表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

慈悲

「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」


 息を切らせて駆けるタクミ。ブラストウルフ相手にルーク一人では長くはもたないであろう。とにかく今は一歩でも前へと進まなければ。


 防御力が高く鈍重な戦士を連れてきたのはブラストウルフの囮にするためであった。魔法使いや僧侶では瞬殺されてしまい壁にはならず、素早い武道家が先を走ってしまえばタクミが先に捕まってしまう。戦士という職業は今回の任務にうってつけであった。


 だがそれでも、今回の強行は博打であった。最初の突進でタクミが負傷する可能性。キースとゲイルが突進を受け流せなかったり、恐怖から逃走する可能性。そして今この瞬間にもブラストウルフに追いつかれる可能性。


 勝算はあったが、成功確率は五分五分をやや上回る程度であろうか。タクミだけは死んでしまうと蘇ることが出来ないことを考えれば正気の沙汰とは到底思えない。そんなタクミを駆り立てたのは恐怖であった。


 ここで死なずとも、誰よりも早く魔王を倒せねば死を免れることはできない。ましてや八百万ものライバルがいるのである。ちまちまと最初期のザコ敵でレベル上げをする余裕などあるはずもない。


 心臓が悲鳴をあげ肺が酸素を求める最中、タクミの後ろから蒼白い炎が迫り道具袋へと入っていった。


「っ!!ルークもやられたか。。。急がないと。。。」


 蒼白い炎は仲間の魂であった。某RPGのように棺桶を連れなくても自動で道具袋に収まってくれる。一時的にアイテム扱いになるので、二十個しかアイテムの入らない道具袋の内の枠三個が埋まってしまう仕様は鬼畜であるが。。。


 蒼白い炎に蘇生魔法や蘇生アイテムを使用できれば肉体を含めて復活するが、そんなものを使えるのはまだまだ先の話である。


 ルークの魂に追い付かれた後しばらくすると、咆哮と共にブラストウルフの姿が見えてきた。


 足を負傷しているようだが、タクミよりも速い速度で駆けてくるブラストウルフ。もはや交戦は免れないように思えた。


 その時ブラストウルフの体が壁に当たったように弾かれた。


(なんとか間に合ったか)


 この世界の魔物には行動できる領域が指定されている。極端な話、そうでなければ最終ダンジョンの敵が最初の町に出現するなんてクソゲーになりかねないからであろう。暇つぶしの為に命懸けのタイムアタックを強要する神々にも慈悲があったのであろう。雀の涙ほどの慈悲が。


 見えない壁に阻まれたブラストウルフを見てタクミは立ち止まり呼吸を整える。全速力で走り続けた為、少し休まねば歩くこともままならない程に疲弊していた。


 この位置で斬りかかることができれば無傷でブラストウルフの討伐も可能であるが、残念ながらタクミは盾しか持っていない。

十回戦えば十回共負けるようなブラストウルフ相手にナイフを持つことよりも、防御力の底上げにより生存率を上げることを優先した為であった。


(ポーションを使いきるつもりでいたが、一つも使わずに撒けたのは幸運だった。よほどあいつらが巧く戦ったんだな)


 道具袋に吸い込まれた三人に感謝し、再びタクミは町へと足を向けた。

続きが気になる!なんて奇特な方は最新話の画面下から評価・感想ボタンをポチって下さい。作者が裸革鎧姿で次話を執筆します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