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恋愛小説家のススメ!  作者: mimuka
11/18

生徒会長・桂木

「何だ、つまらないな。僕の思い、そろそろ真剣に考えてくれたのかと思ったけど」


わざとらしく肩を竦めて見せる桂木に、私は思いっきりイヤそうな顔をして見せた。


「そのふざけた話題はいつになったらやめてくれるんだ?」


「失礼だな、真面目なのに。やっぱり柊が本命?」


「アイツは悪友! そしてお前も悪友の一人だ!」


桂木は中学時代からこんな悪ふざけをする。


おかげで女子生徒の視線が痛いことこの上無い。


「それは残念。そろそろステップアップしたいんだけどね。どうかな? 放課後は映画なんて」


そう言って、どこからともなく映画のチケットを2枚出して見せる。


…言い忘れていたが、桂木の実家は資産家で、コイツ自身跡継ぎでもある。


成績・容姿・家柄の三拍子が揃っていることから、女子生徒の間ではまさに狙いどころとなっている。


しかし私はコイツの腹黒さを良く知っている。


逆らう者には容赦が無いところは特に。


だけど…コイツがコネで手に入れるものには、いろいろと助けられたりしている。


主に図書券とか商品券とか割引券とか…。


実際、桂木が手にしているチケットは、ちょうど見たいと思っていた映画のものだ。


ケータイを取り出し、バイトを調べる。


…おっ、今日は珍しく休みだったな。


そう言えば、今月苦しいから余分に働きたいという大学生にシフトを譲ったっけ。


「まっ、ヒマだから良いな」


「珍しいね、バイト休み?」


「たまたまだ。しかし…お前、それ本気で一緒に見る気? 私一人でも良いんだケド?」


桂木が手にしているのは、元はマンガだったのを映画化したものだ。


はっきり言って、オタク向け。


私が行っても違和感無いだろうが、コイツはなぁ…。


「うん、里桜が一緒なら僕は何だって良いんだ」


そう言って女生徒なら失神しそうなほど、甘い笑みを浮かべる。


「あっそ…。じゃ、待ち合わせはどうする?」


「授業が終わったら教室で待ってて。迎えに行くよ」


…正直ちょっとイヤだったが、まあ言える立場でも無いか。


今にはじまったことでもないし。


―そして放課後。


「お待たせ、里桜。行こうか」


「うん」


「えっ!」


「りっ里桜!?」


友達が目を丸くして、私から一歩下がった。


「何?」


「何って…」


「せっ生徒会長とどこに行くの?」


「映画。奢ってくれるって言うから」


そう言った途端、周囲がざわめいた。


…何だ? 変なことでも言ったか?


心配になって見回すと、誰も彼もおかしな顔をしている。


「りっ里桜、あなた、まさかっ…!?」


「会長と…」


「うん?」


「里桜」


ぐいっと腕を引かれ、振り返ると、桂木がにやけた笑みを浮かべていた。


「早く行こう。時間が無いよ」


「うっうん。それじゃあまた明日」


「じゃあね」


私と桂木はクラスメイトに手を振り、教室を出た。


…が。何故か廊下にいる生徒達は、私達が通ると道を開ける。


……桂木は分かるのだが、何で私までおかしな眼で見られる?


「さっ、急ごうか」


桂木が肩に手を回してきたが、いつものことなのでスルーする。


「あっああ」


「…里桜くん?」


前から柊が怪訝な顔つきでやって来た。


「桂木会長…。二人して、どこに行くんだい?」


笑顔になるも、目が笑っていないぞ…柊。


「デートだよ。ヤボなこと聞かないでほしいな、柊」


隣の桂木からは何故か冷気がっ!?


