第17話
どんちゃん騒ぎの翌日。遊びに来たステラちゃんとリリちゃんママは向こうに帰り、国中のお祭りムードは夜明けとともに消え去って行った。
これで元通り、かと思いきや新たなる来訪者がやってきたのである。
「だぁからどういうことなの!?召喚?したのは私でしょうが!なんで召喚を行ったはずの私がどこかも分からない国に召喚されてるのよ!」
彼女は服装から察するにシスター、そして琴音が言うには新たなる勇者。名前はまだ聞けていない。
「あぁもぅるっさいなぁ。今私は寝起きで機嫌も気分も最悪だってのに。で、だれなの?喧嘩ならさっさと始めてちょうだい」
「なんで喧嘩っ早いのよ。私はジュリエット・アリエル。れっきとしたシスターよ」
「それで?なに、勇者なの?」
「そうみたいよ。すてーたす?とやらにそう書いてたわ。いいからさっさと帰してちょうだい」
「いや、それがそう簡単には行かないんだよ。えと、ジュリエッ…長いからジュリちゃんね。今回の件はジュリちゃんが召喚しようとして出来た不完全なゲートとこっちでおねーちゃんの奇跡的な寝相が生み出したゲートがたまたま繋がって召喚出来たの。
つまり、貴女を帰すにはジュリちゃんが居た世界とこっちで同時にゲートを開く必要があるの。分かった?」
「で、結局帰れるの?」
「「あんた話聞いてたの?」」
「しょ、しょうがないじゃない。長い話は苦手なのよ」
「琴音、どうなの?」
「いま私説明したよね?帰れないよ」
「琴音の理解者で分かんないの?」
「残念、基本的にこの世界と私たちが元いた世界にしか通用しないよ」
「…私、これからどうしたらいいの?」
ジュリエットは何もかもに絶望したように打ちひしがれる。
「まぁ、とりあえず人間の国に連れて行ってもいいんだけど…」
「人間の国?…ここは違うの?あと、ここじゃダメなの?」
希依の言葉に疑問を持ったジュリエットは希依に問う。
「ここは主に魔族や魔物の住まう国、魔国ヘルムート。普通の人間なんて両手があれば数え切れる程度しか住んでない」
「魔族、ですって?まさか貴女も!」
「残念、私は魔王様。つまり人間からしたら私は天敵ってわけ」
「そう。…つまり、敵ってことね!『聖拳』!」
ジュリエットは右手に光を灯しながら希依に振るう。
「は?」
「『左腕変形 機械仕掛け』…魔王様に、何をされているのですか?」
何処からか飛び出してきたラストが左腕をパイプや配線、球体関節に変形させて握り拳を受け止める。
「なっ、自動人形ごときが!離しなさいよ!」
「攻撃なさらないのでしたら構わないのですが。…申し遅れました、私は自動人形 最終人形。この城のメイドでございます」
「私には、私がいた所の勇者にはね、魔王を倒す使命があるの。こんな所で諦めてなんかいられない!『聖蹴』!」
ジュリエットはラストを蹴り離す。
「このっ、」
「いいよ、ラストさん。私が直々にこの世界の魔王というものを叩きつけてあげる。魔法もいい加減使ってみたいしね」
「…かしこまりました。お気をつけて」
「女の子だからって、手加減して貰えるとでも思ったら大間違いだからね」
「可愛くても勇者だからね、加減して戦ってあげるよ」
「『聖光撃』!」
「わおっ、ビームかな?『えと、求めるは防壁、もたらすは不変、生み出すは鉄壁』!」
ジュリエットの放つ光線は希依の雑な詠唱で生み出された壁によって完璧に防がれる。
「今更だけどほんとに聖職者?」
「ほっときなさい!はぁ!たぁっ、らぁ!」
ジュリエットは両手両足に光を灯しながら希依にラッシュをかける。
「今は近接戦闘の気分じゃないってのに、『敏捷、筋力それなりに強め、 破壊力皆無』」
