第91話 遊撃連隊長&近衛連隊長
「大事な部下をここまで痛めつけられたんじゃ......、ただで済むと思ってくれるな」
気絶するミーシャを降ろしたフォルティシア中佐は、彼女の口周りの血を拭うとドラゴンを睨みつけた。
それは、今までクロエが見たことのない殺意に満ちた顔だった。
「お前と共闘なんていつぶりだ? 士官学校以来の展開じゃないか」
ハルバード中佐が前に出る。
「ドラゴンが相手なんじゃ、気を引き締めい」
「いざという時だけは真面目だねアルマは......、だがいいだろう。ここで竜殺しといこうじゃないか!!」
障壁越しに、ハルバード中佐は渾身の回し蹴りをドラゴンへ浴びせた。
その速度は凄まじく、先ほどまでのミーシャが亀に見えてもおかしくない動きだった。
「トカゲの顔面を踏み潰すのは良い気分だ、障壁が邪魔くさいがね!!」
さらに追撃を浴びせられたドラゴンは、大通りに倒れ込んだ。
「――――――吹っ飛べ」
入れ替わるように突っ込んだフォルティシア中佐は、なんの魔法でもない右ストレートをドラゴンにぶち込んだ。
「ゴギャアアアッ!!!?」
その威力は徹甲弾にも匹敵していた。
障壁があるにも関わらず、ドラゴンは住宅街へ勢いよく突っ込む。
「さすがアルマ、相変わらずのバカ力だな」
「"あ"ん? わしゃ可憐なピチピチの女子じゃぞ?」
「おぉ怖い怖い、あまり部下の前で怒りなさんな――――シワが増えるぞ?」
「"あ"ぁ? ドラゴンではなくまず貴様から殺した方が良さそうじゃのぉ」
近衛連隊長と遊撃連隊長、そのあまりの強さにクロエとしては口を開けるしかない。
「クロエ・フィアレス騎士長。おぬしは『マジックブレイカー』を溜めておれ、いざという時必要になるやもしれん」
身構えるフォルティシア中佐。
「そういうことだ、ひとまずここは――――――」
煙を裂いて飛び出してくるドラゴン。
咆哮を上げ、フォルティシア中佐にターゲットを定める。
「ワシらに任せろッ!!!」
ドラゴンの剛腕を受け止めたフォルティシアは、そのまま後方へぶん投げた。
「いったぞイグニス!!」
「おうッ!!」
右足裏1本でハルバード中佐は吹っ飛んできたドラゴンを抑える。
十数メートル石畳を擦りながらも、そのままドラゴンの勢いを殺しきった。
「殲滅魔法――――『オリジン・アックス』!!!」
漆黒の魔力をまとった踵落としが、ドラゴンに直撃。
地面が砕け、ロンドニアに地響きが広がる。
「アルマ!! やれッ!!!」
宙高く飛んだフォルティシア中佐は、4つの魔法陣を展開した。
「一なる魔法よ......今全てを消し飛ばせ!!『アルファ・ブラスター』!!」
フォルティシアの放った渾身の魔法が、ロンドニアの地盤ごとドラゴンに突き刺さる。
「ゴギャアアアアアアアッ!!!?」
障壁が消え、血を吹き出したドラゴンはクレーターの中心で倒れ伏した。
「今のが......中佐の魔法......」
退避していたクロエは、圧倒的な上官の力に腰を抜かしそうになる。
これが、いつも執務室でのんびりしていた方の本気なのだと......。
「終わったか......、まぁザッとこんなもんだろうな」
ハルバード中佐が手をパンパンとはたく。
「いや......まだじゃ」
「なに?」
フォルティシアはジッと教会を見つめていた。
「あのドラゴン使いのヴィザードが、まだ残っておる」