「ほぉ…。いつの間にそんな仲に?」


「ごっ誤解だ! ただコイツの奢りで映画を見に行くだけだ!」


そう言った後、すぐに後悔した。


思わず口を手で押さえるも、柊の目は冷たくなるばかり。


「…全く。相変わらず物欲に弱いんだな」


「女の子なら、可愛いものじゃないか。里桜だって女の子なんだし」


桂木に女の子扱いされたことに、全身が拒絶反応を起こした。


…鳥肌が立ったのだ。


私はどーも女の子扱いされるのは苦手…と言うか、体質的に合わないらしい。


…でも女の子じゃない扱いをされるのも、何だかイヤだ。


……複雑だな、女心は。


「まっ、そういうワケだから。じゃあね、柊」


桂木が私の肩を押すので、歩き出す。


「ひっ柊! また明日」


顔だけ柊に向けると、拗ねた表情で手を振られた。


そのまま校舎を出て、街に向けて歩き出す。


「…いい加減に放してっ!」


肩に回されていた桂木の手を、振り払った。


「どーして柊にああいうことを言うの! おかげで私まで評判落ちたじゃない!」


「私までって…一蓮托生だね」


「冗談じゃないっつーの!」


手に持っていたカバンを振り回し、桂木に当てようとするも、受け止められてしまった。


「でもさ」


「何よ?」


「それだけ僕とのことを否定するってことは、やっぱり柊のことを…」


「その邪推もやめて。柊に彼女がいても、私の心は揺るがなかったの。恋愛感情が無い証拠でしょ?」


「う~ん。里桜の心って複雑だねぇ」


…それは自覚している。


「…大体、私に恋愛の話題なんてふっかけないでよ。私が恋愛経験ゼロなの、知ってるでしょう?」


「うん、すっごく知ってる」


……殴りたくなった。


ものすっごい輝いた笑みで言われると、殺意が充電される。


「モテないワケじゃないのにね、里桜」


「…タイプが高いのよ」


「それだったら僕が当てはまるハズじゃないか。そういう問題でもないんだよ」


「……じゃあどういう問題だってーの?」


思わず刺々しくなってしまう。


「里桜は壁を作り過ぎ」


「壁?」


「そう、壁。男女関わらず、里桜は壁を作る。自分の中に一歩踏み出されることに、すっごく嫌悪を感じるから」


ぐっ…!


…イヤなところを突いてきたな。


「里桜は自分の世界に閉じこもり過ぎなんだよ。自分の生活ペースを乱されるのがイヤで、人との間に壁を作ってしまう。だから男女交際もしたくないと考える」


「しっしたくないとは…」


「考えてるだろ?」


きっぱり言われ、私は言葉を無くした。


…図星だったからだ。


「大体人付き合いを重視したいと考えてるなら、あんなにバイトを入れないって。バリケード張っているのと同じだよ」


「バイトはお金がいるから…」


「それも趣味の為、ひいては自分の為だろう?」


うがっ!


「里桜はさ、少しは自分の世界から出た方が良いよ。引きこもりとは言わないけど、今のままじゃちょっと心配だし」


うぐぐっ…!


「まっ、キミは計算高いからね。将来は家にこもりながらも出来る仕事で成功しそうだけど…。でもやっぱり人付き合いは大切だよ? 人生、それで引っ掛かる人なんてたくさんいるんだから」


………実際、今現在、引っ掛かっている。


ケータイ小説のこともそうだが、コイツはどうして人を分析できる?


…やっぱり人付き合いが多いせいなのか?


壁…ある程度自覚はしていたけれど、桂木に言われるぐらいだ。


かなり高く、厚くなってしまっていたんだろう。


「…人付き合いを深めれば、マシになる?」


「う~ん。まあ付き合う人種を間違わなければ」


チッ。オタク仲間ではダメか。


「だからさ、僕なんてどうかな?」


「お前のことは恋愛対象にはならない」


「…本当にバッサリ切り捨てるよね? そういうところが壁作ってるって言うの、分かってる?」


「ぐっ!」


…イタイところをグサグサついてくるなぁ。


「だからさっ、お試しでも良いから僕と付き合ってみようよ」


「…そういう恋愛の仕方はイヤ。半端は好みじゃないの」


「でも本気には今はなれない、そうだろう?」


「まあ、ね…」


「じゃあ擬似恋愛は? キミの得意分野だろう?」


「…桂木、ケンカを売っているなら、買うけど?」


私は拳を握り締め、顔まで上げた。


「違うって! 僕は別にキミの趣味のことを悪く言ってるワケじゃない。例えだよ、例え」


…にやけた顔で言う言葉じゃないよな?



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