ジュリエットや城に無駄なダメージを与えないように全攻撃をいなす。
「いいかげんに――「『ノックバック鬼神並』吹っ飛べ!」ちょっ」
希依の裏拳がジュリエットを、先程生み出した壁に上半身が貫通するようにぶっ飛ばす。
「『創り出すは最強の剣、出来ることは万物切断、…使うことはきっと無い』
ほら、さっさと負けを認めて」
希依は魔法でシンプルな見た目の剣を創り、ジュリエットの眉間に突きつける。
「くっ、こんな所で諦めるわけにはいかないっ」
「てか、そもそもなんでそんなマジになって魔王を殺そうとしてる訳?」
「魔王は最悪の天災で人類の敵、殺さなきゃ、人類は滅んでしまう!だから、殺さなきゃいけない!」
「そんなどこの世界かも分からないような所の都合を持ってこられてもねぇ」
「うるさい!」
ジュリエットは壁を思いっきり殴るとまるで砂のように粉々に砕け散る。
「キャッ!?」
「琴音!今!」
「おっけぇ!『転移行先孤児院』!」
希依の合図に琴音は自作の転移魔法を発動し、ヘルムートの孤児院に飛ばす。
「はっ!?何処ここ!?」
場所は希依の我儘によって出来た、虐待を受ける等してきた哀れな子供たちの住まう孤児院。そこに希依と琴音、ジュリエットは転移してきた。まだ朝早いので誰も起きてきてはいない。
「ちょっ、なんのつもり!?」
「ここは私の代で出来た孤児院!今日からここで働いてね!じゃ!」
「おねーちゃんのことはここにいる子達に聞けばどういう人かわかるからよろしくね」
「ちょっ、ええ!?」
「じゃ、任せたからね!」
「『転移私愛人行先魔王城』またね、ジュリちゃん!」
「はぁ!?…ってもういないし、何をさせたいのよぅ」
「おねーちゃん、あれでよかったの?」
「だって仮にも聖職者でしょ?あの子達を見捨てられるような子には見えなかったし」
「勇者拗らせて子供達を皆殺しとかしなきゃいいけど」
「…まぁ、天使と人間のハーフの子とかもいるし平気でしょ」
「そういえば聞いた?あの龍の血を輸血されちゃったメイちゃん、羽根生やして飛べるようになったらしいよ」
「えっ、マジで?私もしてみよっかな」
「いや、大抵死ぬからね?メイちゃんは奇跡的に生き残っただけなんだから」
「うぇー、…他には?なんかめでたいニュースないの?」
「めでたい、ね…あぁ、あの悪魔の子のロイくん、お母さんがたまたま発見されて今は親子二人で暮らしてるみたい」
「へー。他には?」
「あれ、今のはあんまりだった?」
「確かにめでたいけど、なんというか、厨二心をくすぐられるようなのが欲しい」
「んー、あ、あの右半身がダイヤモンドになってた子なんだけどさぁ、ダイヤモンドの部位をコントロールして戦闘に使えるようになんかったんだって」
「なんか私の『究極の加減』にちょっと似てるね」
「そういえばあれ、おねーちゃんの『加減して戦ってあげる』ってやつ、あれなに?決めゼリフ的な?」
「的な。どうだった?」
「いやまぁ、いいんじゃない?他の人と被ったりしてないと思うしちゃんと技能を使って戦ってあげますよ的な感じが読んでる人には分かるよね。
直に言われた人は煽ってるようにしか聞こえないだろうけど」
「琴音はなんかないの?決めゼリフ的なやつ」
「ないよ。そもそもガチバトルするタイプじゃないし」
「じゃあ私が考えてしんぜよう」
「いや、いらないから」
「えっと、理解者だから…『理解者の魔法劇、あなたは理解できるかしら?』…どうよ?」
「いや、無いわ。キャラじゃないし」
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