第13話
「なんか嫌な予感がする」
「…え、いきなりどーしたのおねーちゃん?電波系にでも転職したの?」
日時は予定を変更して3人でゲームをしただけの日の翌日早朝。
食堂という名の大型のテーブルと沢山の椅子が並ぶだけの大部屋で城の住人全員で朝食を食べ終え、それぞれ持ち場に移動し魔王希依とその理解者琴音の2人だけになった時に希依は何かを直感した。
「いや、転職した覚えは無い。てかこのファンタジー世界じゃ大体の人は電波だよ」
「『電波』とは何か、話し合おうか?おねーちゃん」
「やめよっか琴音。それやってたら終わらないから」
「『萌え』とは何か!」
「だからしないってば」
「…で、嫌な予感ってどんな?」
「ん~…面倒事というか厄介事というか厄災事というか」
「もうちょい具体的には?」
「リリちゃんの時みたいな事が起こりかねないって感じ?」
「…ヤバくね?」
「…超ヤバイ♡」
「行くよおねーちゃん!まずは50メートルの壁に常識と非常識を分ける結界と争いを禁ずる十の盟約とそれからそれから…」
「中の1年が外の1日の部屋と天空からの大規模殺戮が出来る空飛ぶお城と内装が溶岩湖と動く壁と動く天井のお城とかそれから」
「赤い帽子の配管工とか攫われるのが仕事の桃姫とかピンクの悪魔とか自称神のゲームクリエイターとかもいた方がいいよね!」
「あと美食四天王とかだらしない系銀髪テンパとか地球育ちのサイヤ人とか平等なだけの人外とか裸エプロン先輩とかも必要なんじゃないかな!」
「「それからそれから…「――まったく・何をそんなに・慌てている・今代の魔王よ」…誰?」」
慌ててかなり危ないラインを反復横跳びする2人に聞き覚えのない声がかかる。
そちらに目を向けるとそこには『アホなの?』と日本語で書かれたTシャツに短パンで病的なまでに色白肌の青年がいた。
左手には日傘、右手は30センチほどの金髪ワンピースの少女の人形を抱えていた。よく手入れされている。
「来ると占いにあったから・歓迎の準備をしてやった・というのに・来ないから来てやった・という訳だ」
「「…ないわー」」
「な・に・が・だ!?」
「まず服装がダサい。いい歳してTシャツ短パンて」
「ウグッ」
希依の口撃に服装のダサい青年は狼狽える。
「それに人形遊びって、いや否定する気はないよ?でもね、さすがに人形を本気でそんな可愛い感じに仕上げるだけならともかくそれを持ち歩くのはちょっとあれかなって思うんだ私は。いやほんと個人の趣味だからね?それを悪くいう気は無いんだよ。ほら私も可愛い人形とかぬいぐるみとか好きだしでも男の人がそれを可愛がっててその上持ち歩くのはどうかなって思うな~」
「…なんだおまえら・…口撃力MAXかよ・それとこいつは・人形だけど人形じゃねぇ」
「そーだそーだ!確かにご主人は服装ダサいしヘタレでコミュ障でチキンだけどお人形さんで遊んでたのは18歳までなんだからね!」
人形だと思っていた少女が妙に高くて甘ったるい声で青年をフォロー?…する。
「ちょっと!・黙ってろ!」
「痛い遺体板井射たいイタイ!ご主人の話し方くらいイタイ!」
まだバレていない青年の性質を暴露した人形少女を青年は指二本で小さい頭を握る。
「…ねぇ琴音、こういうのってどこに通報したらいいのかな」
「そんなことよりやばいよおねーちゃん。この2人、ラストさん並にキャラが濃い」
「聞こえてる!・からな!」
「そろそろ自己紹介してくれる?なんとなく今日くらいに面倒なやつがくる予感があるから」
「…俺は・九代目魔王・ドヌーヴ
吸血鬼・魔法使い・呪術使い・だ」
「私はご主人がお人形遊びの為に「呪術使いの仕事として」作られた呪いの館の集合体、エリー、よろしくね!」
「ん、よろしく。私は十四代目魔王の喜多希依。そしてこっちが」
「おねーちゃんの恋人で理解者の喜多琴音。よろしくね」
「姉妹・恋人・女同士・…変態か」
「でも素敵だ思うな~。偏見とか血縁とか性別とか色んなハードルを踏み均す関係ってことでしょ?それって最高に素敵!」
「わっ、おねーちゃんこの子すごいいい子だよ。踏み均す関係って言い方がもう最っ高!」
「それに比べてこの吸血鬼ったら…」
「それに比べて・とか・言うな!」
自己紹介がある程度済み、会話が盛り上がってきたところに水を差すものが一人。
「魔王さま!ゆ……ドヌーヴくん?」
「む・ラストか・ひさしいな」
「…そのキャラ作りまだ続いていたんですね」
水を差したのは代々魔王に仕えてきたメイド、ラストだった。
「「「キャラ作りだったんだ」」」
あとなんでくん付けなのかはつっこんでいいのかな
