第88話 信念VS信念
ロンドニアに佇む教会の上、わたしはフィリアに剣撃を浴びせていた。
正面から炸裂魔法を付与した杖の一撃が荒び、薙ぐように衝撃波が走る。
「『ブレイヴブラスト』!!!」
屋根上で繰り広げられる剣舞、入り交じる魔法をかいくぐってわたしは三度彼女へ肉薄した。
「はあぁッ!!!」
つばぜり合いの中、互いの顔を睨みながら叫んだ。
「なぜロンドニアを襲ったの!? ここに住む人たちにも家族や生活があるのに!!」
「奪われたものを奪い返しただけです! 平和を豊受し、のうのうと暮らす者は常に誰かの犠牲の上に立っている!」
杖で剣を流されたわたしの腹部へ、重い回し蹴りが打ち込まれた。
「がはっ......!?」
教会を飾る女神像に激突し、ダメージと引き換えになんとか転落を免れる。
だが、凄まじい速度でフィリアが追い打ちを掛けてきた。
「くっ!!」
寸前で飛び退き回避、真上へ逃れたわたしは剣に魔力を込めた。
「『レイドスパーク』!!!」
渾身の電撃魔法をくらわし、怯んだフィリアの防御を崩す。
スキのできたフィリアの服をわたしは掴むと、そのまま教会の屋根へ叩きつけた。
「うぐっ......!!」
衝撃で崩落した天井と共に教会内へ落下。
これで倒れてくれれば楽なのにという願いは、煙を裂いて現れたフィリアの姿によってかき消される。
「命を削った相手に忘れられ、裏切られた祖母の無念はわたしが晴らす!! この国の平和を壊すことで!!!」
「ッ......! それだけはさせない!!」
地を蹴り肉薄、猛撃を浴びせる。
彼女の想いと信念はきっと揺るがない、けれどわたしは騎士としてそれを許すことはできない!
ならこっちも信念をもって――――――
「だあぁぁ――――――――!!!!」
剣がフィリアの右目を斬り裂いた。
絶叫と血しぶきを上げる彼女は、しかし残った左眼でわたしを睨めつけた。
「片眼くらい――――くれてやるッ!!!!」
「くっ!」
弱るどころか、隻眼となった彼女の猛攻はさらに激しくなり、わたしの右手から剣を弾いた。
「こッのおぉぉッ!!!」
投げ飛ばされたわたしは、壇上へ登るための階段へ全身を叩きつけられた。
「くはっ......!!」
痛みが体中を走る。
間髪入れず、フィリアは空中で勢いをつけてからわたしのお腹を思い切り踏み付けた。
「ぐっ......! ガッハ!?」
口から垂れた胃液が、糸を引いて服へ伝った。
砕けた階段にめり込むわたしの腹部から、足がどけられる。
「今度こそ逃しはしません――――今ここであなたを殺します」
杖を振り上げるフィリア。
だけど、わたしの頬は吊り上がっていた。
この瞬間、彼女が完全に無防備となるこの時をずっと待っていたのだから。
「――――――『レイドスパーク・フルバースト』!!!」
全ての魔力を使っての一撃。
窓ガラスが全て割れ、全身全霊の攻撃を食らったフィリアは膝から崩れる。
口元を拭ったわたしは倒れる彼女の杖を蹴飛ばし、左手の剣を突き付けた。
「ここまでよ」
ギリギリの決着。
そう、苦戦した末の勝利だと......この時は思っていた。




