第6話
ヘルムートを軽くまわった私達は魔族地区の服屋でスカートやズボン、シャツにパーカー、下着等をそろえ、早めの昼食をとり城に戻ってきた。
…魔王の財布が薄くなったのは言うまでもない。
場所は今朝私達が窓から飛び込んだ魔王の部屋。飛び散ったガラスは既になく、窓は全ての物が新品に変わっていた。
いや、早くない?
私達の疑問を覚の能力で読んだ魔王はそれに答えた。
「これはラストの仕業だな」
「「らすと?」」
人の名前?
「うむ。この城唯一のメイド。最新にして最後にして最高傑作の自動人形だ」
ここで私は疑問を浮かべる。
「自動人形って誰かが作ってるの?」
「自動人形ははるか昔、初代魔王が生まれる更に昔に何者かによって造られたとされている。
確認されている全24体の内20体はゼンマイ式、3体は電気を用いるモーター式なのに対し、ラストは未知の永久機関にナノマシン、その他様々な技術が使われていて見た目はほぼ人間と変わらぬ個体だ」
なにそれ凄い
「人間に紛れて暮らしていたが見た目が変わらないことで人間に怪しまれたところを二代目が拾った。ちなみに我は十三代目だ」
もうほんと、こんなんばっかか人間共。
「ここ数百年、そのような子らが増大しているのだ。…嘆かわしいことにな」
魔王の話を聞いていると、背後から視線を感じ振り向くと開きっぱなしだった扉から顔を半分覗かせてこちらを見る長身で金髪ボブカット、歯車やネジを組み合わせた独特な髪飾りをつけた女性がいた。
「もしかして、あなたがラストさん?」
琴音も彼女に気がつき尋ねる。
彼女は私達に姿を現す。
メイド服に整った顔、服越しでもわかる無駄な脂肪のない細身の体。身長は170cm程。
「お初にお目にかかります、次期魔王様に理解者様。私はこの城のメイド、最終人形ラストドール。ラストとお呼びください」
「ラストはこの城唯一のメイド。加減速というラストだけがもつ固有機能を使って常に二倍速で動いている」
「にしては喋り方は普通だね。早口言葉みたいになるんじゃないの?」
私もそう思う。
琴音の疑問にラストは残念な答えを告げる。
「あ、それはただ私の喋り方がゆっくりすぎるだけです」
「「残念すぎる!」」
嘘でもそういう機能があるとか言って欲しかった。
「うぅ、なんで国民の方と同じこと言うんですかぁ」
「え、えとラストさん、その髪飾りは?」
私は最後の希望である歯車とネジで出来た髪飾りについて尋ねる。あれにはきっとすごい機能が……
しかし、現実は無情である。
「これですか?これを付けるとなんとなく見た目が自動人形っぽくなりません?」
もうほんと、こんなばっかかよ魔王城。
一人称を中二臭くして魔王っぽさをアピールする魔王、クラークに機械っぽい髪飾りで自動人形っぽさをアピールする自動人形、最終人形ラストドール。
あの主人あってこんな従者あり。
「ねぇねぇおねーちゃん!でっかい本を開いて持ったら理解者っぽくなるかな!」
「琴音!?…琴音、それは某半分こ怪人の緑の方の人だけだからやめて」
「それは2009年に放送されて2017年からコミック化した仮面ライダーW、風都探偵のもう1人の主人公、フィリップさんのこと?」
やべっ、琴音の特撮オタのスイッチを踏み抜いてしまった。
「おねーちゃんはどんな格好するの?時計?それともちょっとはずしてカメラ?」
「伝わらない!それは私達が居た所でギリ通じるかどうかだけどこっちじゃ伝わらないから!」
ちなみに時計は仮面ライダージオウ、カメラはディケイド。
「ならマントとナイフはどうだ?」
魔王が丁寧に畳まれた黒いマントに大型のナイフを乗せて持ってくる。
「アンタが乗るなよ!え?何エターナル知ってんの!?」
「エターナル?なんの事だ?これは我が魔王となったときにこれ付けたら魔王っぽくなると思ってマフィの初めてのおつかいのときに買ってきてもらったマントと護身用に渡したらいらないと返されたナイフだ。商人曰く胸に刺せば死ぬナイフだそうだ」
「いや娘大好きかアンタ!「当たり前だ!!」うわうっさい『!』2つも付けるな!あとそれは普通のナイフだよ魔王で覚が詐欺られんな!」
「なにぃ!?じゃああの箱の側面を擦ると火のつく細い棒は!」
「それはただのマッチ!」
「じゃああのいくらでも書ける金属製のペンは!」
「それただのメタルペン!マニアックだなおい!ってえ!?この世界にあるの!?」
ハァ、ハァ、なんだコイツ、疲れるぞこの魔王…
息を切らせた私に琴音とラストが肩に手を添える。
「おねーちゃん!頭にねじれた角のカチューシャ、どう!」
「次期魔王様!私とお揃いの髪飾りどうですか!」
さらなる追い打ちをかけられた私は肩を震わせる。
「希依?」「次期魔王様?」「おねーちゃん?」
「uuunyanyaaaaaaAAAAAiiii!!!!!!(うぅぅるっさぁああぃぃいい!!と、言ってるつもり)」
その日昼頃、ヘルムート中に独特な叫び声が響いたとか…
あーもーほんと、
…楽しいなコノヤロー!
