第78話 異世界転移
念のため書き置きます(`・ω・´)
お開きの小説は【異世界王国軍の日常】で間違いありません。
――――それは50年前のことだった......。
"エンシェント・ドラゴン"は困惑していた。
人間に敗れ、主である"魔王"を失った上に大陸を追い出されたのだから当然だった。
彼は戦争で負った傷を癒やすべく、どこか海の遠く、遥か東を目指す。
いつか"勇者"を、人間を殲滅するための療養地探しのはずであった。
漆黒の鱗を纏ったエンシェント・ドラゴンは、ストラトスフィア王国より1500キロ離れた海上で翼を翻す。
そんな彼の前に、突如としてドス黒い雲が現れたのだ。
雷雲だろうか、ドラゴンにとって荒れた空を飛ぶのはもはや日常。
いつもどおり突っ切ろうとした。
だが、いざ入るとその雲はいつまで経っても晴れなかったのだ。
どこまで進んでも、どこまで高く昇っても、出口どころか陽の光さえ見えない。
出口の見えない闇は、まるでどこかへ繋がる通路のように一本道だった。
ドラゴンといえど、この得体の知れない雲には生物として純粋な恐怖を覚える。
しかし、不意に月明かりがドラゴンを照らした――――――雲が晴れたのだ。
そこは紛れもなく海の上、光景自体は雲に入る前となんら変わっていない。
が、彼はまず違和感を覚えた。
言うならば、合わないパズルに無理矢理ピースとしてはめ込まれたような......。
「ガアアアアアアァァァァァァァァァッ!!!!!」
本能で予定の進路から大きく外れていることに気づくと、ドラゴンは再び翼を翻し、東に進路を取った。
彼は気づかない――――――ここが、彼の故郷ではなく、全く別の世界だということを......。
◆
ここは魔法が廃れ、科学によって繁栄した世界。
モンスターも魔王も無き世界で、その異物は発見された。
『AWACS、国籍不明機を探知。日本海海上より北東方向へ向けて飛行中。高度28000フィート、速度350ノット、尚接近中』
――――日本国 青森県三沢市 航空自衛隊三沢基地。
この日、大皿のような円盤状のレーダーを持つ哨戒機が、日本の北海道へと向かう飛行物体を発見した。
しかもそれは、真っ直ぐ日本の領空へ向かっていた。
『IFF《敵味方識別装置》、応答なし』
『奥尻島、第29警戒隊、目標を探知。当該空域に米軍機は確認できず』
北空SOCこと、北部方面航空隊作戦指揮所は、一気に緊張に包まれる。
それは、目標が前触れなしに"いきなり"日本の防空識別圏内へ現れ、北海道に向かっていたからである。
「ロシアのチュグエフカ空軍基地の戦闘機か? それとも、またいつもの電子偵察機か戦略爆撃機ですかね......」
「いや、レーダー反射が小さすぎる。出現の仕方からしてまるでステルス機だ」
「ロシアのステルス戦闘機、SU−57が極東に? ありえません、実戦配備だってまだのはずです」
だがここで問答していても始まらない、日本の空を護る責任を持つ空自は速やかに行動を開始した。
『スクランブル――――――――ッ!!!』
サイレンと同時に、スクランブル要員が千歳基地の滑走路へ飛び出した。
並行して、恐ろしい速度で格納庫から無骨な戦闘機が姿を現す。
――――西暦2018年某日。
日本国航空自衛隊 北部方面航空隊、第2航空団、第203飛行隊所属のF−15J戦闘機2機が、夜の帳を裂くように爆音を鳴らしながら緊急発進した。
その両翼には短距離空対空誘導弾、そして"AAM−4こと99式中距離空対空ミサイル"を装備しながら......。