弓士と町娘
夜明けと共に武器屋を発ち、酒場を目指した。
「なっ!??」
タクミの顔を見てマスターは絶句した。昨夜は確かに戻ってこいと怒鳴ったが、ほとぼりもさめない内に顔をだすなんて思いもしなかったからだ。この勇者は頭のネジが一体何本外れているのだろうか。
呆然とするマスターを横目に、タクミはカウンターに腰掛ける女性に声をかけた。
「弓士リヴィア、君の力が必要だ。俺と一緒に来てくれ。」
「。。。興味ない。仲間なんていなくても私一人で十分だもの。」
リヴィアと呼ばれた女性はタクミを一瞥し、そう言い放った。
「ただでとは言わないよ。仲間になってくれるならコレをあげるよ。自身の力を信じてる君には悪くない話だと思うんだけど。」
そう言ってカウンターに置いた物は宝珠がついた漆黒の弦と矢筒であった。矢筒には鋼の矢が入っている。
弦と矢を見て妖しく微笑んだリヴィアが、体ごとタクミの方へ向きなおった。
その顔を見て、タクミの心臓の鼓動が少し早まる。黒髪に所々アッシュを混ぜたショートヘア。無機質だがなぜか惹きこまれる眼。小柄で美しい女性だ。
「コレをくれる程お金持ちには見えないけれど。貰ったら返さないわよ」
「あぁ、もちろんさ。一緒に来てくれるね?」
「待てリヴィア!!そいつは悪魔のようなことを平然とやってのける男だぞ!ルーク達がなにをされたかわかってんだろ?!お前も使い捨てられるぞ!」
「問題ないわ。殺されるようなへまはしないもの。それにこの男が死ぬようならこの装備だけありがたくいただくわ。」
「くっ!!勇者よ、こんな高価な装備を買えるならルーク達を蘇らせてやれるだろう!」
「すまんな、そいつは物々交換で得たものだ。昨日も言った通り手持ちはないのさ。リヴィア、行くぞ。」
マスターの言葉を軽く流して酒場を後にする。マスターもそれ以上は何も言ってこなかった。タクミに何を言っても暖簾に腕押しだと理解したのだろう。
「出発前にもう一ヶ所寄るところがある。早く試し撃ちをしたいだろうが我慢してくれ。」
妖しく微笑んだまま弦を見ていたリヴィアはそう告げられて眉をひそめたが、無言でタクミの後を付いていく。口論することで時間を食っては本末転倒であり、余計なやりとりをしないことが結果的に早く試射することに繋がると理解しているからだ。彼女は合理的なのである。其れ故に感情が乏しく無機質に見えてしまうのだが、そんな彼女に惹かれる男は多かった。顔が良ければ短所も長所に見えるものなのだ。同性ならば逆の場合も多いが。
閑話休題
町外れの民家のドアを叩くタクミ。
「はーい!ちょっと待っててください!」
快活な声が返ってきた。中から出てきたのは栗色のポニーテールの女性だ。普通の町娘と言った服装だが、通りで見かければ同姓異性問わず振り返ってしまいそうな笑顔の似合う女性である。
「えっと。。。リヴィアさんと勇者様?」
あれ?おかしいな。。。ルーク達の時は容姿描写が無かった気がする。。。おかしいな(大事なことなので(ry)