「希依、楽しんでいる所悪いが「んっ、んな事ねっし!」っそ、そうか。
…お主が新たな魔王となること、今日中には発表するぞ」
えっ、マジ?
「超マジだ」
拒否権は?
「最強になってしまった己を恨め」
延期は?
「我が待てん」
私の意思は!?
「意志を主張するならまず言葉を発せ」
「私の意思は!」
「スピーチの内容でも考えとれ!」
「めんどい!魔王がやれ!」
「だからお主が魔王だと言っておろーが!これからは我をクラークと呼べ!」
「アンタを大魔王に昇格させてやろーか!」
「やめい!いい加減我に隠居させろ動物達を愛でさせろマフィと親子デートさせろ!」
「アンタそれしか言えんのか!」
「自分の娘ほど可愛いものなどそうそういるものか!」
「なにおう!琴音だって負けてないもん!見よこのツルペタストンのスリムポディ!顔も可愛いし抱き心地も最高だぞ!」
希依は琴音の脇の下に手を入れ掲げるように持ち上げる。
「ちょっおねーちゃん恥ずかしいからやめて!そして私が気にしてるところを褒めないで!」
「ウググ…
この場にマフィが居ればマフィの可愛さを箇条書きにまずは五万ほど述べるところを…」
シンプルにめんどうなのでやめた頂きたい(by作者)
「だったらこっちは六万!」
「ちょっおねーちゃん!?」
「七万!」
「八万!」
もはやヤケである。
「「十万!」」
「おねーちゃんやめて!」
ムググゥ
「パパやめて。恥ずかしい」
ドゴスッ
ウゴッ
羞恥心に限界が来た琴音と魔族地区から走ってきたマーフィーがそれぞれ姉、父の口を封じる。
琴音は希依の口を両手で塞ぎ、マーフィーはクラークの頭部を床にめり込ませる。
「あっ、お嬢様」
「ん。こんにちわラスト。
ちょっとおねがいあるんだけどいい?」
「なんなりと」
「牛乳拭いた雑巾とギャグボール買ってきてくれる?」
「…何に使うおつもりで?」
「パパの口に詰めて口封じ」
「ッ!!―――ウグッ」
ドスッガスッ
マーフィーの言葉を聞いたクラークは必死に手足を動かすがさすが鬼の子。両手を使って床にめり込ませている。
「ムググググン?鬼すぎない?」
「ええ。私、鬼神と人の子ですから」
そういえばそうだったっけ
「おねーちゃんは何を詰められたい?」
「ンンン!?ことね!?」
「手?足?」
「んむむんむむんんむ!(裂けちゃうからやめて!)んむんんんむんむ!(マジごめんなさい!)」
「…反省してる?」
ペロッ
「ヒァッ!?」
口を両手で抑えられたままの希依は口を少々強引に開き、琴音の手のひらを舐めた。
琴音が手を離し希依から離れると希依は琴音に飛びつき抱きしめ…
…チュッ……レロッ…ンチュッ…ァンゥ……ンンンッ!
唇を重ね、琴音の息が切れるまで離さずに舌を絡める。
「ハァ、ハァ、…おねー、ひゃん?」
「琴音、おねーちゃんはいつも負けてあげてるの」
「ぅあーい…」
希依のセリフに琴音は蕩けた顔、声で返す。
二人だけの空気を出しているところにラストがどこからかペンとメモを取り出して興奮した様子で希依と琴音に詰め寄る。
「お二人はお付き合いなさっているんですか!?行為はどこまで!?馴れ初めなどをぜひ教えてください!」
「「ラ、ラストさん?」」
「さぁすみやかに白状して私執筆の小説のネタになってください!初体験はどんなでしたか!?」
「琴音が激しかった」
「ちょっおねーちゃん!?まさか仕返しのつもり!?」
フフっ。琴音よ、私は結構根に持つタイプなのを忘れたかな?
「馴れ初めはどんなだったのでしょうか!」
「重すぎて一言じゃ言えないけど、」
「「言えないけど?」」
「簡単に言えば橋の下で拾った」
「まさかの捨て猫感覚!?…いや間違いじゃないけど言い方があるでしょ!?」
「なるほど。琴音様は希依様のペットと」メモメモ
「ほらこうなるじゃん!おねーちゃんどう責任とってくれんのさ!」
「ラストさん、この世界って同性でも結婚出来る?」
「一応は可能ですよ。忌避されがちですが」
「よし琴音、結婚しよう」
「え?あ、うん。…え?」
「…ペットと飼い主の禁断の恋」メモメモ
「ちょっとそこのポンコツロボはメモを寄越しなさい!そしておねーちゃんは私の事どんな風に見てたの!?」
「?…後輩で妹で恋人だけどそれが?」
「それが?ってなんで平然と言えるの!?ちょっとは照れてよ!もしくはちゃんとペットって言ってボケてよ!」
「いやだって、普通に答えただけだし」
「あーもー!なんでおねーちゃんは変なところで天然なのさ!」
「…そんなことないと思うけど」
結局、希依のスピーチは翌日に延期になりましたとさ
感想等よろしくお願いします!
Twitterにて告知等してますので気軽にフォローしてくださいな
https://twitter.com/ster331?s=09




