。
2階の右側の2部屋は私の部屋だ。
一つは自室、一つは書斎。
2部屋とも私が管理している。
私は自室に戻り、
ズルッ!
と足を滑らした。
「ぎゃっ!」
…足元に本が転がっていた。
けれど慣れている私は体勢を直し、ベッドに倒れ込む。
ちなみに私の自室にも本棚はある。
……主に親に見せられない本がある。
本当に見せたくない本は、クローゼットの秘密の本棚に隠している。
まあ………バレてはいるんだろうけど。
私は本を避けながら、パソコンの前に座った。
一人かけ用のソファーイスは、奮発して買った良い物。長く座るから、良い物を選んで買った。
ノートパソコンは起動した。
そしてすかさずメールチェック。
「うっ…。来てる」
さまざまなメールの中で、すでに見慣れたメールアドレスがあった。
『REN』のケータイ小説を見て、本にしたいと言う出版社からのメールだった。
すでに断りを入れているのに、しつこくメールをしてくる。
しかも一社だけじゃない…。
今では5社からお声がかかってきている。
「本、かぁ…」
将来の夢に、ソッチ関係を考えていないワケじゃなかった。
やっぱり好きだし、自分にそういった才能と実力があることは証明されている。
けれど…。
恋愛小説というのが引っ掛かっていた。
何故なら私は…。
「恋愛したことないんだけど」




