第87話 強行突破
「来ましたね......」
ロンドニアを見下ろす時計塔で、フィリアは破壊された正門方向へ向いた。
敵の戦力は予想以上で、まさかここまでの大軍で奪還しにくるとは思ってもいなかったのだ。
「ドラゴンはまだ休眠中、もう正面のワイバーンじゃ防げない......」
彼女自身感じていた、一際目立つ魔力を持った存在を。
それがかつて打ち損じた相手だと知るのに時間はかからなかった。
「勇者の剣を守って輸送艦にいた騎士ですか......」
脆弱な防衛線がドンドン突破され、前線が凄まじい勢いで迫ってくる。
それも、ワイバーンを蹴散らしているのは数人の騎士だった。
炎の矢が空中を飛び交い、放ったブレスは何者かに幅まれ、雷が防衛線を吹っ飛ばす。
まだドラゴンが動けず、ワイバーンで太刀打ちできないのなら選択は1つ。
フィリアは魔法杖を掲げると、何重もの魔法陣を発現させた。
「偉大な主の光は全てを照らす、主の温情をもって、理の反逆者を滅せよ!!!」
まばゆい光が時計塔の周囲に出現、それ全てが彼女の魔法だった。
「『レイドブラスト』!!!」
流星群、はたまた榴弾砲の効力射にも似た爆発魔法の猛撃が、王国軍の突入部隊に向けられた。
◇
「正面から魔法攻撃!! 回避!」
目標の時計塔を目指していたわたしへ、クロエが警告を発した。
見上げれば空を埋めるような魔法、大量の爆発魔法がわたたしち目掛けて降ってきたのだ。
「クロエ! ミーシャ! 人生で1番本気で走るわよ!!」
「了解!」
流星群のような乱撃の中、屋根伝いに駆け抜ける。
――――走れ! 走れッ!! もっと速くっ! 1発でも当たれば戦闘の続行は不可能、とにかく駆け抜けなきゃ!!
「『レイドスパーク・ガトリングシールド』!!!」
6つの魔法陣を展開、高速回転と共にレイドスパークを大量に撃ち出し、進路上の爆発魔法を粉砕。
土煙を抜けて見えるロンドニアの時計塔、火事場をくぐり抜けたと思った矢先にそれは現れた――――
「はあああぁぁぁッ!!!!」
真上から突っ込んで来たのは銀髪の少女、いつかの輸送艦上で戦ったドラゴン使いのヴィザードだった。
二刀の剣でギリギリ受け止めると、わたしと彼女は教会の屋根上で対峙した。
「ティナ!!」
クロエが叫び、加勢しようとしたのをわたしは止める。
「クロエとミーシャは先に行って!! こいつはわたしが倒す......!!」
前回は歯が立たなかった、でも今なら間違いない――――互角に戦える!
「お久しぶりですね、やはりあの時仕留めておくべきでした。さらに、見たところ随分と進化なさったご様子で......しかし」
大柄の魔法杖を構え、莫大な魔力で正対する銀髪の少女。
「このフィリア・クリスタルハート、ここから先にあなたを通すことはできません」
更新ペース維持を謳ったのにこのザマです(殴
仕事、別作の毎日投稿や諸々に追われていることを言い訳として......(迫撃砲の的になる作者)