聖属性無効
「こんなところか。」
日が陰ってきたところで、タクミはレッドスライムを全て退治した。
レベルを確認するとタクミとフィーナは16、リヴィアは17に上がっていた。
「こんな方法があったのね。まさか一日でこんなレベルになるなんて。。。普通に魔物を討伐していたらどれだけの時間がかかるか想像もつかないわ。」
「身体能力と魔力は劇的に向上しているはずだ。橋を戻ればフィーナでも素手で魔物を倒せるだろう。だが、思考速度や技術はレベルでは向上しない。そこは気をつけるんだ。」
技術の向上には時間がかかる。リヴィアを仲間にしたのは卓越した技術を持っているからだ。決して美人だからという理由だけではないのだ。
。。。美しいことも大きなポイントではあるのだが。
「倒せたとしても素手で魔物となんて戦いませんよ。」
「あくまで能力値では、という喩えだ。フィーナ、君を前衛にするつもりはない。それより覚えた魔法を教えてくれ。」
「えと、結構覚えてますね。ブレイズ、ホーリーレイ、ターンアンデット、キュアの4つです。」
「よし、じゃあ帰りは練習がてらフィーナの魔法で魔物を退治するぞ。」
「えぇっ?!私が相手するんですか?!」
「あぁそうだ。危なくなったら助けてやるから心配はするな。と言ってもこのレベルなら無防備でもない限り、攻撃を受けても致命傷にはならないだろうがな。」
「うぅ、頑張ります。。。」
「移動しながら魔法の説明をしていくぞ。ブレイズは聖属性の炎だ。闇属性の敵に特攻があり、火属性じゃないから火属性無効の敵にもダメージを通すことができるぞ。聖属性無効の敵には効かんがな。ホーリーレイは聖属性の光線だ。威力はブレイズと似たり寄ったりだが、弾速が圧倒的に速い。その分魔力の消費は大きいから使い分けが必要だ。ホーリーレイも聖属性無効の敵には効かん。ターンアンデットは幽霊やゾンビ等を一撃で葬りさることができる。もちろん聖属性の魔物には効かん。」
「私聖属性無効の魔物に何も出来ないんですか?!」
「そうだな、フィーナが物理攻撃をしたところで大したダメージを与えられんし、出来ることはないだろうな。」
「聖属性無効の魔物が出たら、即逃げるようにします!」
「はぁ。ったく。逃げるんじゃないぞ。。。フィーナ自身が戦えなくてもそう遠くない内に支援魔法を使えるようになるからな。っと止まれ。向こうに三体、コボルトがいる。まずはホーリーレイで倒すぞ。リヴィアは討ち漏らした時に備えてくれ。ただし、ギリギリまで攻撃は控えてくれ。」
「わかったわ。」
「あの、ホーリーレイってどう使えばいいんですか?アンティはなんとなく治すイメージができたんですけど。。。」
「利き手と敵を光で繋ぐイメージをしてみろ。手じゃなくてもいいんだが最初はその方がやりやすいはずだ。イメージができたら後は『ホーリーレイ』と唱えるだけだ。」
(利き手と、敵を、光で繋ぐ、と。)
「ホーリーレイ」
刹那、フィーナの右手から閃光が迸りコボルトの腹を貫く。崩れ落ちるコボルトと、何が起こったか理解できず周りを見回すコボルト達。
「フィーナ、次は敵の頭と繋ぐイメージで撃て。ホーリーレイの弾速なら急所を狙いやすいはずだ。」
「私が。。。魔物を倒した?。。。こんな簡単に。。。?」
「フィーナ!魔物が来るぞ!」
こちらに気づいたコボルト達が駆けてきている。半ば放心していたフィーナはタクミに叱咤されて正気を取り戻した。
「ホーリーレイ!ホーリーレイ!!ホーリーレイ!!!」
一撃目は見事頭を貫いてコボルト一匹を即死させたが、二擊目は焦りから頭をかすっただけだった。三撃目は腹を貫き、一匹目同様に崩れ落ちた。即死ではないが致命傷であり、放っておいても直に絶命するであろう。
「戦闘中に惚けていると容易く命を奪われるぞ!コボルトは敏捷性が低いが、素早い敵相手なら何度も撃てないと思え。…ただ、三撃目を的の大きい腹部に切り替えた判断は良かったな。」
初めて命を奪った感覚の気持ち悪さでフィーナはどこか上の空であったが、常に無愛想なタクミに褒められたことは嬉しく思った。
「…今回は私の出番は無かったわね」
リヴィアの呟きは風に消えた。