第5話
ヘルムート、魔物地区で私達やマフィさんの話を魔王としながら魔物地区を巡り、次に向かうことにした。
マフィさんは魔物地区に住んでいるので残り、マフィさんに懐いたリリアは残ることにしたそうだ。
「さて、次に向かうのはヘルムートの地下、魔力地区だ。ここからはちと遠いからお主らの今後についてとかを話しながら向かおうか」
「私達の今後?」
「うむ。ときに希依、お主〈理解者〉はもう見つけているのか?」
「え?それなら琴音がそうだけど。…魔王と何か関係あるの?」
「ある。それも結構重大なものだ」
「それって?」
「魔王は職業が〈最強〉の者がなるというのは話したな?」
「まぁなんとなくは」
「理解者の役割は我等歴代の魔王の経験の譲渡だ」
「「経験の譲渡?」」
「この国での魔王の役割は我儘を言うことと国を守ることだ。発展だのなんだのは魔王が何もせずとも国民がやってしまうからな。
そこで魔王が弱くては他の国の軍や勇者一行にこの国は簡単に滅ぼされてしまう。これが最強が魔王となる理由だな」
「それで?経験の付与にはどんな意味があるの?」
「ステータスにレベルというのがあるだろ?あれは戦闘経験を積めば積むほど上がるのだが〈最強〉の者は自らが強すぎるが故にまともな経験が出来ん。そこで理解者の出番という訳だ。
我等歴代の魔王は新たな魔王に理解者の協力のもと全ての戦闘経験を受け継がせるのだ。別に我のレベルが下がるわけではないがな」
つまり、戦闘経験をコピペするという事かな?
「こぴぺ?というのはよく分からんが多分それで大丈夫だろう。ちなみに理解者もその経験を理解する必要があるからレベルが上がるぞ」
「お、琴音やったじゃん」
「レベル上げはめんどうだからねー」
「クハハっ。
ちなみに我の時の理解者はマフィだ。後天的だがの」
「どういうこと?」
「そもそも〈最強〉と〈理解者〉は本来セットなのだ。親子だったり兄弟だったり、恋仲だったりな。
だが我は一人でこの世界に来てしまった。結果、一人だったためこの世界の誰かが理解者になるのだが、それがマフィということだ」
「それってたまたまなの?てか私と琴音がこの世界に来たのもたまたまなんだけど」
「お主らのそれは知らんが、マフィは我と家族になって数ヶ月が経って我に心を開くようになってからだったな」
つまり、偶然ではないということか。何かの間違いであの勇者一行の誰かじゃなくてよかった。
あれ?でもこの職業的なやつって来世のなんかが絡んで来るんじゃなかったっけ?
「それは例外ということでよいと思うぞ。あまり難しく考えるでないわ」
このパパさん、娘のことなのにテキトーだな
「ふんっ、来世だの前世だのは神とかその辺のやつが考えることだ。我らにはどうしようもなかろう」
まぁ確かに
「…おい希依、お主、我が覚だからといって口に出さなくていいわけではないからな?」
「あ、今更つっこむんだ」
うわーん、まおーがいじめるよことねー
「あーはいはいおねーちゃん、よしよし」
「…おい琴音、お主心がよめるのか?」
「え?うん。なんか理解者のそれで」
「なんだと!?…つまり、我の考えもマフィには筒抜けだったということか……」
なんかいじけ出す魔王とおねーちゃん。これどうしよ。
…てかおねーちゃん弱すぎるでしょ
「さて、ここがヘルムート地下、魔力地区だ」
私達が来たのは国の中心に位置する城の地下。そこには広大な空間があり、壁や床から様々な色の水晶のような結晶が生えている。
また、ここに魔族や魔物は一体もおらず、肉体のない幽霊のようなものが数体フラフラと浮いているだけで神秘的でありながらもどこか不気味であった。
「ここはどういう所なの?」
なんのためにあるのか分からない私は魔王に尋ねる。
