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第90話 ミーシャVSドラゴン

 

 ミーシャは嘆いていた。可能ならばこの状況にクソッタレと女を忘れて叫んでやりたかった。


「ゴアアアアアアアァァァァッ!!!!!」


 だがそれは叶わない、もしそんな暇があれば、剣撃や魔法の1つでも当てた方がよっぽどマシだからだ。


「くっ!!」


 尻尾に薙ぎ払われ、まるごと飛んできた民家をかろうじて避ける。

 砂埃が飛び散り、ミーシャはゴロゴロと地面を転がった。


 ダイナマイトによる奇襲はものの見事に失敗し、状況は最悪の一言。

 おまけに――――


「このッ!『ヘルファイア』!!!」


 放った灼熱の業火はしかし、ドラゴンに辿り着かない。

 ヤツ全体を覆う障壁がことごとく攻撃を弾いてくるのだ。

 普通にやっては埒が明かないと、ミーシャは傍に立つクロエへ叫んだ。


「わたしが引き付ける!! アンタはあの障壁を破れるよう魔力を溜めなさい!」

「1人じゃ危険だよミーシャ!! わたしも戦うから一緒に撤退を......」

「バカ抜かさないで! このまま飛び立たれたら今度こそ街ごとふっ飛ばされる、ここでヤツを仕留めるためにも障壁だけは絶対に破壊しなきゃいけない!!」


 クロエの持つ『マジックブレイカー』なら、あの障壁も必ず破れる。

 だが、それは囮になるミーシャの危険あってのものだ。


「元々、国家反逆罪で死にかけたところを拾われた命。ここで朽ちるならまたそれも定めよ!!」

「ミーシャ!! ――――――ッ」


 魔力を全開にし、ミーシャは全身に火の粉を纏う。

 身体能力にもブーストが掛かり、障壁越しにドラゴンをのけぞらせるほどの攻撃を放った。


「ハアアアアアアアァァァァァァ――――――――――ッ!!!」


 まだ足りない、もっと強く、もっと速く!!

 ドラゴンの周囲を飛び回りながら、次々に剣撃を命中させる。

 凄まじい連撃は、広場周辺の温度を上げるほどの熱量すら帯びていた。


 ――――少しでいい、なんとか時間を......ッ!?


 背後へ回り込もうとしたミーシャへ、ドラゴンの腕が突っ込んでくる。


「もうこっちの速度に慣れたというの!?」


 ギリギリで回避に成功、空中で体勢を立て直したミーシャが剣を振るった。

 だが――――


「しまっ!?」


 ドラゴンの攻撃は二重。

 片腕のみの裏拳に続き、振り回された太い尻尾が高速でミーシャに激突した。


「あがッ......!!」


 城壁を薙ぎ倒すほどの一撃をくらい、ミーシャは砲弾のように民家へと突っ込んだ。


「ミーシャッ!!!」


 魔力を溜めるクロエはしかし動けない、ただ見ていることしかできない無力さに、彼女は唇を噛んだ。


 半壊した家屋からなんとか身を起こしたミーシャは、剣を杖代わりに立ち上がる。

 勝ったつもりであろうドラゴンがブレスを放とうとするが、彼女の瞳は待っていたとばかりに輝く。


「そこだあぁぁぁッ!!!!」


 ありったけの力で剣をぶん投げる。

 一直線に飛んだ剣は、ブレスのため一瞬だけ開いた障壁の奥にあるドラゴンの左目へ突き刺さったのだ。


「ガギャアアアアアアアアッ!!!???」


 ドラゴンの断末魔がロンドニアに響く。

 フラつきながら、ミーシャはしてやったりと笑みを見せた。


「ミーシャ! 危ないッ!!」

「ッ!!」


 伸びてきた剛腕がミーシャを掴んだ。

 持ち上げられた彼女の正面には、隻眼と化したドラゴンの顔が睨む。


 ドラゴンは振りかぶると、そのままミーシャを石造りの民家へと叩きつけた。

 屋根を突き破って1階まで落ちた彼女は、そのままリビングの床に背中からめり込んだ。


「がっはッ......!?」


 再び身を起こしたミーシャは、真っ赤な血を吐き出すと自身のダメージを知る。


「そろそろ......ね......」


 纏っていた火の粉が消える。

 魔力によるブーストの時間が切れたのだ......。

 もうこれで、彼女に抵抗の手段は無くなる。


「うぐッ!!」


 崩れた民家を掘り返し、再びミーシャを掴んだドラゴンは握りつぶさんと力を込めた。


「あッ......があああぁぁぁぁぁ―――――――ッッッ!!?」


 悲痛な断末魔は、クロエの限界ラインをとうに踏みにじってくる。

 もはや、キャット・ピープルの少女に意識はない。


 大量の血を口から吐き出し、ドラゴンの手の中で気絶していた。


 この程度の魔力で倒せるかはわからない、だが限界に達したクロエはもうジッとなどしていられない。

 地面を蹴ろうと身構えた瞬間――――それは降り注いだ。


「ゴギャアアアッ!!?」


 ドラゴンの顔面に叩きつけられたのは、最上位殲滅魔法。

 開放され、落下したミーシャを優しく受け止めたのは自分の最もよく知る上官。


「全く無茶をしてくれるわい、危うく部下を殺されるところじゃったわ」

「ち......中佐?」


 現れたのは、クロエの上官たる遊撃連隊長、アルマ・フォルティシア中佐だった。

 さらに、こちらをギロリとめんだドラゴンを、何者かが障壁ごと殴り飛ばす。


「アルマ、そのキャット・ピープルに勇気と無謀は違うと後で教育しておけ。せっかく手に入れた優秀な部下なんだろう?」


 鮮やかに着地したのは、近衛連隊長イグニス・ハルバード中佐。


「全くじゃわい、こんなボロボロになるまでやりおって......。あとで説教じゃな」

「ならそれでよし、じゃあ――――始めようか......」

「うむ」


 2人の連隊長は、ドラゴンと正対した。


「ドラゴン殺しをな!」




いざ始めたら1時間で書けるのに、そこへたどり着くまでに1週間以上掛かるのはきっと台風のせいだ

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