「エリー・キイ・コトネ・黙れ」
「きゃーこわーい(棒)
…じゃなかった。ラストさん、どったの?」
「勇者です!もう城内に侵入してきてリリちゃんと所用で来ていたマーフィー様、リリアちゃんが応戦してます!」
「マジで!?場所は!?」
「1階の広間です!」
…ここは3階、一直線に走ってもいいけど確実に城が壊れるしリリアちゃん辺りは死んじゃいかねないし一体どうすれば――
「俺が・送ってやる。
『動け小娘終わりは寸前・始まりはその場・終わり迎えるは愚かさ故に・転移』」
希依の足元に直径3メートル程の大型の魔法陣が展開される。
「ちょっ、その詠唱イタ――
魔法陣が一瞬輝きその場の全員が目を伏せるとそこには魔法陣も希依も居なかった。
リリちゃん達side
ここは魔王城1階。
用事ついでにたまたま会った3人で立ち話に興じていたところに勇者が水を差してきた。水、というか剣だが。
「喜多さんを!取り戻すんだー!」
「…なんのこと?てかどうやってここまで…あぁなるほどね」
勇者、織田はマーフィーに剣を振り下ろすも素手で捕まれ振りほどけないでいた。
「…マフィさん、何がなるほどなの?」
リリアはマーフィーに問いかけるとマーフィーは答える。
「リリアちゃん、勇者の首飾り見てみ?」
よく見るとその首飾りはうすぼんやりと青く光っていて魔法陣のような模様が刻まれていた。
「あれは魔装具。千年ちょっと前の技術で1つの魔法を封入して使うことが出来るの。詠唱が要らないっていう長所があるけどそれ以上に燃費が悪い。
そしてあれは『転移』の魔法が封入されてる」
「ふぅーん」
「パパとママ、リョウの仇……、ねぇマフィさん、リリアさん、こいつ、私に任せてくれないかなぁ?」
リンの家族の仇である勇者が目の前にいて、当時より力をつけたリリは我慢を出来る訳もなく2人に頼む。
「…いいよ。危なくなったら、分かってるね?」
「リリ、がんば」
「がんばる!『炎爪劇』」
リリは妖狐特有の青い火、狐火を伸ばした爪に纏わせ勇者に襲いかかる。
「うわっ!?いきなり何するんだ!卑怯だぞ!」
「うっさい!いいから黙って百回死ね!」
剣を諦めて手を離してから転移を多用してリンの攻撃を勇者は回避する。
「なんで邪魔をするんだ!『炎よ、敵を倒せ』!」
「『魔操装爪創造劇』『魔法よ我が糧となれ』!」
勇者が放った大型の炎の弾をリリは爪に纏わせ、赤と青を混ぜた色、紫色の炎を爪に纏わせ勇者に振るう。
「なに!?どうなっているんだ!『氷よ我が剣となって現れろ』!」
氷の剣を二本、二刀流でリリを攻撃する。
炎を纏う爪と氷の剣が鍔迫り合い勇者がだんだんと押していく。
攻撃力とは基本的に重さ×速さ
速さはリンの方が勝るものの勇者の剣は重さと遠心力という点において圧倒的に勝っている。
「うぅぅ…『凶爪極…太古版』
…うぁぁああああ!!!!」
リリの爪から炎が消え、代わりに『闇』や『死』、どう表現したらいいのか分からない不気味で不吉な瘴気を纏い正気を半ば失ったリンが襲いかかる。
「死ね死ね死ね!お前が!お前みたいのが!お前みたいなのがいたから!パパが!ママが!リョウが!」
「さっきからっ、なんの事だかっ、分からないっ、なぁ!ウグッ…」
「わかんない!?ふざけるな!ふざけるなふざけるなふざけるな!!謝っても許さない殺しても許さない死んでも許さない!ここで殺してあの世で殺してその先でさらに殺してやる!」
「意味が分からないなぁ!俺が!お前に何をしたって言うんだ!」
リリの攻撃を剣でいなし、転移で躱し、バックステップで躱す。
「ああぁaaaaAAAAAあああああ!!!」
「邪魔を、するなぁ!『柔しき防壁をここに』!」
リリの攻撃を転がるように回避し、地面に魔法陣を展開する。
すると地面のカーペットが盛りあがり、リリの攻撃を防ぐようにそそり立つ。
リリはお構いなく壁を砕こうとするも砕けず、その柔らかい壁に爪が突き刺さってしまう。
「ぅ、うぅぅ、はぁ、はぁ、
んっ、抜けない?…『変化 九尾』」
「ちょっとそれは危ない!」
完全に攻撃を防がれて正気を取り戻したリリは妖狐の上位個体、九尾の狐に変化する。
マーフィーはそれを見てリリに近づこうとするも超高濃度の魔力にリリが包まれて近づけずにいる。
「…。『魔装 狐火』」
リリは九本に増えた尻尾の先に青い炎を灯し、その尾で目の前の爪の刺さった壁を容易く砕く。
「…ぶっ殺す♡」
「なんだよ…それ…」
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