橋の上の攻防
「大丈夫だ、魔物と戦闘にはならない。」
「魔物を避けて走り抜けれるような場所でもないわよ」
「あの、そんなに危険な所なんですか?」
「誤って迷いこめば全滅する程度には危険だね」
始まりの町ヴェニスからさほど離れてない場所なのに、一歩橋を越えると魔物のランクがあがるのである。それもいきなり4ランクもである。
一周目で迷いこんだ際は仲間の戦士が殺された。一撃でである。先頭がタクミであったならば一周目開始早々死んでいただろう。
本当に暇潰しするつもりがあるのかと神々相手に小一時間問い詰めたい衝動に襲われたものだ。
「そんな。。。どうしても行かなきゃならないんですか?」
「橋を渡るなら私はパーティを抜けるわ」
「経験値を手早く得るために最適だからね。リヴィア、君は殺されるようなへまはしないと豪語していただろう?パーティから抜けるようなら破魔の弓と鋼の矢は返してもらうよ。そもそも戦闘にはならないと言ったはずだ。それでも不安なら俺が先頭を行くから、俺が殺られたら逃げればいい。」
「。。。わかった。」
多少のゴタゴタはあったがリヴィアは納得してくれた。
余程怖いのかフィーナは喋らなくなってしまったが着いてきてくれている。
道中で幾度かコボルトとグリーンスライムに遭遇し、リヴィアの弓で一方的に退治した。
何もしていないがタクミとフィーナに経験値が入り、東の橋へ着いた時には二人のレベルは3に上がっていた。
ちなみに橋の向こうの魔物は適正攻略レベルが15ほどである。
多少レベルが上がろうが通常太刀打ちできる相手ではない。
橋を渡った先は草原であった。見通しがよいため、リヴィアの言うとおり魔物を避けて走り抜けることは不可能に見える。
「リヴィア、鋼の矢でアイツを狙ってくれ。射ったら即フィーナと一緒に橋へ下がるんだ。」
橋の終端で指示を出すタクミ。指をさした方向には身の丈3mに届きそうな猿の魔物、ヒュージドリルがいた。一周目で仲間の戦士を一撃で殺した魔物である。
「間違いなくあなた死ぬわよ。」
「問題ない、射るんだ。」
リヴィアは破魔の弓を引き、照準をあわせる。
放たれた矢は真っ直ぐにヒュージドリルの目へと向かうが、腕で防がれてしまう。
「ガアァァァァァァ!!!!!」
怒りの雄叫びをあげ、ヒュージドリルが走ってくる。あまりの恐怖にリヴィアとフィーナはすくんでしまっている。
「早く橋へ下がれ!来るぞ!」
タクミはリヴィアとフィーナを下げ、自らも橋の終端へ下がると剣を構えた。武器屋で黄金の女神像と交換した長剣『ディザスター』だ。
タクミがディザスターへと軽く祈ると自身が暴風に包まれた。
ブラストウルフが使用した魔法の上位版である。攻撃力と防御力が大きく向上するが、元のレベルが低いので二擊も食らえば死んでしまうであろう。
「リヴィア!目に照準を合わせて待機してくれ!」
未だ震えているリヴィアに指示を出しておく。
ヒュージドリルが腕を大きく振りかぶり、叩きつける。ドゴォォォン!!と凄まじい打撃音が耳をつんざいた。
十話なのにキリの悪いところで次話に続きます(汗)