「ここは世界の中心にしてこの世界の魔力の源だ。ここがあるおかげでこの国に住む魔族や魔物は食人をする必要がないから一番重要な場所でもある」
なるほど。これが魔族と人間がこの国では共存出来てる理由でもあるのか。
「しかし、これが人間達の王が魔王や魔族をどうにか倒そうとする理由でもあるのだから魔族もそれなりに強くなければならないのに変わりはないがな」
「それ以外にこの国が狙われる理由はないの?」
「いや、稀にだが英雄気取りの人間が野良の魔物達はこの国のしわざだと勘違いして攻めてくることはある」
「やっかいな話だねー。どうにかならなかったの?」
次は琴音が尋ねる。
「いや、歴代の魔王達も何度も話をしようとしたのだが耳を傾ける者はごくわずかでほとんどが話を聞こうとせん。そのごくわずかな者のさらに一部がこの国に住む人間とその子孫だ」
「その人達から人間の王に話してもらうのは?」
「それもだめだ。そんなことをしては裏切り者として死刑になりかねん」
「…そっか。
どの世界でも、人間のトップは屑ばっかだね」
「…琴音、魔王がそのような王になるのを防ぐのも理解者の役割なのだ。忘れないでくれ」
「うん。おねーちゃんも、無いとは思うけど、気をつけてね」
「うん。
…そういえばずっと疑問だったんだけど」
「ん?なんだ?」
「魔王の役割はこの国を守ることと、我儘を言うことだって言ってたけどどういうことなの?」
「そのまま言葉通りだが?
魔物地区の動物園化は我とマフィの我儘だし魔族地区の街並みは先代の魔王の我儘だ」
人間とはまったく違った発展の仕方だ。人間の王がこんなことをしても民は疲弊しきってしまうだけだろう。
「うむ。これが魔族の国と人間の国の最大の違いかもしれんな」
「魔族の人達は何も文句言わないの?」
「いや。我儘の内容によっては文句や疑問を王の前で堂々と言うし物によっては全国民が全力で止めに来ることもある」
なんともたくましいというかなんというか……
「魔王とて強いだけの一国民。魔王を矢面に一つの矢となって発展させていくのだ。
これぞ王道ならぬ魔王道!
希依、お主はどのような王になるつもりだ?どのような我儘を突き通すつもりだ?」
私が、王。これまで考えたこと無かった。いや、普通考えないけど。私は…
ま、これまで通り、今まで通りを貫こう。
「私は、王道にも魔王道にも縛られず、外道と邪道に染まってでも、強き正義を殺してでも、善悪問わず弱者を救う。
私はそんな王になりたい」
「ク、クハハっ、面白い。そんな王ならこの国の民はお主について行くだろうな。それに、それは我らのような〈最強〉でなければただの理想論。言うだけならありきたりだが、これからの時代実現出来るのは魔王となるお主だけだ」
「おねーちゃん、私も頑張るから、諦めないでね」
「ハハっ、何言ってんの?これは向こうでは実現不可能だっただけで琴音と会ってから思い抱いた理想だよ?
〈最強〉となった私が、向こうで諦めなかった私が諦めるわけないじゃん」
「ふーん。ありがと、おねーちゃん♪」
はてさて、なんのことやら~
「素直でないなぁ」
魔王がおじいちゃんみたいな事言ってる。
「誰がジジイだ!俺はまだ800とちょいだ!」
「「俺?」」
魔王の一人称って『我』だったような…
「我だとなんか偉い奴っぽいだろう?」
「「うわっ、しょーもな」」
「そっ、そそそんなことより腹は減っておらぬか?お主ら朝食をとっておらんだろ?」
「いや、私もおねーちゃんも朝は食べないし」
「ぅおい!?朝はちゃんと食え!最強でもたまに体調崩すんだからな!?」
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